ジャン・=ユーグ・アングラード&エリック・ストルツ主演のイカレ系銀行強盗映画『キリング・ゾーイ』(93)。
日本での劇場公開から20年目の節目を迎える今年、
ディレクターズ・カット版のブルーレイ・リリースがあるそうで。
あれから20年も経ったんだなーとしみじみ思ってみたり。
この映画を最初に観たのは、スター・チャンネルで放映した時だったと思います。
当時高校生でまだ純粋だった自分は、
初見時に「何てイカレた映画なんだ!」衝撃を受けたものです。
「ゲイでヤク中でエ○ズ」という強烈な悪党を演じたアングラードの姿に100メガショック。
『ニキータ』(90)のマルコ役のイメージが一気に吹き飛んでしまったのは言うまでもありません。
プロの金庫破りの割に全く主体性がないゼッドも、
エリック・ストルツが演じたことでいい味が出ています。
銀行強盗決行前夜の大事な時に、
メンバー全員で酒とドラッグをやりまくってラリラリとか最悪ですね。。
こりゃコイツら銀行強盗失敗するわと思うわけですが、
『キリング・ゾーイ』の楽しみ方としては、
「このいい加減な連中がどうやって破滅するか」を見届けるのが正しい見方なんです。たぶん。
フツーの強盗映画だと思って観ると「何コレ?」と思ってしまうけれども、
ちょっと違った視点から観ると屈折した面白さが出てくる映画です。
ところでこの作品を語る時、
よく「呪われた映画」という表現が使われるのですが、
果たして本当にそうでしょうか?
まぁ確かにストルツはこの映画以降ビミョーな作品にしか出なくなったし、
アングラードも何度か作品選びに失敗している感は否めないし、
監督・脚本のロジャー・エイヴァリーに至っては、
監督作『ルールズ・オブ・アトラクション』(02)とか、
『サイレント・ヒル』(06)の脚本で何とか業界をサヴァイヴしてきたのに、
飲酒運転で人身事故を起こして刑務所行きになったりしてますが…。
しかし、しかしですよ。
ジュリー・デルピーはアカデミー賞ノミネート脚本家になって、
監督業とか音楽業にも進出しているではありませんか!
強盗団の一人を演じたゲイリー・ケンプも、
最近スパンダー・バレエで新曲を作ったりしているし、
みんながみんなポシャったわけではないのであります。
そしてもう一人(正確には二人)、
映画の”呪い”とやらから逃れられた人物がおりました。
音楽を手掛けたトム・ハイデュとアンディ・ミルバーン、
通称TOMANDANDYの二人です。
当時はネットも発達してなかったから全く情報がなかったのですが、
その正体は映画とか企業広告向けの音楽を作っているユニットでした。
『JFK』(91)や『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(94)の追加音楽を担当していて、
ヘンな映画をよく撮るイメージのある奇才マーク・ペリントン監督のお気に入りになり、
『隣人は静かに笑う』(98)の追加音楽(メイン作曲家はアンジェロ・バダラメンティ)とか、
リチャード・ギア主演の電波系モスマン映画『プロフェシー』(02)の音楽をやってます。
あとはポール・W.S・アンダーソンの『バイオハザード』4作目と5作目とか、
『ヒルズ・ハブ・アイズ』(05)や『P2』(07)、
レニー・ハーリンの『コベナント 幻魔降臨』(06)などの音楽を担当してますね。
B級臭さは否めないものの、
ホラー/サスペンスを中心にコンスタントに活動中といった感じです。
個人的に彼らのベストワークは『さよなら、僕らの夏』(04)だと思っているのですが、
サウンド・インパクトという点では『キリング・ゾーイ』の方が勝ってますね。
全12曲、収録時間43分強。
全編テクノとアンビエント・ミュージックと実験音楽の集合体みたいなサウンドで、
あまりお金のかかってなさそうな電子音を鳴らしているのですが、
延々とアルバムを聴いていると、
妙なトリップ感が出てきてクセになるんですねーこれが。
メロディアスな曲は全くと言っていいほどありませんが、
(エンドクレジット曲ぐらい?)
まぁよく考えたら主人公のゼッドは全く主体性がない男だし、
アングラード演じるエリックも何考えてるか分からないサイコパスなので、
テーマ曲が入り込む余地が全くない音楽になったとしても、
何ら不思議はないのでした。
とまぁ何だかんだ言って、個人的に思い入れの深いサントラ盤です。
「TOMANDANDYって誰?つーかトマンダンディ?トムアンドアンディ?どっち?」
…という初めて名前を見た時のインパクトはかなりのものだったし、
当時テクノ系の音楽を好んで聴いていた自分にとっては、
このジョン・カーペンター的低予算エレクトロ・サウンドにも興味をそそられたもんです。
今はもうサントラ盤も廃盤になっていると思いますが、
どこか中古ショップで見かけたら買ってみてもいいかもしれませんね。
クセのあるサウンドなので強くはお勧めしませんが、
好きな人にはたまらないエッジィな音ですよコレは。
ディレクターズカット版ブルーレイはコチラ。
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