先頃アカデミー賞のノミネート作品が発表になりましたが、
仕事柄いつも作曲賞に注目しているワタクシと致しましては、
今年の作曲賞はちょっと驚きのノミネート結果だったなぁと思いました。
ゴールデングローブ賞の作曲賞を受賞した『ファースト・マン』がアカデミー賞には選ばれなかったというまさかの事態。
今年は「ゴールデングローブを制した作曲家がアカデミー賞も制す」という法則が適用されないわけで、こいつぁちょっとした事件ですよ!(大袈裟)
ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の作曲賞候補作を見比べてみるとこんな感じ。
76th Golden Globe Awards
『ファースト・マン』 ジャスティン・ハーウィッツ(受賞)
『ブラックパンサー』 ルドウィグ・ゴランソン
『犬ヶ島』 アレクサンドル・デスプラ
『メリー・ポピンズ リターンズ』 マーク・シャイマン
『クワイエット・プレイス』 マルコ・ベルトラミ
91st Academy Awards
『ブラックパンサー』 ルドウィグ・ゴランソン
『ブラック・クランズマン』 テレンス・ブランチャード
『ビール・ストリートの恋人たち』 ニコラス・ブリテル
『犬ヶ島』 アレクサンドル・デスプラ
『メリー・ポピンズ リターンズ』 マーク・シャイマン
『クワイエット・プレイス』と『ファースト・マン』が候補から外れて、
『ビール・ストリートの恋人たち』と『ブラック・クランズマン』が新たにINしてきたと。
「で、だれが作曲賞を受賞する?」という話ですよね。。
『ビール・ストリートの恋人たち』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
まずワタクシ的には『ビール・ストリートの恋人たち』のニコラス・ブリテルを推しております。
その理由は…まぁ『ビール・ストリートの恋人たち』のサントラ盤ライナーノーツを書かせて頂いたから、という極めて個人的な理由です。
以前『ムーンライト』のサントラ盤ライナーノーツを書くために、ワタクシはブリテルの作品を過去作品も含めてじっくり聴きこんだのですが、ワタクシこの方は天才的な作曲家ではないかと思っておりまして。
美メロを聴かせる伝統的なスコアを書いたかと思えば、意表を突く斬新なアイデアもスコアに取り込めるし、ヒップホップからファンク、ジャズ、霊歌・労働歌に至るまで、どんなジャンルにも対応できる。
おまけにハーバード大学の優等生。
要注目の作曲家/映画音楽家のひとりです。
…というわけで個人的な推しはニコラス・ブリテルなのですが、
ワタクシが「受賞の可能性が高いんじゃないのかな~?」と思っているのが、
『ブラックパンサー』のルドウィグ・ゴランソン。
『ブラックパンサー』オリジナル・スコア(amazon MP3)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の時の「V8旋風」のように、
今年のアカデミー賞で「
『ブラックパンサー』が技術部門を中心にいくつか受賞すると思うのですね。
その中に作曲賞が含まれるのではないかとワタクシは考えております。
アカデミー賞作曲賞は「オーケストラ音楽にワールドミュージックの要素を取り入れた作品が受賞することが多い」という過去のデータもありますので。
(例:『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のマイケル・ダナ、『ライオン・キング』のハンス・ジマーなど)
『BlacKkKlansman』[Original Motion Picture Soundtrack] (amazon MP3)
近年のアカデミー賞が多様性重視路線になったのは周知の事実ですが、
そうなると『ビール・ストリートの恋人たち』『ブラックパンサー』『ブラック・クランズマン』をもっと評価しようという流れになるわけで、
さらにそこから「マイノリティの作曲家の功績をたたえましょう」ということになった場合、
ジャズ・トランペッター/作曲家のテレンス・ブランチャードの受賞もあり得るのかなとも思います。
ちなみにワタクシはブランチャードの作品では『25時』と『ニューヨーク 最後の日々』が好きですし、
映画は日本未公開、サントラ盤はコピーコントロールCDのヨーロッパ盤だけというカート・ラッセル主演の超マイナーな映画『ダーク・スティール』のサントラ盤も持ってます。
『犬ヶ島』オリジナル・サウンドトラック(輸入盤・amazon)
アレクサンドル・デスプラはここ数年アカデミー賞とゴールデングローブ賞で存在感を見せてますが、
『グランド・ブダペスト・ホテル』と『シェイプ・オブ・ウォーター』で受賞したので、さすがに今回の受賞は難しいのではないかと思います。
『犬ヶ島』の音楽自体はとてもよい出来ですけどね。。
どれが既製曲でどれがデスプラのスコアなのか、アカデミー会員がどれだけきちんと把握しているかが受賞の鍵…かもしれません。
『メリー・ポピンズ リターンズ』英語盤サウンドトラック(amazon)
『メリー・ポピンズ リターンズ』は、「ミュージカル映画は音楽部門でやっぱり強い」という傾向もあるので受賞を狙える作品ではありますが、
前述のように近年は多様性重視の方向が顕著なので、こういう作品の受賞は難しいのではないのかな、という気がします。
…というわけでワタクシの予想としては、
作曲賞はルドウィグ・ゴランソンに行くのではないかと。
そして個人的な推しはニコラス・ブリテル。
こんな感じでひとつ。