『セブン』の劇伴はオーケストラの重暗い音で構成されたアンダースコア的な作風ですが、その中で異様な存在感を示すモティーフがあります。 それが「ジョン・ドゥのテーマ」なのですが、例えば”Portrait of John Doe”という曲をよく聞くと、出だしのフレーズが7音(「デーデッ、デーデッ、デー、デー、デー」…と2音からなる下降音2つと3つの持続音)で構成されているのでは?…ということに気づいたのでした。
トレント・レズナーによれば「自己嫌悪と執着心についての歌」なのだそうですが、歌詞の“I wanna fxxx you like an animal”や“I wanna feel you from the inside”という部分が特に注目された結果「欲望賛歌」と誤解され、そっちの意味でリスナーに受けてヒットしてしまったのだとか。
ボウイのリスナーには説明不要ですが、この曲が収録されたアルバム「アウトサイド」は、「ネイサン・アドラーの日記」という架空の猟奇的殺人事件を題材にしたコンセプチュアルな作品でした。 そしてこのアルバムの収録曲には”To be sung by”と補足が書かれたものがあり、それぞれ「物語の登場人物の視点」を持っているのでした。
“The Hearts Filthy Lesson”には (to be sung by Detective Nathan Adler)とクレジットされているので、「探偵ネイサン・アドラー」の視点から歌われているということになります。
「アウトサイド」からは”I’m Deranged”という曲がデイヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』(97)で使われていましたが、こちらは(To be sung by The Artist / Minotaur)となっているので、「芸術家/ミノタウロス」の視点で歌われた曲ということになります。