そういえば幸宏さんのEMI時代のアルバムのリマスター盤が出るのはいつだったかな…とショップのサイトを閲覧していたところ、なんと今年の10月にスーパーファミコン用ソフト『ノイギーア 海と風の鼓動』(93)のサントラ盤が出ていたことに気づきました。
こんなマイナーなソフトのサントラが2020年代になって発売されるとは…(嬉しい)。
「ちょっと意外な昔のゲームのサントラがいまになって突然出たりするけど、さすがにこれは出ないだろうな」と思っていた作品でした。当時テレビにプラグを繋いで幸宏さんのゲーム内音楽をテープに録音してたっけ…。
オビには「発売30周年記念盤」と銘打たれておりましたが、それ以上に幸宏さんの追悼盤としての意味合いが強いのでしょうね。
『ノイギーア 〜海と風の鼓動〜』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
『ノイギーア 〜海と風の鼓動〜』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)
『ノイギーア』は幸宏さんが音楽を担当していると知って、ヨドバシカメラかどこかでわざわざ予約して買った記憶があります。
「売り切れると困るから」というより、「マイナーなゲームだから予約でもしないと仕入れてくれないのではないか」という不安があったからです。定価(9,800円)で買ったのをいまでも憶えています。
ハッキリ言ってゲームとしての評価は当時も微妙でした。
同じアクションRPGの『ゼルダの伝説』や『聖剣伝説』に比べるとボリューム不足という印象は拭えず、クリア時間によって評価が変わるエンディング後のプレイヤーランクに至っては、「やりこみ要素が重要なアクションRPGでタイムアタックやってどうするの?」と当時から言われていた。
自分は幸宏さんのゲーム音楽が聴ければそれでよかったので、世間のそんな評価は正直どうでもよかったのでした。
今回のサントラ盤のブックレットに載っている解説書によると、物語の舞台(空間的な広がり)が限定的なのは最初からそういうコンセプトで作られていたからだそうです。
ゲーム中のロケーションはノイギーア城とその周辺の海域、洞窟、地下の古代遺跡、異空間ぐらいでしたが、そういう限られた舞台設定は個人的に嫌いではないです。
解説書にも書いてあったけど、全6話くらいのOVAとかTVミニシリーズ的な感じかな。
サントラ盤は音楽が10曲とゲームオーバーのジングル1曲、未使用のジングル集1曲の全12曲で収録時間31分くらい。
解説書によると幸宏さんから曲のデータをもらって、それをゲームのサウンドドライバーにコンバートして調整しながら作ったとのことで、もともとの曲のデータなどあれば聴いてみたかったのですが、何しろ30年前のマイナーゲームなので元のデータももう残っていないのでしょう。
欲を言えば全部打ち込みでもいいから新録版(アレンジバージョン)を聴いてみたい気もしましたが、そこまで手間と予算をかけるようなサントラ化企画でもなかったらしい。
ファミコンの『銀河の三人』(87)の時は「ライディーン」のパロディも聴かせる音数少なめのテクノポップといったサウンドでしたが、『ノイギーア』はテクノ的なリズム/シーケンスのパターンを用いつつ、中世のヨーロッパ音楽(ブルガリア、アルバニア、モンテネグロあたり)のエッセンス強めなサウンドに仕上げた感じ。エキゾティックなファンタジー音楽とでも申しましょうか。オープニングやノイギーア城内で流れるメインテーマがやはり出色の出来。
そのほかの曲もじっくり聴きこんでいくと、映画のサントラなどで聴かれる幸宏さんのインスト音楽の特徴が感じられてなかなか面白い。
主人公デュークが故郷に向かう船に乗り込むシーンの曲「デューク」は、跳ねるようなベースラインが再生YMOの「Hi-Tech Hippies」を彷彿とさせてテクノポップ感が強めで楽しい。何度か挿入されるスネアドラムの”オカズ”も凝っていていい感じ。
四月の魚 サウンドトラック+2(amazon)
四月の魚 サウンドトラック +2(TOWER RECORDS)
デュークの乗った船が海賊に襲われるシーンで聴かれる「海の怒り」という曲は、映画『四月の魚』(84)の「危うし!昌平」のシリアスバージョン的な雰囲気がある。
最終ステージ「3つの魔方陣」の楽曲展開も少し「ライディーン」っぽい。
古代遺跡にたたき落とされたデュークが、ノイギーア城の屋根から囚われのヒロイン救出に向かう「二度目の帰還」という曲は、電子音の小刻みな反復パターンが『銀河の三人』のフィールドマップの音楽みたいでニンマリしてしまう。
『ガクの冒険』オリジナル・サウンドトラック(amazon music)
エンディングテーマのゆったりとした優しげな音色(おんしょく)とメロディは、『ガクの冒険』(91)や『うみ・そら・さんごのいいつたえ』(92)の劇伴に共通するものがあるかなと。
こうして『ノイギーア』の音楽をサントラ盤で改めて聴いてみて、小粒ながらどの曲もクオリティが高いなと改めて思いました。
鈴木慶一の『MOTHER』(89)みたいに、幸宏さんもゲーム音楽で代表作(ヒット作)を一発当ててほしかったなぁ。『三国志 英傑天下に臨む』(91)にしても『ファンタステップ』(97)にしても、如何せんマイナーですからね…。
「作曲はテーマ曲だけ」という仕事が多かった(ギャラが高額だからと思われます)坂本龍一より丁寧な仕事をしていたと思う。まあそんな教授もドリームキャストの『L.O.L. LACK OF LOVE』は全曲作曲していましたが。
ちなみに解説書で「細野晴臣氏はゲーム作品への参加はないが」と言及されていましたが、確かプレイステーションの廉価版ゲーム「LATTICE ラティス」(00)の音楽を担当していました。あれも細野さんのトランスミュージックが楽しめるので、サントラを出してほしいマイナーゲームですね。
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