先日クリント・マンセルの『DOOM』(05)のデラックス・エディション版サントラを購入したとき、同時発売になっていたアラン・シルヴェストリの『ホワット・ライズ・ビニース』(00)のデラックス・エディション版サントラも買いました(おまとめ購入だとVareseのインターナショナルストアサイトで少々割引価格になったので)。
What Lies Beneath (Original Motion Picture Soundtrack / Deluxe Edition) – TOWER RECORDS
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What Lies Beneath (Original Motion Picture Soundtrack / Deluxe Edition) – amazon music
その数ヶ月前に『マウス・ハント』(97)のデラックス・エディション版サントラも買っていたので、今回まとめてご紹介致します。
どちらも映画公開当時Vareseから通常盤サントラが出ていたのですが、収録時間が30分前後だったので購入を見送っていたのでした。
当時の自分はハンス・ジマーやマイケル・ダナさん、マルコ(・ベルトラミ)さん、グレーム・レヴェルの作品を積極的に買い集めていたので、シルヴェストリの作品は後回しになっていました。
あるいは「収録時間が短いけどサントラが欲しい!」というほどの作品がなかったり、シルヴェストリの劇伴が気に入った作品に限ってスコア盤が出ていなかったりしたこともありました(例えば『ジャッジメント・ナイト』(93)とか)。
しかしBANGER!!!で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(85/89/90)や『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(84)の音楽紹介コラムを書いて、シルヴェストリの音楽の魅力を再認識したので、拡張盤が出たこの機会に往年のスコアをじっくり聴いてみようと思ったわけです。
『ホワット・ライズ・ビニース』の拡張盤は収録時間が60分くらい。
全25曲のうち2曲はソース・ミュージックだから、シルヴェストリのスコアは54分くらいかな。
本編が130分近くあることを考えるとスコアの分量が少なめですが、「静かな状態が逆に怖い」という感じのホラー映画だったので、劇伴でベッタリ塗りつぶす感じの作品ではなかったのでしょう。
シルヴェストリらしくショッキングなシーンではオーケストラを派手に鳴らして驚かせてくれるのですが、メインテーマのバリエーションをしっかり聴かせてくれる古き良きスタイルのホラー音楽でした。
おそらくバーナード・ハーマンの音楽をかなり意識して作曲したのではないかと。5音からなるメインテーマの旋律も印象に残ります。
メインテーマの旋律をじっくりねっとり聴かせてくれるホラー/スリラー映画音楽はいいですね…。ブライアン・デ・パルマ×ピノ・ドナッジオ作品のような感じの音楽とでも申しましょうか。
ちなみにブックレットでは脚本のクラーク・グレッグに新規インタビューを実施していました。後年『アベンジャーズ』(12)に俳優として出演したときのことを話していて、「自分の出演シーンにシルヴェストリの音楽をつけてもらえたのはとても貴重な体験だった」といった旨のコメントをしていました。
一方『マウス・ハント』のデラックス盤はというと、全44曲で収録時間は通常盤のほぼ倍の66分。
コメディ映画に顕著な「1曲あたりの演奏時間が短い」という仕様です。
Mouse Hunt (Original Motion Picture Soundtrack / Deluxe Edition) – TOWER RECORDS
この映画は当時映画館で観たとき大いに笑わせて頂きました。
ネズミにやられまくるネイサン・レインとリー・エヴァンスの兄弟コンビのマンガチックな掛け合い(ローレル&ハーディのような感じ)も愉快でしたが、ネズミ駆除のプロにクリストファー・ウォーケンを起用するセンスが素晴らしかった。
監督のゴア・ヴァービンスキーはニーノ・ロータの劇伴などをテンプトラックに使っていたようですが、スピルバーグからシルヴェストリを薦められたらしい。確かにこの手のドタバタコメディはシルヴェストリの十八番ですからね。
“Main Title”のせわしないメロディが、いかにも「これからネズミさんが話を引っかき回しますよ」という感じでよき。サブテーマのハートウォーミングなメロディもいい感じ。
1曲あたりの演奏時間が短い中で、しっかりとテーマ曲のバリエーションを聴かせているのがシルヴェストリの職人芸と言えるでしょう。時々ジャズ的な手法を用いつつ、全編を通して賑やかな音楽を聴かせてくれています。
『マウス・ハント』の映画自体もすごく好きだったのに、なぜ自分は当時サントラを買わなかったのかと今更のように思いました。
当時の自分はアクション映画やスリラー映画のサントラを好んで買っていたので、コメディ映画のサントラは優先順位が下だったのだと思います。
しかしそれは間違いでした。
シルヴェストリの音楽がとてもよく出来ているうえに聴いていて楽しいです。
デラックス・エディション発売の機会に買っておいてよかった。
ゴア・ヴァービンスキーは『ザ・メキシカン』(01)でシルヴェストリと再びタッグを組んだあと、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(03)でもタッグを組むはずだったのに、結局クラウス・バデルト(というかその前年に『ザ・リング』(02)で共に仕事をしたハンス・ジマー)が音楽担当になって、その後は『ローン・レンジャー』(13)までジマーさんとタッグを組むようになったのでした。『キュア ~禁断の隔離病棟~』(16)のベンジャミン・ウォルフィッシュもジマー組の人でした。
「もしシルヴェストリとヴァービンスキーのコラボが続いていたらどうなっていただろう」と、つい考えてしまいます。