「世界がピコピコ崩壊する」がキャッチフレーズのレトロゲーム・ディザスター映画『ピクセル』(15)。
劇中音楽は人気作曲家のヘンリー・ジャックマンが担当しております。
今秋日本公開予定の『キングスマン』(14)とか、
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)とか、
『ベイマックス』(14)の音楽を手掛けた人ですね。
本作への起用のキッカケとなったのはやはり『シュガー・ラッシュ』(12)だと思いますが。
何しろレトロゲームキャラが大量出演する映画ですから、
今回の音楽も『シュガー・ラッシュ』寄りのポップなスタイルか、
あるいはもっとピコピコした音を多用した曲作りをするのだろうなと予想していましたが、
ジャックマンは『ピクセル』で普遍的なスタイルのフルオケ・スコアを作曲していました。
テクノポップっぽい電子音はほとんど使ってません。
いやーこれは少々驚きました。
今回ジャックマンがこういうサウンドを選択した理由を考えてみると、
やはり「ゲームの中の世界で暴れ回る」シチュエーションと、
「ゲームキャラが現実の世界に現れる」シチュエーションでは音楽の方向性も違うのだろうと。
『シュガー・ラッシュ』の超カラフルな世界観なら、あのポップな「オケ+シンセ」サウンドでOKだけど、
あのタイプのスコアを今回の映画で鳴らしたら、音楽が映像から浮いてしまうような気もします。
そして今回地球を襲ってくるレトロゲーム型エイリアンも、
姿こそレトロゲームキャラだけど役割的には「怪獣」とか「侵略者」であって、
巨大化したパックマンやドンキーコングの存在感(威圧感)を表現するには、
普遍的なオーケストラ音楽が一番だと判断したのではないかと。
ジャックマンは『モンスターVSエイリアン』(09)で地球侵略ものを経験済みだし、
『ディス・イズ・ジ・エンド』(13)でアホな地球滅亡映画の音楽も手掛けているので、
この手の「コミカルなディザスター映画」の曲作りは慣れたもの。
正統派のフルオケ・スコアにコミカルな要素をチョイ足しした、
「肩の凝らない燃えるアクション・スコア」を聴かせてくれています。
そして何より素晴らしいのが、
通常アクションコメディーの音楽は場当たり的なものになりがちなのですが、
ジャックマンは「印象的なメロディーのメインテーマをしっかり作って、それをもとに全体のスコアを組み立ている」ということ。
メインテーマはアルバム2曲目の”The Arcaders”ということになるのですが、
そのメロディーが他の楽曲でもきちんと活用されていて、
大変まとまりがよく一貫性のあるスコア・アルバムに仕上がっています。
スコア盤は全21曲で収録時間40分弱、
1分未満の曲も3曲ぐらいありますが、
それでもあまり短さを感じさせないボリューム感が味わえます。
ワタクシ『ピクセル』のスコア盤を聴いてみて、
ヘンリー・ジャックマンの人気の高さに改めて納得させられました。
メインテーマ重視のアクション・スコアを作ってくれる作曲家さんはいいですね。
なお某密林のレビューなどで書かれる前にお知らせしておきますが、
『ピクセル』のサントラ盤はヘンリー・ジャックマンの「スコア盤」であって、
劇中で使われた80年代ポップ・ミュージックやWaka Flocka Flameの主題歌”Game On”は収録されていません。
歌モノは権利関係がいろいろと面倒で、
サントラに入れたくても入れさせてくれなかったりするんですよね。。
なのでレビューなどで「歌が入ってない。つまらない。」とか書かれると、
映画音楽ライターとしては大変悲しい気持ちになるのであります。
歌モノに関しては下記にリストアップさせて頂きましたので、
iTunesなどを駆使して自分なりに曲を集めてみて下さいまし。
Surrender / Cheap Trick
More Bounce To The Ounce / Zapp
We Will Rock You VonLichten / Queen + VonLichten
Hail To The Chief / James Sanderson
True / Spandau Ballet
Working For The Weekend / Loverboy
Rise Togeter / Cult 45
Kathy / Charles Prestige
You Make Me Feel So Young / Kevin Grady
It Had To Be You / Kevin Grady
Everybody Wants To Rule The World / Tears for Fears
She’s Gone / Daryl Hall and John Oates
Smurf Main Theme
Game On / Waka Flocka Flame featuring Good Charlotte
…というわけで『ピクセル』の音楽がどんな感じか気になる方、
ジャックマンは燃えるフルオケ・スコアを鳴らしてくれているので、
マイケル・ジアッキーノとかアラン・シルヴェストリの作品がお好きならば、
きっとこちらのアルバムも気に入って頂けるのではないかと。
『ピクセル』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ヘンリー・ジャックマン
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-2917
発売日:2015/09/02
価格:2,400円(+税)