先日、学生時代に途中で挫折したP.D.ジェイムズの推理小説『女には向かない職業』を読了しました。
コロナ禍でステイホーム生活が長引くと読書が捗りますね。あまり喜ばしいことでもありませんが…。
ワタクシ大学時代に探偵小説やハードボイルド小説にハマった時期がありまして、ジェイムズ・リー・バークのデイヴ・ロビショー・シリーズや、ジェイムズ・エルロイの「暗黒のL.A. 4部作」などいろいろ読み漁っておりました。
当時『探偵 神宮寺三郎』シリーズにもハマっていて、探偵助手の御苑洋子さんが好きだったワタクシは、『女には向かない職業』=女性探偵ものということで、ちょっと読んでみようかなと手に取った作品でした。
それなのになぜ途中で挫折したのかというと、理由は二つありました。
まずは小説の構成と文体。
もともとの文章がそうなのか、
翻訳した際にそうなったのかは分かりませんが、
改行や行スペースが妙に少なく、
文章がみっちり詰まった感じで、
さらに文体もやや古風な印象だったので、
当時の自分にはすらすらと読めなかったのでした。
二つ目は当時在籍していた大学の研究室の雰囲気。
ワタクシ「映画音楽物書き」などというバリバリ文系チックな仕事をしておりますが、当時は某理系私大の工学部系研究室に在籍しておりました。
大学4年の卒業研究の時は、ゴツい実験装置を使って毎日いろいろな測定を行っていましたが、測定中や装置を使う順番待ちで、長い長い待ち時間が発生するわけです。
で、自分はその待ち時間に小説を読みながら時間を潰していたのですが、ほかの卒研生や院生たちはというと、雑誌やマンガを読んだり、研究室に置いてあるプレステで遊んだり、だらだらネットサーフィンしたりして過ごすのが定番でした。
だからワタクシの存在はものすごく浮いていたんですね。
「小説なんか読んで気取りやがって」みたいな目で見られていた。
そんなわけで、『女には向かない職業』を最後まで読めなかったのです。
いま振り返ってみても、あまりいい研究室じゃなかったですね…。
大学院に進まず、某国立大学の文学部英文科に学部研究生で居候させてもらって正解でした(こちらの研究室ではよい学部研究生ライフを送らせて頂きました)。
二十年かそこらぶりに『女には向かない職業』を読み始めてみたら、探偵事務所の共同経営者バーニイ・プライドが自殺していたエピソード(要するに物語の序盤)以外はいい感じに内容を忘れていたので、とても新鮮な気持ちでコーデリア・グレイの活躍を楽しむことが出来ました。
複雑な家庭環境で育ったけれども屈折しておらず、
インテリだけれどもそれを殊更ひけらかさず、
世間知らずで無垢、でも芯は強い。
「彼のことを追い出したくせに、そのあとは様子もきいてやらなかったじゃないの。お葬式にも来なかったじゃないの!」
物語の終盤、コーデリアが泣きじゃくりながらこの言葉を発した時、ワタクシ完全にコーデリア・グレイに惚れました。「コーデリアいい子だなぁ…」と胸を打たれた次第です。
…というわけで、コーデリアの活躍がもっと読みたくなったので、先日続編『皮膚の下の頭蓋骨』を買いました。
今回は孤島の古城で演じられる古典劇の主演女優の殺人事件ということで、ページ数が『女には向かない職業』の約2倍近くで、さらに語り手(=文章)の視点がコーデリアだけでなく、事件の容疑者や操作を担当する主任警部・部長刑事に切り替わる構成なので、いささか面食らっております。。
しかしまぁ、これは『探偵 神宮寺三郎』シリーズでもおなじみの「ザッピングシステム」だと思って読むことにします。
前作の「あの事件」を経験し、そのうえ井戸に落とされて死にかけたコーデリアが、クセ者揃いの容疑者相手にどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。
どのみち新型コロナワクチン(ファイザー製)をダブルタップ接種して、抗体がつくまで2週間くらいは家に引きこもって安静にしていなければいけないので、集中して読み進めていけるでしょう。
ちなみに接種から数日経ちましたが、いまのところ腕の鈍痛と微熱(37度4分)程度でヘヴィな副反応は見られません。このままで落ち着くといいのですが。