先日、BANGER!!!でリーアム・ニーソン主演最新作『マークスマン』(21)の見どころポイントと音楽の紹介記事を書きました。
麻薬カルテルから少年を守れ!! リーアム・ニーソンの逃避行アクション『マークスマン』 音楽はドラマ『24』の作曲家 | BANGER!!!
https://www.banger.jp/movie/70957/
めぼしいことは大体コラムの中で書いたと思うのですが、もう少し補足しておいたほうがいいかなというネタも少しあるので、それについては当方のブログで書かせて頂きます。
音楽担当は『24 -TWENTY FOUR-』(01~10, 14)のショーン・キャラリー。
最近だと『BULL/ブル 法廷を操る男』(16~)の音楽を担当してます。
テレビシリーズの音楽制作をメインに手掛けている方なので、長編映画のスコア作曲は久々になります(当方調べでは8年ぶりくらいだと思います)。
キャラリーさんのサントラ(スコアアルバム)リリースの機会もあまり多くなくて、やはり『24』関連が一番メジャーな感じ。
日本でのリリースの順番は、まずシーズン1から3の主要な音楽を収録した第1弾サントラがコピーコントロールCDで出て、その後シーズン4と5の主要な音楽を収録した第2弾サントラがリリースされ、次にテレビスペシャル放送の『24 リデンプション』(09)のサントラが出て、最後に第1弾サントラがDSDリマスター盤(脱コピーコントロールCD)で再販されたという感じ。
で、ワタクシは『24 リデンプション』と第1弾サントラのDSDリマスター盤で音楽解説を担当させて頂いて、後者でキャラリーさんに日本盤用のコメントを頂いたというわけです。
最後にやり取りしたのが7年近く前だったので、こちらのことはもう忘れているんじゃないかと思いましたが、久々にキャラリーさんにコンタクトを取ってみたら幸運にも覚えていてくれたので、いろいろお話しして、BANGER!!!のコラム用にコメントを貰うことが出来たというわけです。
さてその『マークスマン』の音楽ですが、テレビシリーズの作曲家さんが長編映画の音楽を担当すると、楽曲構成も普通の映画音楽とは少し違うなという印象を受けました。
一般的な映画音楽だと、メインテーマを作曲したら、そのメロディ(モティーフ)をスコアの中で変奏して展開させていくものですが、『マークスマン』はメインテーマ(主人公ジム・ハンソンのテーマでもある)が劇中で流れるのは2回に限定しているんですね。
同様にサブテーマにあたる「ミゲルのテーマ」も劇中で流れるのは2回だけ。どちらもピンポイントに絞っている。
このあたりが「なぜだろう?」と思ったので、キャラリーさんに尋ねてみたわけです。
その結果、BANGER!!!のコラムでご紹介したようなコメントを頂いたと。
メインテーマに関しては、2回どころか本来なら1回しか使わないつもりだったというのが興味深いですね。
メインテーマのメロディにはどことなく愛国的な雰囲気がありますが、ニーソン演じる主人公のジムは元海兵隊で、勲章も貰っていて、家の前にアメリカ国旗を掲げていて、カルテルに買収された悪徳警官に「幾らで魂を売った?」と一喝するような御人なので、そういうジムの精神を反映させたものと考えてよいのでしょう。
ちなみにワタクシはあの結末にこのテーマ曲が流れた時、「ああ、ジムの旅が遂に終わったんだな…」と感極まって泣きそうになりました。
そういう意味では、キャラリーさんの音楽が効果を発揮したのだと言えるでしょう。
なおテレビシリーズの時は、キャラリーさんは基本的に打ち込みやサンプリング主体のスコアを作っていますが、『マークスマン』は生のオーケストラを使ってます(オーケストレーターはベテランのウィリアム・ロス)。
キャラリーさんが「いつもと少し違うことが出来ると思ったからワクワクしたよ」と言っていたのは、こういうところもあるのかなと思いました。
スコアアルバムは今のところデジタルダウンロードで発売中。
『アイス・ロード』(21)や『トレイン・ミッション』(18)の音楽とも雰囲気が異なる、枯れた(乾いた)味わいのモダン・ウエスタン&ロードムービー音楽を楽しんで頂ければと思います。