アルバムのテーマは「ラーメン離婚」だった!? 1996年当時の幸宏さんのインタビュー記事と共に「Portrait with No Name」を聴く。

昨年の暮れからコツコツ買い揃えていっている、高橋幸宏さん東芝EMI在籍時代のアルバムのリマスタリングSHM-CD盤。先日「Portrait with No Name」を買いました。1990年代当時好きでよく聴いたアルバムです。

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ご本人は2006年のレコード・コレクターズのインタビューで「自分の中ではあっさりし過ぎている印象があって」と仰っていましたが、個人的にはCMタイアップ曲が3曲あったせいか歌謡曲テイスト強めだった「Mr. YT」より、”ドラムンベース邂逅編”とでも言うべき「Portrait with No Name」のほうが好きでした。

連休中実家に帰ったとき、自分の部屋で当時新星堂が発行していたフリーペーパー「pause」の幸宏さんのインタビュー記事のスクラップを見つけまして、懐かしいなぁ、そういえばこんなことを仰ってたなぁと思いながら読んでいました。

そのフリーペーパー誌上で幸宏さんご本人が全曲解説をしていらっしゃったので、大雑把にまとめてご紹介したいと思います。

■アルバムの隠れテーマは「ラーメン離婚」だった!?

シングル曲「名もなき恋愛」の歌詞の打ち合わせで、鈴木慶一が「最近”ラーメン離婚”ってのが多いらしいよ」という話を切り出したのだとか。
「ラーメン離婚ってなに?」…という感じですが、要は「夫が夜遅くに帰って来て、妻に”ラーメン作ってくれる?”と頼むと、妻はただ黙ってラーメンを作ってくれる。そして次の日の朝に“私はあなたのラーメンを作るために結婚したんじゃありません”と書き置きを残して出て行く」というシチュエーションのことらしい。

で、夫が食べたがっているラーメンを作ってあげるという行為が「ラーメンを作るために結婚したんじゃない」という問題にすり替わるのはなぜだろう? という話になって、「それはつまり、二人の間に”何もなければいい”ということなんだろうか。期待も、形も、名前も…」という結論になって、「Portrait with No Name」というアルバムタイトルが生まれることになったのだそうです。
「Nameless」みたいなタイトルはストレート過ぎてカッコ悪いので、アメリカの”A Horse with No Name”からアイデアを頂いたと仰っていました。

■幸宏さんご本人によるアルバム収録曲解説(参考文献:新星堂フリーペーパー”pause”)

1. HOLE IN MY SHOE

幸宏さんが昔からやりたいと思っていたトラフィックのカヴァーで、YENレーベル在籍時代にやろうとしてもダメで、再生YMOのときもやろうとしたけれども、あのときの(「TECHNODON」の)作風にはポップ過ぎて断念したのだそうです。カヴァーするからには原曲に忠実にやろうと思ったとのこと。

2. 名もなき恋愛

プリプロダクションの頃からシングルで行くことを決めていた曲だそうです。
なにかいい歌詞がつかないかな、と鈴木慶一と話していて、前述の「ラーメン離婚」の話が出たと。
だからアルバムのテーマになるような曲ということになりますね。

3. おいしい水

竹中直人のアルバム「イレイザーヘッド」用に書いた曲のセルフカヴァー。
原曲はボサノヴァだけれども、幸宏さんのはドラムンベースを効かせた編曲。
幸宏さん曰く「竹中くんは歌詞を書くのに1週間ぐらいかかった」そうで、「いつもの調子(=コミックソング)だったら簡単に書くのに、真面目な詞を書くのは彼には大変だったらしい」と笑っていました。

4. 終わらない旅

この時期のご自分の作品では、必ず”年を取る”ということをテーマにした曲を入れることにしていたそうです。
で、森雪之丞と「年取ってなにが変わるんだろうね」と話していて、「別に結局なにも変わらないんじゃない?」という結論になった。そういう歌だそうです。
曲調はニール・ヤングやプロコル・ハルムに影響を受けているとのこと。

5. FIELD GLASS

歌詞よりも先にサウンドができていた曲だそうです。
今回のアルバムではベースに音程感があまりなく、重低音だけが下にいて、ベースとドラムがユニゾンでくっついているような感じを意識してサウンドを作っていたとのこと。

6. 流れ星ひとつ

「ちょっとメランコリーな曲を書いてみようと思って作った曲」とのこと。
高野寛に「”SUKIYAKI”みたいな歌詞がいいなあ」とオーダーしたらこういう曲が出来上がってきたらしい。
幸宏さん曰く「エコロジーっぽいニュアンスの入った高野くんらしい歌詞」の曲です。

7. どんないいこと

当時(自分を含む)多くの幸宏さんリスナーを困惑させたSMAPのカヴァー。
幸宏さん曰く「この曲、前から好きだったんですよ」とのこと。
でも音数が多いので、一人で歌うとしたらどうしようかと思って、ちょっとミディアムな雰囲気にやってみたのだとか。

8. 足ながおじさんになれずに

曲タイトルを幸宏さんが先に言って、鈴木慶一に歌詞を書いてもらったという曲。
「若い娘に対して足ながおじさんになれなかったね」という歌を歌ってみたいと思って作った曲らしい。

9. あの雲は、今日

「いつもどおりの僕の世界の曲」と幸宏さんが仰ってました。
次の曲(”I’ll be Home”)のために作った曲でもあるのだとか。

10. I’ LL BE HOME

ひとつ前の曲(「あの雲は、今日」)で男は家を出て行ってしまって、そのくせ旅先でクヨクヨしている。そして最後にこのランディ・ニューマンのカヴァーで「僕は家にいるよ」と繋げたかったのだそうです。

実家に「Portrait with No Name」の旧盤(1996年当時買ったもの)があったのですが、経年劣化で三方背の透明プラケースが変色しておりました…。まあ28年経ちましたから致し方なしといったところでしょう。CDのプラケースと違って、この手のプラ素材は変色しやすいですからね。


ちなみにオビやブックレットは変色せず無事でした。

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