ワタクシがフリードキン監督作で一番好きな『L.A.大捜査線/狼たちの街』(85)。 サントラ盤にフリードキンが寄せたライナーノーツにも書いてあるとおり、彼はワン・チャンのアルバム「Points On The Curve」を気に入ってこの映画のスコア作曲を依頼したわけですが、『L.A.大捜査線』のブルーレイ映像特典収録のワン・チャンのインタビューを見ると、フリードキンはとりわけ”Wait”がお気に入りだったご様子。
だからスコアのリズムも”Wait”のテンポが基本になってます。”City Of The Angels”や”Black-Blue-White”を聴くと「ああ、確かにそうだなぁ」と分かる。
当初フリードキンは挿入歌を必要としていなさそうな感じだったのに、ワン・チャンが勢いで書いた”To Live And Die in L.A.”を聴いたらえらく気に入って、この曲を使うためにオープニングの映像を撮り直した上に、結局挿入歌も新しく書いてもらうことになったという異例の好待遇(さらに彼らのヒット曲”Dance Hall Days”も劇中で使ってる)。 『エクソシスト』でシフリンをクビにした時のように「なんだこの曲は!」とデモテープを投げ捨てたりしなかった。
■その3:マーク・アイシャムの”On The Threshold of Liberty”が好きすぎる話の補足
マーク・アイシャムがニューエイジ系レーベルのウィンダム・ヒルに所属していた時リリースしたアルバム「Vapor Drawings」。 その中の1曲”On The Threshold of Liberty”をフリードキンが気に入っていて、『英雄の条件』(00)の音楽をアイシャムに依頼した上でこの曲の新録版を作ってもらったというお話。この件について補足するならば、新録版を使うよう説得したのはむしろアイシャムのほうだったみたいです。
フリードキンはこの曲を「愛国的でアーロン・コープランド的な音楽」と思ったようで、アイシャム自身は(ウィンダム・ヒル時代の作品であることからも分かるように)おそらく別の意図で書いた曲だったと思われます。だからこの曲を映画の中でそのまま使われるのは「ちょっと違う」と考えたのかもしれません。 その結果、勇ましく愛国的なアレンジになった”On The Threshold of Liberty”が映画の中で使われることになったと。