先日BANGER!!!のコラムで『コン・エアー』(97)の見どころ&音楽紹介コラムを書きました。
ハリウッド版「魁!!!男塾」? ニコラス・ケイジ主演『コン・エアー』の意外な功績とバンド“イエス”ギタリスト作曲のロックな劇伴 | https://www.banger.jp/movie/93921/
…ちなみにこのコラムタイトルはワタクシが考えたものではありません。
(編集部に「男塾」読者の方がいらっしゃったんでしょうか)
当方の記事がアップされた時に「そう来ましたか…」と思ったほどで。
本当は『マッシブ・タレント』(22)のコラムを書きたかったのですが、諸事情により叶わなかったため、それなら『マッシブ・タレント』の映画本編でもフィーチャーされている『コン・エアー』について書こうかなと思ったのです。何しろ映画が始まって早々に『コン・エアー』のエンディングが流れますから。
…とまぁそんなわけでいろいろBANGER!!!でいろいろ書かせて頂きましたが、字数の都合でコラムに書けなかったネタ、マニアックすぎて需要がなさそうなネタなどもいくつかございますので、当方のブログにて補完させて頂きたいと思います。
その1:ニコラス・ケイジとジョン・キューザックの活動は思った以上に共通点がある
1990年代にブロックバスター映画に出まくったニコラス・ケイジ。
脱・青春映画スターを狙って作家性の強い作品に好んで出演したジョン・キューザック。
一見対照的な活動をしていた二人ですが、「自分の映画製作会社を立ち上げ、ギャラのよさそうな映画に出て、自分が惚れ込んだインディペンデント映画を製作する」という似たようなことをやっているのですね。
ニコケイは『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』(00)や『SONNY ソニー』(02:兼監督)、『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』(03)、キューザックは『ポイント・ブランク』(97)、『ハイ・フィデリティ』(00)、『アドルフの画集』(02)などを製作。
興味深いのは『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』の音楽を担当したダン・ジョーンズが『アドルフの画集』の音楽も担当していること。キューザックは『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』もしっかりチェックしていたのではないかなと思います。
ちなみに両者はその後「B級映画の帝王」状態になってしまったところも共通しており、『フローズン・グラウンド』(13)や『キング・ホステージ』(17)で共演していたりもします。
その2:囚人役の俳優たちが行っていた「タフ野郎競争」とは?
ワタクシBANGER!!!のコラムの中で、ダニー・トレホが「撮影中は誰が一番のタフ野郎か競い合っていた」と言っていたと書きましたが、具体的にはどのようなことをやっていたのか。
インタビュー記事を読んでみたところ、「誰かが(演技で)ツバを吐いたら、別な人もツバを吐いた」「誰かが腕立て伏せを始めたら、回数を競うように皆でやり始めた」とか、そんな感じだったみたいです。
活字にするとかなり”しょーもない”感じになってしまいますが、こうやって長期間にわたる撮影で芝居のテンションを高めていたのでしょう。その結果、映画本編での極悪囚人キャラの”あの演技”が生まれたというわけです。トレホやニック・チンランド、ヴィング・レイムスといった面々がこんな「タフ野郎競争」をしていたのかと思うと実に微笑ましいです。
その3:レーナード・スキナードの”Sweet Home Alabama”とトリーシャ・イヤウッドの”How Do I Live”について
今更説明不要かもしれませんが、囚人軍団が機内でノリノリになって聴いていたのはレーナード・スキナードの”Sweet Home Alabama”。
そのシーンでブシェミさんが「まさに皮肉だ。今踊ってる曲は飛行機事故で死んだグループのヒット曲だ」と言っていたとおり、バンドメンバーが飛行機事故で亡くなっているのですね。セリフでバンド名を出さなかったのはせめてもの良心というべきか。
ちなみにニコケイの『ウィリーズ・ワンダーランド』(21)でもレーナード・スキナードの”Free Bird”が使われていました。
トリーシャ・イヤウッドの主題歌”How Do I Live”はダイアン・ウォーレンが作曲しておりますが、本作以降「ブラッカイマー映画のテーマソングはダイアン・ウォーレン」という時期が続きまして、「ド派手なアクション映画のラストを(少々ベタな)バラードで締める」のがブラッカイマー映画のお約束になりました(『アルマゲドン』(98)がその代表例)。今改めて『コン・エアー』の主題歌を聴いてみると、「ああ、90年代の映画主題歌だなぁ」とノスタルジックな気分になります。だがそれがいい。
その4:『コン・エアー』の音楽雑感
BANGER!!!のコラムを書くにあたって久々にサントラを聴きましたが、「ああ、こんなにロック色が強かったっけ」という感じでなかなか新鮮でした。
映画音楽家としての経験がまだ浅い時期だったから、少々粗削りというか勢いで聴かせる部分も多いのですが、その豪快なサウンドが「空飛ぶ刑務所アクション映画」にピッタリだったんだろうなと思いました。ちなみにスコアでドラムを叩いているのは、ARWの来日公演にも帯同していたルイ・モリノIIIでした。
『コン・エアー』のサントラは17曲収録されている割にプレイタイムが44分くらいしかないので、拡張盤サントラなど発売してもらいたいですね…。Hollywood Recordsのアルバムはあまり拡張盤が出ない傾向がありますが。
Gone in 60 Seconds (Original Motion Picture Score) – amazon music
National Treasure (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music
National Treasure: Book of Secrets (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music
The Sorcerer’s Apprentice (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music
1990年代後半~2010年あたりまで「ブラッカイマー製作のニコケイ映画の音楽といえばトレヴァー・ラビン」という時代でしたね…。ニコケイ黄金時代であると同時に、ラビンの映画音楽家としての黄金時代でもあったのかなと思います。