自転車競技の知識は全くと言っていいほどないし、
ランス・アームストロングのことも「シェリル・クロウとスピード破局したサイクルロードレーサー」程度のことしか知らなかったのですが、
ベン・フォスターは好きな俳優なので『疑惑のチャンピオン』(15)を観てきました。
確かムービープラスの「映画館へ行こう」7月号でフォスターのインタビューをやっていて、
「ヒーローとかペテン師とか(ポスターに)いろいろ書いてあるけど、この映画を観て共感してほしい」…と熱く語っていたので、
そこまでおっしゃるなら映画を観なければと思った次第です。
で、共感出来たかというとそのあたりは複雑ではあるのですが、
とりあえずランス・アームストロングがどういう人かは分かった気がします。
(実話に基づく話とはいえ脚色もあるので、鵜呑みには出来ないかもしれませんが)
それにしてもベン・フォスターのなりきりアームストロング演技はすごかった。
この人は出世欲とか、ボスの寵愛とか、
金銭欲とか名声に取り憑かれてやり過ぎるキャラが最高に巧いのですが、
(『3時10分、決断のとき』(07)とか『メカニック』(11)とか『ハード・ラッシュ』(12)とか全部このパターン)
「俺は勝つためなら手段は選ばねぇ!陽性反応が出なきゃ違反じゃねぇんだよ!」
…という(ある意味)ブレない態度で我が道を行くアームストロング役はハマりすぎでした。
そして注目すべきはチームメイトのフロイド・ランディスを演じたジェシー・プレモンス。
『ブラック・スキャンダル』(15)で”ボス”を司法に売った男を演じた彼が、
今回も”ボス(=ランス・アームストロング)”の違法行為を暴露する役を演じるという、
何とも素敵なキャスティング。
マット・デイモンの不良感度を高めて彼の弟にしたようなこの俳優、
自分の中で「画面に出てきたら油断ならない男」という認識になりました。
さてブログタイトルに書いた本作の音楽ですが、
オリジナル・スコアは『消されたヘッドライン』(09)のアレックス・ヘッフェスでした。
映画の題材がこんな感じなので、
オーケストラにロックミュージックの要素を加えたサウンドという印象でした。
確かチェロ演奏がハンス・ジマー作品でおなじみのマーティン・ティルマンだったような。
で、その他にも有名どころの既製曲が何曲か使われていたのですが、
これがなかなか気の利いた選曲というか、
シニカルな目線で選び抜かれた曲だったなーという感じでして。
さすが『ハイ・フィデリティ』(00)を撮ったスティーヴン・フリアーズ監督だと思いました。
(『堕天使のパスポート』(02)の選曲もかなりマニアックだったけど)
当方調べでは、劇中使用曲は以下の通り。
Blitzkrieg Bop – The Ramones
Mr. Pharmacist – The Fall
Spread Your Love – Black Rebel Motorcycle Club
Mrs. Robinson – The Lemonheads
No Surprises – Radiohead
Movin’ On Up – Primal Scream
Everybody Knows – Leonard Cohen
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(14)に続いて、
レモンヘッズのMrs. Robinsonがまたクスリ絡みの映画に使われてるなーとか、
レディオヘッドのNo Surpriseがタイトルそのままの「(こういう展開になっても)驚きはない」と言わんばかりの使われ方をしているとか、
ドーピング問題を扱った映画に最もドラッギーだった頃のプライマル・スクリームの曲を使ってるとか、
ラストの曲がレナード・コーエンのEverybody Knows(=誰もが知ってる)というタイトルの曲だったり、
選曲が直球かつシニカルすぎる。
フリアーズ監督、年を取ってもイギリス的なブラックユーモアがキレッキレです。
tレナード・コーエンのEverybody Knowsは、
ワタクシ『エキゾチカ』(94)の劇中で使われた時の印象が強いですね。
ナイトクラブでミア・カーシュナーが制服姿でエッチい踊りを披露するシーンで使われてました。
「ベン・フォスター出演作にハズレなし」というワタクシの私的な法則は、
今回の『疑惑のチャンピオン』でも成立したように思います。