どうもTVゲームの映画化というのは大ヒットさせるのが難しいらしく、映画の題材としては確実なヒットが見込めるような「おいしいネタ」ではないような印象があります。
だから、あのジェリー・ブラッカイマーが『プリンス・オブ・ペルシャ / 時間の砂』を映画化すると聞いた時はちょっと意外でした。ビジネス的にリスキーな企画には絶対手を出しそうにないお方ですから。まぁ確かに、あのゲームの舞台設定やプリンスのアクロバティックなアクション、アイテム「時間の砂」のギミックは実写化したら面白いかもしれないけど、話がおざなりだと素材のよさが消えちまうぞ、と期待半分、不安半分で映画本編を鑑賞。
しかしそこはブラッカイマー&マイク・ニューウェル監督作品。他の悲惨な出来だったTVゲーム実写化作品と比べると、割とよく出来た映画でした。ラストの展開が反則ギリギリという気もするのですが、「時間の砂」が話のキモになっているとすると、ああするしかなかったのかなーとも思ったり。
同名ゲームの実写化とはいえ、ストーリーはほとんど映画のオリジナル。ゲーム版のプリンスと違って映画版には「ダスタン」という立派な名前があるし、ヒロインはファラではなくてタミーナ王女(ジェマ・アータートン)だし、大臣にあたる悪役キャラはシャラマン王の弟ニザム(ベン・キングズレー)という設定に変更されてます。ゲーム版を知っていると、キャラ設定にちょっと違和感を覚えるかも。
が、しかし。ゲーム版のあの驚異的な跳躍力を駆使したアクションは結構忠実に再現されてます。資料によると、ダスタン役のジェイク・ギレンホールはゲーム版のアクションを実写で再現するためにパルクールの猛特訓を受けたそうで、これが本作最大の見所になってます。『ボーン・アルティメイタム』(07)のタンジールのシーンとか、『アルティメット』(06)、『YAMAKASHI』(01)あたりのアクションがお好きな方にお勧め。今後アクション映画に主演する若手俳優は、パルクールの習得が必須になるかもしれません。
個人的にジェイク・ギレンホールは好きな俳優の一人なのですが、本作での肉体派スターへの変貌ぶりは圧巻でした。何か、首のあたりも普段より一回り太くなってるし、あれは相当鍛えたんじゃないだろうか。ヴィジュアル的にもゲーム版と遜色ない風体で好印象。モデル上がりのヤワな二枚目にはない「男の魅力」ってやつを感じます。
じゃじゃ馬っぽい姫君を演じるジェマたんも、絶世の美女と言われる割にはちとシンプルなお顔立ちのような気もしますが、あれはあれで結構可愛いんじゃない?と思わせるものを持ってます。ジェマたんにキングズレー、アルフレッド・モリーナ、リチャード・コイル、トビー・ケベル(『ロックンローラ』(08)のジョニー役の人)など、イギリス人俳優がペルシャ人を演じているのですが、これがまた全然違和感がない。皆さんこんがりと日焼けしてるし(褐色に塗っているのかもしれませんが)、何より顔が濃い。これもキャスティングの妙というやつでしょうか。個人的にはナイフ投げの達人の男気にグッときました。
アンバーカラーを基調としたザラついた質感の映像もなかなか高級感があっていいですな(撮影監督は『イングリッシュ・ペイシェント』(96)のジョン・シール)。同じブラッカイマー作品でも『ナショナル・トレジャー』シリーズよりも作りが丁寧な印象を受けるのですが、いかがでしょう。
そういえばこの映画、続編製作の話も出ているそうですが、実現したらあの「ケンシノココロ」に出た”時の番人”ダハカは登場するんだろうか。この映画でも時間の砂で歴史を変えちゃったから、続編でダハカが出ても不思議はないよなー。それはそれでどんな話になるか楽しみかも(そもそも続編作るのか?という疑問もありますが。期待したほどヒットしなかったみたいだし)。
音楽についてはまた次回。