『エターナル・サンシャイン』を観たのはジョン・ブライオンの音楽にハマっている頃だった。

昨日(2025年12月12日)から『エターナル・サンシャイン』(04)のリバイバル上映が始まったそうですね。

先日Xにもチラッと投稿しましたが、当方は2005年の劇場公開当時サントラ盤に音楽解説を書きました。

Eternal Sunshine Of The Spotless Mind Original Soundtrack – amazon music

ただし当初の予定と異なり、ほかの音楽ライターの方がエッセイを寄稿することになったので、当方の原稿の文字数は普段の半分くらいになってしまったのですが。

そういう事態になってしまったとき(当時の自分はまだ若かったので)ちょっと落ち込みましたが、数日冷静になって考え直してみたら「仕事にありつけただけ運が良かった」と思えるようになりました。

当時の自分はまだ駆け出しの映画音楽物書き。
厳格な契約書を書いたわけでもない担当さんとの約束なんて、「この前の話ですけど、別なライターさんにお願いすることになったので。すいません」と”なかったこと”にされる可能性だってあったわけです。
でも担当さんは当方のぶんのライナーノーツの文字数を確保してくれた。
それなら自分は普段より少ない文字数の中で最大限努力して、担当さんの恩義に報いなければならないと思ったのでした。

だから文字数の割には結構頑張って音楽解説を書いたのではないかな、と思います。

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待望の『青いドレスの女』スコア盤サントラ(劇伴集)が発売になるので予約注文しました。

以前Xで「『青いドレスの女』のスコア盤サントラが発売にならないかなー、今年は公開30周年の節目にあたる年なんだけどなー」というような投稿をしました。
「ま、そんなことを言ってもどうせ発売されないだろうな…」と例年どおり諦めモードで過ごしていたところ、今年もあと1ヶ月で終わりというタイミングでLa-La Land Recordsから本当に30周年記念盤スコアアルバムが発売されることになりました。

遂に当方の切なる願いが叶ったか……と、感激のあまり即予約注文しました。

Devil In A Blue Dress: 30th Anniversary Edition<限定盤> – TOWER RECORDS
【輸入盤国内品番】青いドレスの女 <公開30周年記念盤>(サウンドトラック)- amazon

劇場公開当時ソニーから発売になったサントラ盤はソングコンピレーション盤の色合いが強く、エルマー・バーンスタインの劇伴は3曲しか収録されていなかったのでした。それでもバーンスタインの曲が聴けるからということでサントラを買いましたが。

歌曲のほうも劇中で使われたTボーン・ウォーカーやデューク・エリントン、セロニアス・モンクなどの渋いブルース/ジャズの名曲が収録されておりまして、当時10代の学生でブルースの知識に乏しかった自分には、音楽経験値を上げるためのよいサントラであることは確かでした。

一般の洋楽リスナーやジャズ/ブルース愛好家からすれば、当時の自分は「エリントンやモンクをよく知らない若造なのに、なんでエルマー・バーンスタインのことは知ってるんだよ?」と思われていたんでしょうね…。
まあ洋画サントラ愛好家なんてそういうものです。普通の洋楽リスナーとちょっと感覚がズレているというか、知識の偏りがあるというか。

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『ワーキングマン』のCDプレス盤サントラが買えるようになっていたので購入した話。

先日某オンラインショップでぼんやりと新作サントラを探していたら、画面に『ワーキングマン』(25)のCDプレス盤サントラの情報が表示されて「おおっ!?」となりました。

輸入盤、CD2枚組、限定版とのこと。
ステイサム映画を愛好する者としては、これはもう買うしかないだろうということで予約注文しました。

そしておととい製品が届いたので、ブログで製品の詳細をご報告いたします。

A Working Man (Original Motion Picture Soundtrack) (2CD) – amazon
A Working Man (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music
A Working Man<限定盤> – TOWER RECORDS

CDプレス盤は全世界500枚限定らしく、当方の買ったCDには「193/500」とジャケット裏面に手書きナンバリングされておりました。
こりゃ市場に流通する量はかなり少ないなという感じ。まあ配信リリースがメインということなのでしょう。

なぜCD2枚組になったのかというと、収録時間が100分弱あるから
サントラはジャレッド・マイケル・フライの劇伴集で、CDプレス盤だとDisc1に25曲、Disc2に24曲劇伴を収録しています。

サントラ盤は紙ジャケ仕様。ただしブックレットやレコーディングスタッフクレジットの記載などは一切なし。徹底的にコストを節約した作りです。

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追悼 リー・タマホリ監督 個人的に好きだった作品を振り返る(その2:『スパイダー』『007 ダイ・アナザー・デイ』+『ワンス・ウォリアーズ』)

2025年11月7日に亡くなった映画監督、リー・タマホリ氏に追悼の意を表し、先日個人的に好きな彼の監督作を振り返るブログを書きました。

一度で全部ご紹介するつもりが、思ったより文章が長くなってしまったので、二回に分けることにした次第です。
前回タマホリ監督がジェリー・ゴールドスミスの音楽を好んでいたという話を書いて終わったので、本日はその続きから。

で、タマホリ監督が『ザ・ワイルド』(97)に続いて敬愛するゴールドスミスにスコア作曲を依頼したのが、『コレクター(原題:Kiss the Girls)』(97)に続くモーガン・フリーマン主演の”アレックス・クロス”シリーズ第二弾『スパイダー』(01)でした。

正直に申しますと、初見時はオーソドックスな作りの映画…というかあまりパッとしない印象でした。しかしVareseから2021年に発売になった拡張版サントラのブックレットを読んで見方が少し変わりました。
タマホリ監督曰く「『セブン』(95)のようなスタイリッシュなシリアルキラー映画を模倣して作っても意味がない」ので、「70年代のドン・シーゲル監督作の精神に原点回帰して撮った」そうで、ああ、自分が『スパイダー』を観て「オーソドックス」と思ったのはそういうところだったのかと気がついたのでした。彼に言わせればゲイリー・フレダーが監督した前作『コレクター』ですらも「『セブン』のクローンのような映画」なのだとか。

そのせいなのか、ゴールドスミスの劇伴にもどことなく1970年代の雰囲気が感じられる。タイトルの「蜘蛛」の足音(?)を意識したような打ち込みのリズムの音色がちょっと面白い感じ。そういった細かい点も含めて、当時よりもいま聴いたほうが劇伴の”味”が分かるような気がします。

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追悼 リー・タマホリ監督 個人的に好きだった作品を振り返る(その1:『狼たちの街』『ザ・ワイルド』)

先日、ネットの記事でリー・タマホリ監督の訃報に接しました。
享年75。まだそんな歳でもないのに…と思ったら、パーキンソン病を患っていたらしい。

この方の作品は『狼たちの街』(96)を観てからずっと注目していて、『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』(11)まで監督作を欠かさず観ていたのですが、やはり2006年に起こしたやらかし(=LAで女装して覆面警察官に性的サービスを提供したことで逮捕)が痛かった。「50代にもなって何やってんですかタマホリさん…」と当時の自分も頭を抱えたものです。

まあ暴行事件とかではないので刑は軽かったらしく、3年間の保護観察処分+ハリウッドの街路清掃を含む15日間の社会奉仕活動従事で済んだようで、翌年にはニコラス・ケイジ主演で『ネクスト』(07)を撮っていました。
しかし順風満帆だったハリウッドでのキャリアにケチがついたのは確かであり、この一件がなければ2010年代にもっと大作映画のオファーが来ていたのかも…と思うと、タマホリ監督には品行方正でいてほしかった(近年は母国ニュージーランドで映画を撮っていた模様)。

ちなみにタマホリ監督が上記の事件を起こしたとき、タマホリ監督の名前を茶化して下品なジョークを披露していた映画評論家がいて、自分はこの人が大嫌いになりました。アントン・イェルチンが亡くなったときに名前で下品なジョークを言っていた人もいましたが、同じ人だったかもしれません。

閑話休題。

そんなわけで、今回のブログではタマホリ監督を偲んで、当方の好きな作品を振り返っていきたいと思います。

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