『第9地区』の作曲家クリントン・ショーター、久々のサントラ!『コンティニュー』のサントラ盤はスコア盤です。

ランブリング・レコーズ様のご依頼で、6月4日公開の映画『コンティニュー』(21)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は『第9地区』(09)のクリントン・ショーター。

なんか、この方の名前を映画で聞くのは久々な気がしたのですが、『ポンペイ』(14)以降はテレビシリーズの作曲の仕事が中心だったようですね。

「オケ+打ち込みのリズム」にアフリカ音楽の要素をミックスした『第9地区』の音楽が好評だったので、映画のヒットと共にショーターもブレイクするんじゃないかと当時思っていたのですが、メガヒット作やメジャータイトルの作品を担当する機会があまりなかったし、ショーターの母国でもあるカナダ映画の仕事が多いこともあって、大ブレイクの機会をちょっと逸してしまったかなという印象でした。

ショーターの「オケ+打ち込み」という音楽は『ハード・ラッシュ』(12)や『2ガンズ』(13)でもキレッキレだったし、この二つは映画自体も面白かったんですが、マーク・ウォールバーグ主演作としても比較的マイナーな作品なので、語られる機会が少なかったんですよね…(ワタクシは『ハード・ラッシュ』結構好きです)。

で、今回満を持してサントラ盤が発売された『コンティニュー』ですが、まずこちらのサントラはショーターの劇伴を収録した「スコアアルバム」であることをお知らせしておきたいと思います。

…というのも、この映画は『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』(06)のジョー・カーナハン監督作ということで、あの映画と同様に劇中で既製曲(今回は懐メロ)がガンガン流れまくるんですね。
だから歌モノが収録されていると思ってサントラを買って、いざ聴いてみたら「歌が入ってない!」という理由で製品に低評価をつけられてしまうと、映画音楽物書きとしては大変遺憾に思うわけです。
『コンティニュー』のサントラ盤はスコア盤なので、くれぐれもお間違いなく。
(映画本編で使われた歌モノについては次回のブログで何か書きます)

というわけで本作のショーターのスコアですが、彼のトレードマークである「オケ+打ち込みのリズム」は今回も健在。
おそらくパンデミックの中でのレコーディングだったと思われますが、オーケストラを使ってスロバキアで録音しています。
マーク・アイシャムの『ビルとテッドの時空旅行』(20)と同じように、まだロックダウンが出ていなかった時期のヨーロッパの楽団でリモート録音したのでしょう。なのできちんとオーケストラの生音が楽しめます。そこに打ち込みのリズムとギター、ドラムスをプラスした感じ。

この映画はアクションシーンで懐メロがガンガン流れるため、ショーターのアクションスコアはカーチェイスシーンの”We Got Ourselves A Cowboy”と、アクロバティックな殺陣シーンの”I Have Done This”の2曲が一番目立つ感じですかね。

むしろ本作の聴きどころは彼のSFドラマ音楽で、アルバム15曲目の”Wait For Me”でメインテーマのドラマティックな旋律を聴くことが出来ます。このメロディが劇中のドラマパートのスコアで何度か使われてます。

『スモーキン・エース』は既製曲をガンガン流してイカれたアクション映画を装いつつ、クリント・マンセルが要所要所でヘヴィなスコアをガツンと流して重たいムード(特にラスト)を醸し出していましたが、今回の『コンティニュー』もほぼ同じ音楽演出と言えるでしょう。
「フランク・グリロ主演のDIEジェスト映画」というドギツいダークコメディ的なノリで観客の心を掴んでおいて、物語の終盤でショーターのスコアと共にドーン!とシリアスな展開に持って行くと。そういう意味でもショーターは本作で大変よい仕事をしています。

ちなみにサントラ盤のブックレットやジャケットにはグリロ兄貴の写真がいっぱい使われているので、フランク・グリロが大好きな貴方はグリロ兄貴のグッズのつもりでサントラを購入するのもアリかもしれません。

『コンティニュー』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)
音楽:クリントン・ショーター
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3396
価格:2,640円(税込)

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