先月中旬に『ホワイトハウス・ダウン』(13:以下WHD)を内覧試写にて鑑賞。
『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13:以下EOW)と見事にネタかぶりしてしまった本作ですが、
個人的にはこっち(『WHD』)の方が楽しんで観られました。
密室(ホワイトハウス内)で繰り広げられる武装集団との攻防戦は、
ほとんど『ダイ・ハード』(88)のノリ。
ジョン・マクレーンはロシアで息子と暴れてなんかいないで、
ホワイトハウスで大統領とコンビを組んで大暴れするべきだったと思います。
自分はジェラルド・バトラーもアントワン・フークアも好きだし、
『EOW』も面白かったとは思うのですが、
あの映画はエンタメ系アクションにしては暴力描写が正直キツすぎました。
テロリストの攻撃でバタバタと殉職するシークレット・サービスを筆頭に、
北朝鮮ガンシップのミニガン掃射で次々に殺される一般市民、
発射コードを吐かせるために容赦なくボコられる女性国防長官(メリッサ・レオ)、
アメリカへの見せしめでテロリストにあっさり殺される韓国首相などなど、
国際的にいろいろマズいんじゃないかという描写も含めて、
観ていて「いいのかコレ…?」と若干引いてしまうシーンもありました。
その点『WHD』はバイオレンス控えめで、
愛国的なメッセージもそれほど前面に押し出していないので、
ポップコーンとかホットドッグ食いながら見ても、
食べ物がマズくならない娯楽映画に徹していて、
ある意味安心して観られます。
主人公の議会警察官役は『マジック・マイク』(12)のチャニング・テイタム。
強烈な愛国主義者というわけでもなく、
一人娘にいいとこ見せたくてシークレット・サービスに志願する軽いノリがいい。
ちなみに娘役は人気急上昇のジョーイ・キング(『ダークナイト ライジング』(12))。
政治オタクのマセた娘を好演してます。第2のダコタ・ファニングですねこの子は。
そして大統領役が『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)のジェイミー・フォックス。
極限状況下でテイタムと微妙にズレたやり取りをする姿は、
ほとんど『コラテラル』(04)のノリですね。
コメディアン出身なので飄々とした芝居が巧いんだなこれが。
このテイタム&フォックスのバディっぷりが、
リッグス&マータフとかマクレーン&ゼウスとかアクセル&ビリーなど、
80-90年代バディ・ムービーを思い起こさせてなかなか楽しい。
共演は『ダークナイト』(08)のマギー・ギレンホール、
『カジノ』(95)のジェームズ・ウッズ、
『モールス』(10)のリチャード・ジェンキンス、
『パブリック・エネミーズ』(09)のジェイソン・クラークなど。
「別にこの人じゃなくても…」という役で、
『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)のジェイク・ウェバーと、
『クリムゾン・タイド』(95)のマット・クレイヴンが出てます。
武装集団のナヨっとしたハッカーを演じたジミ・シンプソンがいい味出してました。
『ゾディアック』(07)の最後の最後で顔を出していたあの人です。
ネタ明かしは控えたいので詳しくは書きませんが、
悪役の武装集団の設定も割と気が利いて(?)まして、
諸外国のご機嫌を損ねないようなバックグラウンドを持った連中になってます。
そしてこの映画、基本的に「タカ派的な思考の人が酷い目に遭う」物語なので、
ある意味「平和が一番」というメッセージを発信している作品でもあるのです。
(ちょっと違うか…?)
まぁ何にしても、
「アクションシーンの中にちょろっと仕込まれたユーモア」
「伏線の張られたストーリー」
「意外な活躍をする一般市民」
「密室の外で展開する派手な航空機墜落アクション」
「テロリストの頭脳労働担当(=ハッカー)のお気に入りBGMがベートーヴェン」などなど、
本作こそ「『ダイ・ハード』の流れを組むアクション映画」と言えるでしょう。
(『EOW』はどちらかというと『沈黙の戦艦』(92)系)
メカニックの見どころとしては、
「これ縮尺合ってるのか?」という妙なスケールの大統領専用車「ザ・ビースト」ですかね。
作るのにかなり苦労した代物らしいのですが、
このバカでかいリムジンがホワイトハウスのサウスローンを走り回るカーアクションが結構面白かったりします。
本国では興行収入的にイマイチな感じだったみたいですが、
ローランド・エメリッヒもかなり健闘した方なんじゃないかなと思います。
この人にはディザスター映画よりも、
荒唐無稽なアクション映画を撮ってもらいたいですね。
音楽についてはまた後ほど。