ランブリング・レコーズ様のご依頼で、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(23)の国内盤サントラに音楽解説を書かせて頂きました。音楽担当は過去3作と同様にタイラー・ベイツさんとジョエル・J・リチャードの二人。
ジョン・ウィック:コンセクエンス サウンドトラック【世界先行発売】(amazon)
オリジナル・サウンドトラック『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(TOWER RECORDS)
サントラ盤の発売に先駆けて、映画情報サイト「BANGER!!!」でワタクシが実施したベイツさんへのインタビュー記事が公開されています。
『ジョン・ウィック』作曲秘話!「“ロックの美学”がコンセプト」
「クロサワ映画から着想」タイラー・ベイツ独占インタビュー
https://www.banger.jp/movie/102066/
『コンセクエンス』のサントラはデジタル版でもリリースになっていて、CDプレス盤はディスクの収録時間の都合上デジタル版より6曲少なくなっています。
とはいえ、カットされた6曲のうち2曲ぐらいは本編で使われなかった(と思しき)曲だったり、アンダースコア的な感じでやや印象の薄かった曲だったりするので、権利元も曲をよく選んでカットしたのではないかと思われます。
CDプレス盤でカットされた曲のひとつ、”Cry Mia River”はケイン(ドニー・イェン)の娘が弾いていたヴァイオリンソロ曲です。まあリナ・サワヤマの”Eye For An Eye”でアルバムが終わったほうがクールでよいのではないかと思います。
なお劇中で流れた歌曲はCDプレス盤でも全て収録しているのでご安心を。
パリのラジオ局で流れたローラ・コレットの”Nowhere to Run”とマノン・ホランダーの”Marie Douceur, Marie Colère”、エンドクレジットで流れるイン・ディス・モーメントの”I Would Die for You”と前述の”Eye for An Eye”の4曲ですね。歌曲の試聴は当方のBANGER!!!コラムに貼った動画リンクからお願いします。
ちなみに劇中のキーラ(スコット・アドキンス)のアジトや大阪コンチネンタルホテルで流れたル・キャッスル・ヴァニアのEDMナンバーが4曲入りのEPで出ています。”Blood Code”と”Wetwork”がキーラ戦の時に流れた曲で、 “A Long Way Down”が222段の階段でケインとジョン君が共闘するシーンの曲、”Osaka Phonk”が大阪コンチネンタルホテル初登場シーンの曲という感じ。
映画後半のドラゴンブレスショットガン俯瞰バトルのシーンで流れていたのは、第1作の『ジョン・ウィック』(14)のサントラ盤に収録されていたル・キャッスル・ヴァニアの”Shots Fired”と”LED Spirals”の2曲。レッド・サークル戦での曲の再使用ですね。
『コンセクエンス』のスコア最大の聴きどころは、シリーズで初めてオーケストラを導入した音の質感でしょう。物語終盤の決闘シーンのスコアはこれまでのシリーズでは聴かれなかった厳かな雰囲気の音楽です。
『ジョン・ウィック:チャプター2』(17)でヴィヴァルディの「夏(第3楽章)」を使ったあたりから、「いつか生オーケストラを使うのではないかな」とは思っていましたが、第4作にして遂にという感じです。
既存のクラシックを演奏するためではなく、ベイツさん&リチャードの書き下ろしスコアのためにオーケストラを使ったところに製作陣の本気度が伺えます。
ベイツさんは今回もシンセやベース、ギター、ギターヴァイオルを自ら弾いているのですが、『コンセクエンス』ではトークボックス(トーキングモジュレーター)を使った演奏も披露しています。劇中で「ぐももぉぉぉぉん」という唸り声のようなものが聞こえてくるスコアがありますが、たぶんあれがトークボックスで作った音ではないかと。
ちなみに今回のベイツさんへのインタビューですが、アメリカで『コンセクエンス』が公開になった頃に「もし日本盤サントラが出ることになったらインタビューしてもよろしいでしょうか?」と取材を申し込んだところ、「いまはジェリー・カントレルのツアーに帯同しているから忙しいけど、それが終わったら時間が空くからOKだよ」というお返事を頂きました。春頃のお話です。
しかしその頃は『コンセクエンス』の日本盤サントラが出るかどうか分からない状態だったので、しばらく様子を見なければならなくなりました(サントラの発売も決まっていないのに取材は申し込めませんので)。
で、映画の日本公開が9月に決まった頃、同時期に日本盤サントラも出しますという話になり、やっと正式にベイツさんにインタビューを申し込むことが出来たわけですが、その頃になったら今度は先方が「いまちょっと仕事が立て込んでるんだよね」という状況になってしまいました。
これは『ジョン・ウィック:パラベラム』(19)の時のようにインタビューを断念しなければならないかな…と落胆したものの、「でも何とか時間を作ってみるよ」というありがたいお返事を頂きまして、何とか上記の独占インタビューが実現した次第です。
本当はBANGER!!!の記事とサントラ盤の差し込み解説書でちょっと違う質問をしたかったのですが、とにかくベイツさんも自分もランブリングさんもギリギリのスケジュールで制作を進行していたので、BANGER!!!の記事とライナーノーツ原稿はほとんど同じような内容になってしまいました。それでもなるべく工夫して構成を変えたりしていますが。
『ジョン・ウィック』第1作のサントラ盤でベイツさんにインタビューを実施してから約9年。このシリーズの音楽をずっと探求してきた自分としては、『パラベラム』と『コンセクエンス』のサントラ盤にも音楽解説を書かせて頂けたことを本当に嬉しく思います(『チャプター2』は国内盤が発売されなかった)。自分の中で一生の思い出になる大切な作品がまたひとつ増えました。
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』オリジナル・サウンドトラック
音楽:タイラー・ベイツ&ジョエル・J・リチャード
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc,
品番:RBCP-3498