先日の映画『誰よりも狙われた男』(14)に関する投稿で、
「ワタクシのお気に入りの助演キャラはミヒャエル・アクセルロット」と書きましたが、
それはなぜかと申しますと、
アクセルロットを演じているのが、
劇中の音楽を手掛けたヘルベルト・グレーネマイヤーだからなのであります。
この人、本職はミュージシャンなんですが俳優としても活動しておりまして、
「グレーネマイヤーなんてミュージシャン知らなーい」という人でも、
『U・ボート』(81)を観たことがあれば顔を知っているハズなんです。
あの映画でヴェルナー少尉を演じていたのがヘルベルト・グレーネマイヤーだったのです。
あれから33年くらい経ったので、
グレーネマイヤーもさすがに老けたなーという感じでしたが、
見た感じ「ドイツのジョン・ヴォイト」というか、
「フィリップ・シーモア・ホフマンの父」というような見た目になりまして、
これがなかなか味があるのです。
アクセルロットの登場シーンは要注目ですぜ。
グレーネマイヤーは映画音楽家というより、
ドイツのポップ・ミュージック・シーンで活躍するシンガー・ソングライターなんですね。
声質的には「ドイツのアラン・ゴーリー(アヴェレイジ・ホワイト・バンド)」といった感じ。
ややハスキーで音域の高い声というのかな?
専門は鍵盤楽器です。
ワタクシこの映画のサントラ盤にライナーノーツを書くことになったので、
あちこちからグレーネマイヤーの資料をかき集めたのですが、
「そういえばニューアルバムを買ってなかったなー」と気がついて、
彼の新譜を購入したのですが、これがすごくよかったのです。全曲英詞。
ライブでU2のボノとデュエットしたりしているのに、
何で日本で全然紹介されてないのかなー。勿体ない。
グレーネマイヤーといえば、
アントン・コービン監督の前作『ラスト・ターゲット』(10)の音楽も非常にいい感じで、
サントラ盤をあちこち探し回ったのにどこにも売ってなくて、
仕方なくUKのアマゾンでドイツ盤を購入したこともありました。
『ラスト・ターゲット』の公式サイトでもグレーネマイヤーの紹介はスルーされてたし、
『誰よりも狙われた男』の試写でもらったプレスシートにも彼の名前は全く載ってなかった。
「こりゃあんまりじゃないかい?」
…というわけで、今回のサントラ盤ライナーノーツでは、
グレーネマイヤーについてみっちり書かせて頂きました。
実際、音楽についてあれもこれもと書きたくなるほど、
『誰よりも狙われた男』のオリジナル・スコアは非常によく出来ているんです。
元々ポップ・ミュージック畑の人なので、
オーケストラの聴かせ方も「ポップ・ミュージックのストリングス」的なサウンドになってますね。
物語の舞台が現代なので、
同じジョン・ル・カレ作品でも『裏切りのサーカス』(11)とは違って、
シンセ・プログラミングで作ったと思しき電子音も使っているのがポイントかと。
アナベルがイッサを連れて、
ドイツ諜報部の追っ手から逃げるシーンの曲がなかなかカッコイイ。
映画本編でグレーネマイヤーの音楽の占める割合は少ないのですが、
要所要所でなかなか意味深なメロディーやフレーズを流しておりまして、
最初に聴いた時は「なるほど、こんな感じの音楽なのね」程度の印象だったのが、
2度3度とアルバムを聴いていくと、
「これはひょっとしてこういう意味があるのでは?」と思うようになってきて、
実に奥が深い音楽です。
今回ライナーノーツで文字数の許す限り楽曲解説を書かせて頂きましたが、
多分まだまだ音楽の中にメッセージが隠されているのではないかと思います。
なのでどうか『誰よりも狙われた男』のサントラ盤をお買い求め頂いて、
皆さまなりの答えを見つけて頂きたいと思います。
音楽解説の都合上、ライナーノーツで若干後半の展開に触れておりますので、
映画を未見の方は本編を観てから拙稿をご覧になって頂くか、
後半部分は読まないでおく感じでお願い致します。。
あ、そうそう。念のため書かせて頂きますと、
このサントラ盤はヘルベルト・グレーネマイヤーの楽曲を収めた「スコア・アルバム」なので、
劇中で使用されたヴォーカル・ナンバーは収録されていません。
「せっかくサントラ買ったのに歌モノが入ってなかったから、このアルバムはつまんない」
…というようなレビューを書かれると泣きたくなってくるので、
あえて歌モノの件について書かせて頂きました。
歌が入ってないからと言ってサントラの★評価を下げるのは勘弁して下さい。お願いします…。
オリジナル・スコアもいいもんですよ。秋の夜長にピッタリな音楽です。
参考までに、劇中使用曲は以下の通りです。
Sea of Love – Phil Phillips and The Twilights
Down Man – Brainbox
To Hell With Poverty – Gang of Four
Everyone Says Hi – Claudia Brücken
Der Mussolini – D.A.F. (DEUTSCH AMERIKANISCHE FREUNDSCHAFT)
Falling – Roy Orbison
Hoist That Rag – Tom Waits
『誰よりも狙われた男』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ヘルベルト・グレーネマイヤー
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-2853
発売日:2014/10/08
価格:2,400円(+税)