BANGER!!!で書いた『テルマ&ルイーズ』音楽コラムの補足

2月16日から『テルマ&ルイーズ』(91)の4Kレストア版の上映が始まるということで、映画情報サイト「BANGER!!!」で音楽紹介コラムを書かせて頂きました。

実はブラピの出世作『テルマ&ルイーズ』が4Kリバイバル上映! アカデミー賞受賞の傑作ロードムービーを彩るハンス・ジマーの音楽 | https://www.banger.jp/movie/110781/ #BANGER

当初はハンス・ジマーのスコアをメインに紹介して、挿入歌は数曲ざっくりご紹介すればいいかな…と考えていたのですが、映画本編をじっくり観直したところ、挿入歌の使い方もかなり凝っていたので「これは出来る限りきちんと紹介しなきゃダメだな」と思い直し、結局挿入歌もかなりの字数を割いてご紹介することになりました。

最近疲れているので少し楽をさせて頂こうと思ったのですが、そんなにうまくは行かないのでありました。

BANGER!!!のコラムで重要なことはほとんど書いたので、当方のブログではもう少し補足したほうがいいかなというネタをいくつかご紹介いたします。

Thelma and Louise – Original Motion Picture Score (TOWER RECORDS)

1990年代当時のハンス・ジマーについて

BANGER!!!のコラム内で「90年代初頭のジマーは冷遇されていたこともあった」と書きましたが、『ドライビング Miss デイジー』(89)で一体何があったのか。このあたりのところをもう少し詳しくご説明したいと思います。

2014年頃のブルース・ベレスフォード監督のインタビュー記事によると、彼としては『ドライビング Miss デイジー』の音楽はジョルジュ・ドルリューに任せたかったらしい。
しかしプロデューサーのリリー・ザナックが「ハンス・ジマーという若いドイツ人作曲家を使いたい」と提言。ベレスフォードはジマーのことを全く知らなかったけれども、ジマーの音楽を聴いてみたら「彼じゃダメだよ」とは言えなくなった。ドルリューとは異なるタイプの優れた作曲家だと認めたわけです。

ここまではいい話なのですが、ジマーさんが「オーケストラを使いたい」と言ったら映画スタジオ側が費用の支払いを拒否。もともと低予算映画で製作費が限られていたこともあって、スタジオとしては無名の作曲家に余計な金を使いたくなかった。そしてジマーさんがシンセで曲が作れる音楽家ということもあって、「全部シンセで曲が作れるならそれでいいじゃないか」という発想になったらしい。

Driving Miss Daisy (Original Soundtrack) – amazon music

予算もないし、シンセだけで完成度の高い曲が作れてしまうなら、金のかかるオーケストラをわざわざ使わなくてもいいだろうという理屈だったようです。そして皮肉なことに、オーケストラを使わずシンセで作り上げた音楽が今日に至るまで高い評価を得ているのです。

ジマーさんの2012年頃のインタビューだったかな。「『レインマン』のあと”自分のキャリアはこれで終わりかもしれない”と思ったし、『ブラック・レイン』(89)のあとも”自分のキャリアはこれで終わりかもしれない”と思った」と述懐していたのを読んだことがあります。まあ自虐的なジョークを交えて話しているのだとは思いますが、当時のジマーさんはまだ駆け出しの身ゆえ、気苦労も多かったものと思われます。

以前のブログでもご紹介したとおり、『テルマ&ルイーズ』のスコア盤は2017年にnotefornoteから再販されました(初出は2011年のKritzerland盤)。どちらもボーナストラックでオープニングタイトル曲が収録されています。

The Wings of A Film – The Music of Hans Zimmer – amazon

本作の事実上のメインテーマ”Thunderbird”は、ジマーさんのライブ盤「The Wings of A Film -The Music of Hans Zimmer-」のバージョンもなかなかよいです。なにしろピート・ヘイコック本人がギターを弾いていますので。

劇中の挿入歌について

Thelma and Louise Original Motion Picture Soundtrack (Various Artists) – amazon music

映画の中で流れた既製曲は以下の通り。
劇中で使用された順番もこんな感じだったのではないかと思います。
サントラ未収録曲を補完するときのお役に立てれば幸いです。

  1. Little Honey – Kelly Willis
  2. Wild Night – Martha Reeves
  3. House of Hope – Toni Childs
  4. I Don’t Want To Love You (But I Do) – Kelly Willis
  5. Tennessee Plates – Charlie Sexton
  6. Mercury Blues – Charlie Sexton
  7. Badlands – Charlie Sexton
  8. I Don’t Wanna Play House – Tammy Wynette
  9. Part of Me, Part of You – Glenn Frey
  10. The Way You Do the Things You Do – The Temptations
  11. Kick the Stones – Chris Whitley
  12. I Can’t Untie You From Me – Grayson Hugh
  13. Drawn To Fire – Pam Tillis
  14. No Lookin’ Back – Michael McDonald
  15. Don’t Look Back – Grayson Hugh
  16. The Ballad of Lucy Jordan – Marianne Faithfull
  17. Better Not Look Down (feat. The Crusaders) – B.B. King
  18. I Can See Clearly Now (Edit) – Johnny Nash

ソングコンピ盤には歌曲が10曲収録されていたので、あとの8曲を自前で揃える必要がありますね。今回の4Kレストア版上映の機会に完全版サントラを自作してみてはいかがでしょうか。

ちなみにBANGER!!!のコラムで使う『ブラック・レイン』サントラ盤の写真は、当方の私物写真を編集部に送ったものの、なぜだか使ってもらえませんでした。したがって、web上にアップされた写真は先方で用意したものです。せっかくなので、自分のブログには編集部に送ったLa-La Land Recordsの『ブラック・レイン』2枚組完全盤サントラの写真を載せておきます。

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