逡巡の末、『地球に落ちて来た男』の2枚組CD&2枚組LPボックス・セットサウンドトラックアルバムを購入したお話。

『地球に落ちて来た男』(76)のサウンドトラックアルバムが、40年の時を経て2016年に初リリースになったとき、自分は2枚組CDのサントラを買いました。しかも国内盤ではなく輸入盤で。

地球に落ちて来た男 オリジナル・サウンドトラック(通常盤) – amazon
地球に落ちて来た男 オリジナル・サウンドトラック(通常盤) – TOWER RECORDS
THE MAN WHO FELL TO EARTH Original Motion Picture soundtrack (輸入盤) – TOWER RECORDS

当方の懐具合と仕事場の部屋面積、そしてオーディオプレーヤー環境を考えるとアナログ盤の需要はなく、この映画を観る機会にも恵まれそうにないので、曲を聴くだけならCDで充分だろうと(当時は)思ったのでした。

地球に落ちて来た男 4Kレストア 特別版 UHD+Blu-ray [Blu-ray] – amazon
地球に落ちて来た男 4Kレストア 特別版 [Blu-ray] – amazon
地球に落ちて来た男 4Kレストア 特別版 [4K Ultra HD Blu-ray Disc+Blu-ray Disc] – TOWER RECORDS
地球に落ちて来た男 4Kレストア 特別版 – TOWER RECORDS

しかし今年になって4Kレストア版のブルーレイが発売になり、「やっぱり2枚組CD&2枚組LPボックス・セットのサントラを買っておくべきだったのではないか…?」と思うようになりました。映画音楽物書きをしている自分としては、48ページのハードバック・ブックの内容が気になって仕方がなかった。

とはいえお値段が16,000円前後というのは、アナログレコードを聴かない(聴けない)環境にある自分としてはいささか厳しいな…と購入を躊躇していたところ、某ショップのワゴンセール企画でほぼ半額の8,000円台で売られているのを発見。
「これはワケあり特価とか中古盤か?」と思って詳しく調べてみたものの、どうやら未開封新品の輸入盤の模様。このチャンスを逃す手はないと即購入しました。翌週にはワゴンセールが終わっていたのか通常価格に戻っていたので、決断が早くてよかったです。。

かくして当方の手元に届いたのがこちらの製品。

地球に落ちて来た男 オリジナル・サウンドトラック<デラックス・エディション>(完全生産限定盤) – amazon
地球に落ちて来た男 オリジナル・サウンドトラック デラックス・エディション(完全生産限定盤) – TOWER RECORDS
The Man Who Fell to Earth [2CD+2LP]<限定盤> – TOWER RECORDS

特製ハードケースの中に青ジャケと赤ジャケのアナログレコード、CD2枚が収納された48ページのハードバック・ブック、そしてポスターが入っています(絵柄はハードバック・ブックのものと同一)。思った以上に重量があって、受取先のコンビニから仕事場に持ち帰るまで結構重くて大変でした。

ハードバック・ブックにはCDのブックレットには未収録だったレア写真が多数収録されているので、おそらくデヴィッド・ボウイのファンの方は、このハードバック・ブックに写真集としての価値を見出すのでしょう。
しかし自分の場合はパオロ・ヒューイットによる映画についてのエッセイと、映画の編集を務めたグレアム・クリフォードのライナーノーツが読み物として大変興味深かった。

当初はボウイが某英国ポップス界の名アレンジャーと共同で音楽を手掛けることになっていたものの、諸々の理由で頓挫して、最終的にママス&パパスのジョン・フィリップスが短期間で音楽を製作しなければならなくなった話とか、ツトム・ヤマシタの曲を使うアイデアは編集技師のクリフォードによってもたらされたもので、そもそも彼が「ある映画」で「某巨匠映画音楽家」からヤマシタを紹介されたことがきっかけだったという話など、興味深いエピソードが満載(勿体ないので詳細な内容は伏せておきます)。これだけでもお高いCD&LP盤ボックスセットを買ってよかったと思ったほどです。

それにしても、音楽ジャンル的にはフォークロック/サイケデリック・ロックにあたるママス&パパスのジョン・フィリップスにSF映画の音楽制作を依頼するという人選が面白い。日本で言えば「はっぴいえんど」時代の細野(晴臣)さんにSF映画の曲を書いてもらうような感じでしょうか。ちょっと違うかな。
だからフィリップスの音楽もシンセを使ったSF映画音楽ではなく、カントリー調だったり、ジャズだったり、ポップスだったりする。本作にはアメリカ的な音楽が求められていたらしいので、これが”正解”だったのでしょう。なおレコーディングには元ローリング・ストーンズのミック・テイラーやB.J.コールが参加しているので、ギターとペダルスティールギターの音も聴きどころかと。

この時期のフィリップスは頻繁にドラッグをやっていたらしく、ミックス作業中に「ノイズが聞こえる!やり直せ!」と何度もエンジニアに怒ったものの、実際は録音した曲に何も問題はなく、フィリップスがドラッグのやり過ぎで幻聴を聴いていただけだったという、笑うに笑えない話もあったらしい(ガーディアン誌のWeb記事か何かにそういう話が載っていました)。

ある種異様なテンションの中で作られた音楽は、皮肉にも(「だからこそ」なのかもしれませんが)完成度の高いものとなり、監督のニコラス・ローグも大いに気に入ったのだとか。

映画のSF的な要素はツトム・ヤマシタの楽曲が担っている部分が大きいのかなと思います。この映画のために書き下ろされた曲ではないのに、映画のイメージにピタリと合致するというのはなかなかすごいなと。選曲の妙というやつでしょうか。

ちなみに本盤に収録された”Hello Mary Lou”はインストバージョンですが、何しろこの映画のサウンドトラックの録音テープ自体が長年紛失されていたものだったわけですから、ボーカル入りバージョンはおそらくテープがもう残っていないのでしょう。あと劇中で使われた既製曲は未収録のものもあるので、これらについてはセルフ補完する必要があります。

何はともあれ、2CD&2LP盤ボックスセットを買ったおかげで新たな発見がありました。

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