年末年始にムービープラスやBS12で『ジェイソン・ボーン』シリーズ(あるいは『ボーン』シリーズ)が一挙放送されるので、それに合わせて映画情報サイト「BANGER!!!」でシリーズの音楽を紹介するコラムを書きました。
続編製作の噂も? 紆余曲折『ボーン』シリーズの音楽世界に迫る! ~『アイデンティティー』からスピンオフまで~ | https://www.banger.jp/movie/108228/
BANGER!!!のコラムで書けなかったネタをブログで補足させて頂きます…という話でしたが、『ボーン・スプレマシー』(04)は書き足すネタも少なめなので、『ボーン・アルティメイタム』(07)とまとめさせて頂きました。ちなみに後者の国内盤サントラには、封入冊子に音楽解説を書かせて頂きました。お仕事の機会を頂いたときは嬉しかったなぁ。。
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高速カッティングの映像とパーカッションのリズムを同期させる音楽的発明
監督がダグ・リーマンからポール・グリーングラスに交代してからの『ジェイソン・ボーン』シリーズは、カメラを激しく揺らす映像と、「そこまでやる?」という細かいカット割りが最大の特徴でしょう。あの高速カッティングの映像にアップテンポなリズムを同期させてスピード感を生み出すというのは、ある種の音楽的発明(発見)と言っても差し支えないのではないかと思います。
ちなみにパーカッション奏者の参加人数だけならば、第3作の『ボーン・アルティメイタム』よりも『ボーン・スプレマシー』のほうが多いです。
『ボーン・アルティメイタム』の音楽でジョン・パウエルが「うまくいかなかった」と思ったこととは
この件については5,6年くらい前までパウエルのインタビュー記事がネット上で読めたのですが、元記事が消えてしまっていたのでBANGER!!!のコラムには詳しく書きませんでした。
当方のPCに残っていた記事のメモをもとにして簡単に書くならば、パウエルは「3作目ということを意識しすぎて、スコアに3連符を使いすぎた」というようなことを言っていました。
これは『ボーン・アルティメイタム』をマスコミ試写で観た時にも気がついたことだったのですが、『ボーン・アイデンティティー』(02)のスコアを流用しているシーンがいくつかありました。だからあとになって前述のパウエルのインタビュー記事を読んだ時、「ああそうか、”うまくいかなかった”スコアを第1作のスコアと差し替えたのか」と合点がいったのでした。
ジョン・パウエルがアニメ映画のスコア作曲中心の仕事をするようになった理由
パウエルは2011年あたりから実写映画(特にアクション映画)の作曲をほとんど担当しなくなり、今日に至るまで『ヒックとドラゴン』(10)のようなアニメ映画の仕事が中心になりました。
その理由はBANGER!!!のコラムでも書いたとおり、パウエルが「暴力的な映画は好きではない」という人だからなのですが、どうも本国のインタビュー記事に目を通してみると、キャリア初期からそういう考えの持ち主だった模様。
『ジェイソン・ボーン』シリーズは暴力的ではないのか? …という疑問がわいてくるわけですが、「ジェイソン・ボーンは常に暴力の被害者であり、自分が何者なのかを突き止めようとする以外のことで暴力は振るっていない」というのがパウエルの見解らしい。
確かにジェイソン・ボーンは「なるべく事を荒立てずに済ませたいのに、相手が本気で殺しにかかってくるので武力でそれに対抗せざるを得ない」という展開が多いですからね。暴力を扇動するようなキャラではないということなのでしょう。
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『ボーン・スプレマシー』から始まったパウエルとグリーングラスのタッグは、『ユナイテッド93』(06)、『ボーン・アルティメイタム』、『グリーン・ゾーン』(10)まで続いて一旦終了となりましたが、『ジェイソン・ボーン』で6年ぶりに再タッグが実現したのでした。