先頃La-La Land Recordsから発売になった『ラスト・アクション・ヒーロー』(93)のCD2枚組サントラを買いました。
正直この映画にそんなに思い入れがあったわけではないのですが、音楽がマイケル・ケイメンということで購入に至った次第です(当方は”ケイメニスト”でもありますので)。
ラスト・アクション・ヒーロー リマスター&完全盤 世界3000枚限定盤 (サウンドトラック) – amazon
Last Action Hero: Original Motion Picture Score (Expanded Edition) – TOWER RECORDS
Disc1とDisc2にまたがってケイメンのスコアがフルに収録されていて、Disc2にはバージョン違いが3曲と、1993年当時ひっそり発売になっていたスコア盤の内容(全12曲)をまるっと収録。収録時間は合計148分という大ボリュームです。
サクッとケイメンのスコアを聴きたいときは、Disc2収録の1993年盤の楽曲(12曲で41分くらい)を聴けばOK、という聴き方もできます。
あ、念のため書いておきますが、このアルバムはケイメンのスコア(劇伴)集なので、主題歌や挿入歌は収録されていません。「歌曲が聴きたいよ~」という方は当時発売になったソングコンピ盤サントラをどこかで探してご購入下さい。
ここ数年、BANGER!!!で『リーサル・ウェポン』シリーズ(87~98)の音楽コラムを書いたり、BS/CSで『ダイ・ハード』一挙放送があったり、『ロードハウス/孤独の街』(89)と『ロビン・フッド』(91)のスコア盤サントラを買ったり、ケイメンの音楽を聴く機会が多くなっています。
そんな中で聴かせて頂いた今回の『ラスト・アクション・ヒーロー』ですが、数分聴いただけで「あ、これケイメンさんの曲だ」と分かる音を鳴らしてくれています。
『ダイ・ハード』や『リーサル・ウェポン』のスコアでも聴かれる特徴的な管弦楽器の使い方が本作でも顕著です。
『ラスト・アクション・ヒーロー』のスコアの大きな特徴と言えば、エレクトリック・ギターのぶっとい音が随所でグワングワン鳴っていることでしょうか。ケイメン作品の中でもかなりロック色の強いスコアと言えるかもしれません。
とはいえ本作は少年が主人公の物語という側面もありますので、ジュブナイル映画的な温かみのある楽曲があるのもポイント。ケイメンは”こっち路線”の音楽も巧いです(名作『アイアン・ジャイアント』(99)もその雰囲気があったなぁ、と)。
さて今回の『ラスト・アクション・ヒーロー』拡張盤サントラ、ブックレットのクレジットを読むと「The Hollywood Studio Symphony」としてクレジットされているギタリストはジョン・グークス、ジョン・シャンクス、フランク・シムズの3人ですが、1993年リリースのスコア盤に書かれてあった参加ミュージシャンのクレジットでは、バケットヘッド、クリス・デガーモ、ジェリー・カントレル、リック・ニールセンらロック界の腕利きギタリストの名前が続々とクレジットされている。これは一体どういうことなのか。
バケットヘッドは”Jack And The Ripper”と”Danny”のスコアの共同作曲者でギターも弾いているから分かりやすいとして、デガーモはクイーンズライクのメンバーとして”Real World”をケイメンと合作したからギタリストとしてクレジットされているのか、カントレルもアリス・イン・チェインズとして”A Little Bitter”を提供したからギタリストとしてクレジットされているのか、あるいは二人とも歌曲だけでなくスコアのレコーディングにも参加しているのか、このあたりがイマイチよく分からない。
まあ何にしても、スコアの中でかなり派手にギターを鳴らしているということで、「ニューヨーク・ロックンロール・アンサンブル」を結成していたケイメンの個性が前面に出た”ロックな”劇伴と言えるでしょう。
ケイメンはクイーンズライクのメンバーと親しかったりしたらしいので、歌曲のバンド選定にもそれなりに携わっていたのではないでしょうか。
ブックレットではジョン・マクティアナン監督に最新のインタビューを実施していました。
マクティアナン監督はあれですよ…『ローラーボール』(02)で大コケした挙句、私立探偵を雇ってプロデューサーの電話を違法に盗聴していたうえに、FBIに虚偽の証言をしたということで実刑判決を食らって映画業界から干されてしまったという話を聞いていたので、ちょっと驚きでした。
で、マクティアナンは当時のことを振り返っていろいろ話しているのですが、ケイメンと仕事をするのはとにかく楽しかったと語っていました。「もっと彼と一緒に仕事ができればよかった」とも。
マクティアナンが『ラスト・アクション・ヒーロー』のレコーディング現場に行ったら、ケイメンが嬉しそうに「来てくれたのか!」と言いながらベアハグをしてきたらしい。
あとオーケストレーターのウィリアム・ロスのインタビューも載っていましたが、彼によるとアーノルド・シュワルツェネッガーも一度レコーディングの見学に来たそうです。生演奏を聴いてご満悦だったらしい。
彼らがインタビューで話していた内容で共通しているのが、「ケイメンは現場を明るい雰囲気にしてくれる人だった」ということでした。なんだか分かる気がします。
1990年代当時はわりと酷評された『ラスト・アクション・ヒーロー』ですが、先日ザ・シネマで放送があったときに久々に観たところ、「こういうアクション映画があってもいいのではないか」と思いました。なんだかもう惰性で作られているような印象すら受ける近年のヒーロー映画より、よっぽど”ヒーロー映画”していましたし。「シュワルツェネッガーのキャリア絶頂期に作られたナルシシスト映画」というそしりを受けた映画でありましたが、ちゃんと「セレブというのはいけ好かない人種です」という描写が入っているのもフェアでよき。
あの頃のほうがアクション映画に「(ジャンルの)多様性」があったのではないだろうか、と思う今日この頃です。