ランブリング・レコーズ様のご依頼で、映画『マーベラス』(21)の国内盤サントラに音楽解説を書かせて頂きました。
サントラはいわゆる劇伴集のスコアアルバムでして、作曲はフォーテックことルパート・パークス。90年代にUKのクラブミュージックシーンで「ドラムンベース界の鬼才」として名をはせたミュージシャンですね。
フォーテックというとワタクシ学生時代にアルバムを聴きまくったアーティストでして、「Modus Operandi」と「Solaris」は特によく聴いたアルバムでした。
BANGER!!!のコラムでもチラッと書かせて頂きましたが、自分の場合、フォーテックの曲は『ブレイド』(98)のエンドクレジットで流れた”Ni-Ten-Ichi-Ryu”と、プレステのゲームソフト『ワイプアウトXL』(96)の”The Third Sequence”で興味を持って、あの独特なリズム感のドラムンベースサウンドにハマった感じです。
復讐の暗殺者マギー・Q!『マーベラス』 はクールなエレクトロ・スコアも必聴!!
ドラムンベースの鬼才フォーテックが音楽担当
https://www.banger.jp/movie/80458/
ケミカル・ブラザーズやアンダーワールド、マッシヴ・アタック、ダフト・パンクが大作や話題作でスペシャル感のあるエレクトロニック・スコアを作曲しているのとは対照的に、フォーテックは日本未公開作や小作品のスコアを作曲する機会が多かったようです。
ジョン・パウエルの『ミニミニ大作戦』(03)で追加スコアの作曲を担当していたものの、単独で本格的なアクションスコアを作曲するのは今回の『マーベラス』が初めてということになります。
前述の”Ni-Ten-Ichi-Ryu”のようなドラムンベーススコアをガンガン鳴らしてくるのかと思ったら、予想よりも「映画の劇伴」に寄せた感じのサウンドになっていたのが興味深かったですね。
ケミカル・ブラザーズの『ハンナ』(11)やダフト・パンクの『トロン:レガシー』(10)、マッシヴ・アタックの『ダニー・ザ・ドッグ』(05)の音楽が「一聴しただけですぐ誰のものか分かる曲」に仕上がっているのに対して、フォーテックは自身のアーティスト性をゴリゴリに前面に出すのではなく、「映画音楽家のルパート・パークス」として曲作りに取り組んでいる感じなのかなと思います。
楽曲のほとんどはフォーテックの打ち込みで作られたものと思われますが、Additional Musicで3人の音楽家の名前がクレジットされているので、おそらくストリングスアレンジやオーケストレーションなどは彼らの助けを借りているのでしょう。そこにフォーテックの電子音と打ち込みのリズムがミックスされているタイプのスコアです。
マーティン・キャンベル監督はフォーテックの音楽を気に入ったのか、リーアム・ニーソン主演の『Memory』(22)でもフォーテックにスコア作曲を依頼してます。
『マーベラス』でアクションスコアの作曲経験を積んだ彼の次回作ということで、『Memory』ではさらに進化したフォーテックのスコアを聴くことが出来るのではないかと。
『マーベラス』オリジナル・サウンドトラック
音楽:フォーテック
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3439
価格:2,640円(税込)
発売予定日:2022年6月29日