『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。
今回はジェフの作品から、ポール・W・S・アンダーソン監督&ミラ・ジョヴォヴィッチ主演『バイオハザード』シリーズの2作目、『バイオハザードII アポカリプス』(04)をご紹介します。
有名ゲームソフトの映画化、と言っても映画版のバイオハザードは独自のストーリーを展開しているため、忠実な映画化とは言い難いものがあります。が、しかし。この『バイオII』はシリーズ中最も再現度が高い要素があります。それは登場キャラクター。さらに言うならジル・バレンタイン。
何と言っても、シエンナ・ギロリー扮するジル・バレンタインのコスプレが最高なのですよ。ゲーム版『バイオIII』のコスチュームを完璧に着こなしてます。よくこれだけイメージがぴったりの女優さんを探してきたもんだ。映画版『バイオII』の真のヒロインはジルといっても過言ではないでしょう。この映画はシエンナジルの事だけで語り尽くせます(ヒドい言い方)。
しかし肝心の映画本編…というか、格闘アクションの見せ方がイマイチなのが残念。監督のアレクサンダー・ウィットは『ハンニバル』(01)とか『ボーン・アイデンティティー』(02)の第二班撮影監督をやっていた人(この映画の後、『ワールド・オブ・ライズ』(08)の撮影監督に抜擢されます)なので、長編映画監督としての手腕はまだまだだったのでしょう。その点、続編の『バイオハザードIII』(07)はベテランB級アクション監督のラッセル・マルケイだったから、映像にも一種のケレン味というかメリハリがあったような気がします。
本作の音楽にジェフ・ダナが抜擢されたのは、恐らく映画の製作国のひとつにカナダが入っていたからでしょう(主要シーンの撮影も大半はカナダ国内)。大人の事情というか、製作上の都合というか、そういった理由と思われます。
映画版1作目はマルコ・ベルトラミとマリリン・マンソンという消化不良を起こしそうな組み合わせでスコアを作曲していましたが、今回はジェフ単独のクレジット(エリア・クミラルが追加音楽を担当)。演奏はロンドンのThe Philharmonia Orchestra。『処刑人』(99)とも違うイマドキのホラー・アクション・スコアという感じ。ケルト音楽&古楽器好きの一面やギタリストとしての自分を封印して、完全に「映画音楽職人」モードでスコアを書いてます。
スコア盤にアンダーソンがライナーノーツを寄稿していて、「自分はジョン・カーペンター映画が大好きなので、エレクトロニクスとオーケストラを組み合わせたジェフのクールでモダンなサウンドが最高に気に入っている」みたいな事を言ってます。アリスとネメシスのどつき合いのシーンで流れる”Alice Battles The Nemesis”がデジタルロック調のスコアで面白いかも。
アンダーソン監督がポール・ハスリンガーやTOMANDANDYといった「シンセ使いのアンダースコア系作曲家」を好んで起用するのは、彼のカーペンター映画好きに起因するものだったんだなー、とライナーノーツを読んでいて思いました。