ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、 『ランボー ラスト・ブラッド』(19)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。音楽担当は前作『ランボー 最後の戦場』(08)に続いてブライアン・タイラー。
『ランボー ラスト・ブラッド』オリジナル・サウンドトラック (amazon)
以前ランブリングさんの「サウンドトラック傑作選50」の時に、『ランボー/怒りの脱出』(85)の音楽解説を書かせて頂いたので、今回再び『ランボー』シリーズのお仕事に携わることが出来て大変嬉しかったです。
『ランボー ラスト・ブラッド』の音楽と簡単な見どころについては、サントラ盤の差込解説書と、BANGER!!!コラムで詳しくご紹介させて頂きました。
ランボーの怒りと哀しみを勇壮な音楽で描き出す! シリーズ最新作『ランボー ラスト・ブラッド』
https://www.banger.jp/movie/35401/
『ラスト・ブラッド』の音楽は、基本的には前作『最後の戦場』のスタイルを踏襲したものになってます。つまり「タイラー作曲のテーマ曲+ゴールドスミスの”ランボーのテーマ”少々」といった感じ。
前作はミャンマーが舞台だったのでアジアンな民族楽器を使っていたけれども、今回はアリゾナ州のランボー牧場とメキシコが舞台なので、音楽からもアジアンな要素がなくなりました(メキシコのシーンで少しギターが使われる程度)。そういう意味ではゴールドスミスの『ランボー』(82)1作目の雰囲気に近いです。
RAMBO Original Motion Picture Soundtrack – Brian Tyler (amazon music)
タイラー作曲の新「ランボーのテーマ」もなかなかいいです。『エクスペンダブルズ』シリーズのようなイケイケ感は前面に出さず、「シリアスで熱い」サウンドに仕上げているのが印象的でした。
ところで今回の『ランボー ラスト・ブラッド』、「物語前半でランボーが薬を飲んでいた伏線が回収されていない」という批評があったのですが、個人的にはその見方は少し違うかもしれないなと思いました。
たぶんランボーが飲んでいた薬は、PTSDの症状や怒りの衝動を抑える精神安定剤の一種なのではないかと思いました。
なので物語の中盤以降からその薬を飲まなくなったというのは、「復讐の鬼と化したランボーが、自分の意思で”怒り”のリミッターを切った」ということなのでしょう。
だから終盤の復讐戦があんな凄絶な内容になったわけで、そういう意味では薬の伏線はキッチリ回収していると思います (そうでなければ、序盤で薬瓶のアップの映像をわざわざ挿入しませんからね…)。
さて『ランボー』シリーズのサントラ盤ですが、さすがゴールドスミス作品ということで、Intradaから初期シリーズ3作のエクスパンデッド盤が発売になっています。
第1作は発売から10年近く経っているので、買おうかどうしようか悩んでいる方は、在庫の都合上、早めに入手した方がよいかもしれません。
いま聴いてみると、第1作は豪快なアクション音楽というよりも、抑制の効いたアクションスリラー音楽という印象ですね。
『ランボー』のメインテーマの旋律が「It’s A Long Road」としてダン・ヒルによってエモーショナルに歌われることで、”倹約の達人”ゴールドスミスの選び抜かれたメロディの美しさが際立ちます。
FIRST BLOOD Complete Original Motion Picture Soundtrack (amazon)
で、ワタクシが音楽解説を書かせて頂いた『怒りの脱出』はというと、シリーズ5作の中で最も異質なサウンドになってます。
社会派アクションスリラーからド派手なアクション映画に変貌を遂げたので、音楽もそれに合わせた結果によるものと思われますが、YAMAHA DX-7のドスの効いた電子音の存在感が凄い。
あとは『風雲!たけし城』の竜神池のBGMとしても使われた、「Escape From Torture」の疾走感のある熱いサウンドが印象的。
Intradaのエクスパンデッド盤(CD2枚組)が入手困難な場合は、前述のランブリングさんから発売になったDSDリマスター盤でも十分ご満足頂けると思います(劇中で使用されたスコアはきちんと収録しているので)。
ちなみに Intrrada盤の”売り”は35mm 3チャンネルミックスの音源23曲と同ミックスの未使用音源5曲、予告編音源2曲、カロルコのデモカセット音源3曲を収録していることです。
【輸入盤国内品番仕様】ランボー2 怒りの脱出 (amazon)
その後、自分も『ランボー/怒りの脱出』のIntrada盤サントラを買いました。
そして久々に『ランボー3/怒りのアフガン』(88)のサントラを聴いてみたら、『怒りの脱出』よりも派手さを抑えた、正統派の熱いフルオケ・アクションスコアに聞こえました。
ランボーIII 怒りのアフガン(リマスター完全版)【輸入盤国内品番仕様】(amazon)
『怒りの脱出』は映画の内容もさることながら、1985年という”時代”そのものが、シンセの使い方や音色に独特な雰囲気を持たせていたのかもしれません。こちらはディスク1枚に25曲・合計77分を収録しています。
ワタクシ先月は毎週のように『ランボー』シリーズのサントラを聴きまくって、その中でほぼ毎日『ラスト・ブラッド』の音源を聴いていたのですが、タイラーさんはゴールドスミスの音楽をじっくり研究した上で、自分自身の「ランボー・サウンド」を作り出したなぁと思いました。
『ラスト・ブラッド』では、ゴールドスミスの「ランボーのテーマ」の旋律も、シリーズのファンならグッと来るシーンで流れますし。
そしてゴールドスミスの「ランボーのテーマ」以外にも、『ラスト・ブラッド』のスコアをよく聴いてみてみると、ゴールドスミスのモティーフを意識したフレーズが挿入されていたりして、結構奥が深い音楽になってます。
海外ではダウンロード版のみのリリースですが、日本ではCDプレス盤でサントラが発売されます。
『最後の戦場』は日本盤が発売されなかった上にもう廃盤になってしまったので、『ランボー』シリーズをこよなく愛するファンの方々には、『ラスト・ブラッド』は是非CDアルバムで手に入れて頂きたいな、と思います。
ランボー ラスト・ブラッド オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)
音楽:ブライアン・タイラー
発売日:2020/06/17
品番:RBCP-3368
価格:2,400円(税抜)