本日はweb上で賛否両論巻き起こっている映画『地球が静止する日』について。
この映画はロバート・ワイズ監督の古典SF作品『地球の静止する日』(51)のリメイク
なわけですが、冷戦下の核戦争の脅威を描いていた前作と異なり、今回は環境破壊
への警告がテーマとなってます。
例によって宇宙からの使者クラトゥ(キアヌ・リーブス)は「地球外文明の代表」として
地球にやって来るわけですが、リメイク版はこの時点で既にある「任務」を遂行する
気でいるので、核戦争を放棄するよう「説得」に来た51年版のクラトゥ(マイケル・
レニー)に比べると今回は非情な感じに描かれてます。
ま、それも無理ないかなと思うわけです。51年版同様、地球に降り立ったクラトゥは
おもむろに米軍に発砲されて負傷するし、「国の代表(=大統領とか)に会わせて
ほしい」と頼んでも拒まれるし、オリジナル版から57年経っても人類(特にアメリカ人)が
全然進歩していないんですな。相変わらず米軍は「未知なるもの」に攻撃を仕掛ける
ことしか考えてないし…。これだから「友好的な態度で説得を試みても聞く耳持たない
だろう」ってな発想になるのも分かる気がするのです。
で、クラトゥ氏は「人類が滅亡すれば、地球は生き残れる」とのたまうワケですが、
これも何となく納得してしまうんですよ。特にアメリカは環境問題に取り組みたがら
ない国ですからね。そういえば『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でも、シャアは
アクシズを地球に激突させて人類を粛清しようとしていましたし、『機動戦士Vガン
ダム』ではタイヤ付き戦艦で地球上のあらゆる建造物をブッ潰す「地球浄化作戦」
なんてのもありましたな。「人類が生きている事自体、地球にとって有害である」
という発想は、割とよくある考え方なのかもしれません。
原作では、クラトゥが人類に警告を発するため、30分だけ世界中の電気をストップ
させるシーンが物語の中盤にあるのですが、今回のリメイク版ではその場面がラスト
シーンに移されているのです。これはヘレン(ジェニファー・コネリー)やバーンハート
教授(ジョン・クリース)が「危機に瀕したとき、人類は変わる事(進化)ができる」と
言った事を受けてのラストなのでしょう。
「そんなに人間が変われるというなら、この状況から変わってごらん」という、クラトゥ
から出された地球人への課題というか試練というか…そんな感じかな、と。「ここまで
切羽詰まった状況にならないと、人間って行動を起こさないモンかなぁ〜」とも思うの
ですが、そういやワタクシ自身も来年の年賀状を数日前にやっと書き終えたばかり
でした。うーむ、そう考えるとなかなか深いメッセージだ(笑)。
映画の中身について言えば、キアヌのクラトゥ役はなかなかハマっておりました。
この人はこういう無表情なキャラクターを演じると神秘的な感じになりますからね。
薄幸のヒロインを演じたジェニファー・コネリーもステキでよかったなぁ。ウィル・スミスの
息子はちょっとイラっと来たのでノーコメント。
脇役で『プリズン・ブレイク』のロバート・ネッパー(ティーバッグ役の人)と、『24 -TWETNY
FOUR-』のロジャー・クロス(カーティス役の人)が軍人役で出てましたね。多分、ネッパー
の演じた軍人はバグの大群に巻き込まれてお亡くなりになったかと。
さて『地球の静止する日』の音楽といえば、バーナード・ハーマンのテルミンを使った
音楽が有名ですが、今回のリメイク版の音楽を手がけたタイラー・ベイツは、51年版は
意識せずに全くのオリジナル音楽を書き下ろしました。
今回、音楽についてもいろいろ書こうと思ったのですが、文章が予想以上に長くなった
ので「次回につづく」という事にさせて頂きます。
なお、国内版サウンドトラックCDはランブリング・レコーズより1/21に発売です。
『地球が静止する日』オリジナル・サウンドトラック
音楽:タイラー・ベイツ
品番:GNCE7040
定価:2,625円