『マッシブ・タレント』の音楽をマーク・アイシャムが担当するのは必然だったのかもしれないという話。

ランブリング・レコーズ様のご依頼で、『マッシブ・タレント』(22)の国内盤サントラに音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は『ヒッチャー』(86)や『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』(20)のマーク・アイシャム。

『マッシブ・タレント』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
『マッシブ・タレント』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)

twitterでも何度か書かせて頂いておりますが、こちらのサントラ盤はアイシャムの劇伴を収録したスコアアルバムで、挿入歌は未収録です。サントラを買ってから「歌が入ってなかった」「思ってたのと違う」とレビューで書かれてしまうと大変悲しい気持ちになりますので、ご購入の際はこのあたりをお間違いのないように。

ワタクシ、ニコラス・ケイジ出演作のサントラ盤のお仕事は『ナショナル・トレジャー』(04)以来だったので、このお仕事の機会を頂けて大変嬉しかったです。実に19年ぶりのニコケイ作品。
彼はここ10年くらいサントラもリリースされないようなB級映画に出まくっていたので、ましてや国内盤リリースの機会なども全くない状態が続いていたんですよね…。

『マッシブ・タレント』も海外ではデジタルダウンロード版のみのリリースなのですが、日本では「久々のニコケイのヒット作だし」ということで、CDプレス盤での発売になったのかもしれません。有難いことです。

アイシャムの略歴や『マッシブ・タレント』の音楽については、サントラ盤の差込解説書に詳しく書かせて頂きましたが、字数の都合で書けなかったことや、あえて書かなかったネタなどもございますので、当方のブログで補完させて頂きたいと思います。

当方調べでは、どうもアイシャムは『マッシブ・タレント』音楽担当のファーストチョイスではなかったようです。その後いろいろあって「やっぱりあなたに劇伴をお願い出来ませんか」という話になったらしい。

アイシャムは『NEXT -ネクスト-』(07)、『バッド・ルーテナント』(09)、『ゲットバック』(12)の3本のニコケイ映画で音楽を担当しているし、アクション、ドラマ、コメディなどジャンル不問の活躍を続けているし、彼のサントラを30年以上聴いているワタクシとしては、「アイシャム以上にこの映画に適任な作曲家はいないよね」と思ったものです。

NEXT – Music From The Motion Picture (amazon)

アイシャム自身も本作のスコア作曲で、自分が過去に手掛けたニコケイ映画の音楽のエッセンスを取り入れているようです。『バッド・ルーテナント』で用いた打弦楽器っぽい音を今回も使っていたり、アクションパートの音楽が『NEXT』や『ゲットバック』の雰囲気に近い部分があったりもします。

スコアは「オーケストラ+シンセ+ギター」という感じ。レコーディングは時期的に新型コロナのパンデミックによるロックダウンの影響を受けていたらしく、オーケストラやソリストの演奏はパートごとにリモートで録音した模様(『ビルとテッドの時空旅行』のレコーディングもそうでした)。
今回のスコアは時々音楽がマカロニ・ウェスタンっぽくなるところが面白かった。なぜこのような音楽演出に?…と思いましたが、「ニックとハビの”バディ”が、宿敵ルカスとの運命の対決を余儀なくされる」という展開は確かにマカロニ・ウェスタン的でもあります。そういうわけでスコアアルバムの中では「Black Box」が一番の聴きどころです。

なおアルバム未収録の挿入歌(劇中使用曲)は下記のような感じではないかと思いますので、お好きな曲があったらセルフ補完して頂ければ幸いです。ニコケイの歌は補完のしようがないか…。

  1. How Do I Live – Trisha Yearwood
     『コン・エアー』(97)主題歌。映画開始早々に流れます。
  2. Down On The Corner – Creedence Clearwater Revival
     オープニングタイトルの曲。
  3. Photo ID – Remi Wolf
     ニック・ケイジの娘のバースデーパーティーで流れている曲
  4. Addy’s Song – Nicolas Cage
     ニックがピアノ弾き語りで披露した自作のバースデーソング。
  5. Mr. Soul Saving Man – Sweet Revival
     ニックがスペインのマヨルカ島に向かうシーンの曲。エンドクレジットでも流れます。
  6. Te Sigo Soñando (feat. Luz Casal) – En Estudio Uno – DePedro
     ニックがサンベッドに寝っ転がって酒を飲んでいるシーンの曲。
  7. Petit Edgar – Clare and Olivier Manchon
     ニックとハビが一緒に『パディントン2』を観るあたりで流れた曲。
  8. Blues In The Dark – Count Basie
    ニックとハビがLSDで朦朧としながら車を運転するシーンで流れた曲。
  9. 12 Suns – Clare and Olivier Manchon
     映画の終盤、ニックが妻と娘と語らうシーン(『パディントン2』を観る手前)で流れた曲。
  10. Keep Me In Your Heart – Warren Zevon
     映画のラスト、ニックと娘が一緒に『パディントン2』を観るあたりで流れた曲。

…確かこんな感じだったかなと。

『マッシブ・タレント』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マーク・アイシャム
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3474
価格:2,750円(税込)
発売日:2023年3月22日

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