THE ROCK Original Motion Picture Score (Intrada) – TOWER RECORDS
Intradaから発売になった『ザ・ロック』(96)の拡張盤サントラを買いました。
拡張盤ということでCD2枚組。映画で使われたスコアがCD2枚にまたがって収録されていて、それだけでも大体100分くらい。
Disc 2にはそのほか別バージョンやデモバージョンのスコアを収録していて、それらを含めたトータルの収録時間は合計134分くらい。大ボリュームです。
通常盤サントラは曲順がストーリーの進行順になっていなかったのですが、今回はちゃんと進行順になっています。通常盤では14分強の曲がありましたが、拡張盤では16分強のものがあります。
ハンス・ジマーの1990年代の超人気サントラ(のひとつ)が拡張盤としてリリースされた割に、サントラリスナーの間でそれほど話題になっていないのがちょっと意外な気もします。個人的にはジマーさんの音楽が好きなら絶対買うべきアルバムではないかと思います。
Hollywood Recordsのサントラはあまり他社から拡張盤が出ないような印象があったのですが、『ザ・ロック』の拡張盤が出たとなると、そのうち『クリムゾン・タイド』(95)や『フェイス/オフ』(97)なんかも出たりするのかなと期待が高まります。
そういえば先頃Intradaから拡張盤が出ていたゴールドスミスの『ゴースト&ダークネス』(96)も通常盤はHollywood Recordsから出ていましたね。
『ザ・ロック』の作曲者クレジットは”Nick Glennie-Smith, Hans Zimmer and Harry Gregson-Williams”となっていて(資料によってはHGWは補作曲/追加音楽作曲家扱い)、なんでジマーさんがクレジットの先頭ではないのかなと思っておりました。
で、今回の拡張盤サントラのブックレットに載っていたライナーノーツを読むと、どうもNGSが単独で音楽を担当することになっていたものの、この時期(1990年代)からノンリニア編集が主流になったせいで、いつまでも延々と編集作業をするようになり、曲作りの時間がどんどん削られていって制作スケジュールが非常にタイトになってしまったので、ジマーさんを筆頭に数人がかりで曲作りを行う事態になったらしい。
「NGSには荷が重い仕事だったからではないか」とか「ジマーさんが弟子にあたる作曲家をゴリ押ししたのではないか」とか当時いろんなことを言われていましたが、憶測でものを語ってはいけないということですね。ちなみにニック・グレニー=スミスはジマーさんより年上です。何かのインタビュー記事で読みましたが、NGSはジマーさんがまだ駆け出しの頃に何かとよくしてくれたらしいので、ジマーさんにとって親友にして恩人といったところなのでしょう。なお上記の3人のほかにもドン・ハーパー、スティーヴン・スターン、ラス・ランドーが”Addidional Music”でクレジットされてます。
それはさておき、『ザ・ロック』のスコアを久々に聴いたら大変気分がスッキリしました。この時代はアクション映画で少々やり過ぎなくらいドラマティックな音楽を鳴らしても全然OKだったんですよね。
ナラティブな旋律、あざといまでに重厚で劇的なオーケストラサウンド、そして過渡期のシンセ・サウンド。『ザ・ロック』はこれらが見事な調和を見せ、極上のアクションスコアに仕上がっています。
いま聴くとメインテーマの勇壮かつ哀調を帯びた旋律が「いかにも」というか、少々「ベタ」な感じもするのですが、「皆さんアクション映画でこういう音楽が聴きたいんでしょ?」と言われているようで、逆らえない魅力があります。
最近はシリーズ物でも続編が作られる度に作曲家が交代してテーマ曲が固定しなかったり、リアル志向で過度にドラマティックな音楽は敬遠されたりする傾向があるので、『ザ・ロック』のような劇伴はなかなか聴けない。
そういう意味でも「1990年代の映画音楽事情」を知ることが出来る資料的価値の高いアルバムと言えるでしょう。