アイデンティティーとスプレマシー、
アルティメイタムの三部作で完結したはずの『ジェイソン・ボーン』シリーズですが、
こんな大ヒットコンテンツをハリウッドが簡単に終わらせるはずもなく、
『JASON BOURNE』(16)として再始動することになりました。
まぁ続編を作るにあたってストーリー的にも無理がない脚本が出来て、
ポール・グリーングラス監督もマット・デイモンもやる気になったので、
それぞれの思惑が一致してのシリーズ復活ということなのでしょう。
なおジェレミー・レナー主演の番外編『ボーン・レガシー』(12)も続編を作る予定はある…らしいです、一応。
さて本家『ジェイソン・ボーン』が再始動するということで、
一部の熱心なサントラファンは音楽がどうなるのか気を揉んでいたのでした。
…というのもシリーズの作曲家ジョン・パウエルが、
近年は映画音楽業から遠ざかっていて、
グリーングラス監督の前作『キャプテン・フィリップス』(13)にも登板せず、
パウエルの代わりにヘンリー・ジャックマンが音楽を手掛けていたので、
“パウエルは復帰するのか?”
“それとも新作はジャックマンが担当することになるのか?”と、
その動向に注目していたわけです。
果たしてその結果はというと、
ジョン・パウエルとデヴィッド・バックリーのコンビでの担当という形で落ち着いたと。
デヴィッド・バックリーはリモート・コントロール・プロダクションズの中堅作曲家で、
『ザ・タウン』(10)などハリー・グレッグソン=ウィリアムズとのコンビで名を上げた人物です。
ソロ作品だと『PARKER/パーカー』(13)や『パリより愛をこめて』(10)、『ドラゴン・キングダム』(08)などを担当してますね。
強烈な個性はないものの、
シンセ・打ち込み系に強い作曲家ではないかなと。
HGWと組んでいい仕事をしているので、
きっとパウエルともうまくやって下さるでしょう。
それにしても、『JASON BOURNE』でパウエルさんの打楽器鳴らしまくりのスコアがまた聴けるのは嬉しい。
『ボーン・レガシー』のジェームズ・ニュートン・ハワードの音楽は(健闘してたけど)不完全燃焼な感じだったし、
『キャプテン・フィリップス』の音楽を聴いた感じでは、
ジャックマンでもパーカッシヴなスコアを書いてくれそうな気はしたのですが、
やっぱり本家パウエル流の音楽を聴きたいのが本音なわけで。
ワタクシは3作目の『ボーン・アルティメイタム』(07)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きましたが、
この時は嬉しかったですねー。
『ジェイソン・ボーン』シリーズの音楽は、
2作目の『ボーン・スプレマシー』(04)から「この映画の音楽、何かスゴいぜ?」と注目されるようになったのかな。
メインテーマのメロディーと打楽器を多用したスタイルは1作目から確立されていたけど、
まだ思ったほどはサントラファンから注目されてなくて、
「モービーの主題歌が入ってない」とか、
「カーチェイスシーンのポール・オークンフォールドの曲が入ってない」とか、
どちらかというと不満を口にする人の方が多かった記憶があります。
(今となっては考えられない話ですが)
で、監督がダグ・リーマンからグリーングラスに変わった2作目では、
打楽器鳴らしまくりの音楽がさらにパワーアップして、
リオのカーニバルの如き激しいグルーヴのサウンドを聴かせてくれたのでした。
手持ちカメラの映像を細かいカットを繋いでいくグリーングラス監督の映像と、
キレのあるパウエルのスコアが渾然一体となって、
1作目に比べて映画のテンポがものすごくアップしましたね。
クライマックスのカーチェイスシーンの曲「Bim Bam Smash」が一番人気で、
スパイ映画風のエレキギターのリフと、
ツインドラムが繰り出すタイトなリズム、
唸るパーカッションの連打の波状攻撃にリスナー大興奮でした。
で、2作目でこれだけやってしまったら、
もう3作目でやれることはないんじゃないか?と思ったのですが、
恐ろしいことに3作目の『アルティメイタム』では、
総カット数約4000カットという驚異の編集に合わせて、
『スプレマシー』の時以上に音楽のテンポがアップしてます。
現時点でシリーズ最速の音楽ですよコレは。
テンポアップした打楽器ジャカスカ系のサウンドに異国情緒(?)が加わった、
アルバム2曲目の「Tangiers」にまずヤラレる。
そしてウォータールー駅のシーンで流れる長尺曲「Warterloo」の起伏に富んだサウンドに興奮度MAX。
最後のMOBYのテーマ曲「Extreme Ways」の新録バージョンで完全ノックアウトです。
ワタクシ、ライナーノーツの文章は至って真面目な文章を書きましたが、
音楽を聴いた時は「パウエルさんすげぇぇぇぇぇぇ」とかなりコーフンしておりました。
音楽が激アツだったからという理由もありますが、
念願叶ってやっと『ジェイソン・ボーン』シリーズのサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂くことが出来て、
心底嬉しかったという理由もありました。
自分にとって忘れられない作品の一つです。
…というわけで、果たして新作の音楽はどうなるのか?
エンドタイトルではまたMOBYの歌が流れるのか?…などなど、
いろいろ考えながら映画の公開を待ちたいと思います。
またサントラ盤にライナーノーツを書かせてもらえないかなぁ…。