「野球」を通してアメリカの伝統を音楽的に描いたベイジル・ポールドゥリスの隠れた名作『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』のデラックス版スコアアルバム

Varese Sarabandeから2,000枚限定で発売になった『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』(99)の拡張盤スコアアルバムを買いました。

For Love Of The Game (Deluxe Edition) – TOWER RECORDS

ちなみにデジタル版も出てます。
For Love Of The Game (Original Motion Picture Score / Deluxe Edition) – amazon music

ポールドゥリスといえば”『コナン・ザ・グレート』(82)の作曲家“、”『ロボコップ』(87)の作曲家“、”『スターシップ・トゥルーパーズ』(97)の作曲家“など骨太マッチョなアクション劇伴を得意とする映画音楽家という印象が強いのですが、登板機会の少ないドラマ作品でも優れた手腕を発揮していたことはリスナーの間でつとに有名な話。

中でも『ラブ・オブ・ザ・ゲーム』は晩年のポールドゥリス(2006年没)が放った決勝ホームラン級の傑作ドラマ劇伴でした。

For Love Of The Game (Original Motion Picture Score) – amazon music

自分は劇場公開当時に映画館でこの作品を観ていたく感動し、映画鑑賞後CDショップに立ち寄ってサントラ盤を買ってから帰宅しました。
ソングコンピ盤とスコア盤の2種類がサントラ出ていましたが、もちろん自分が選んだのはスコア盤です。

通常版のスコアアルバムはこの時期の”Vareseサントラあるある”で収録時間が30分くらいで短かったのですが、今回の拡張盤は全35曲・収録時間78分。”Not on final film”と書かれた曲が3つくらいあるので、本編で使われた劇伴は70分くらいと思われます。

それにしても「サム・ライミ監督作にベイジル・ポールドゥリス」という意外な組み合わせがどのような経緯で実現したのか。

For Love Of The Game: Original Motion Picture Score (輸入盤) – amazon

これについては1999年発売の通常盤、2018年に再販された通常盤、今回発売された拡張盤のライナーノーツでそれぞれ異なる内容が書かれていたのが興味深かった。
「異なる内容」といっても情報が間違っているのではなく、それぞれ時代が異なるポールドゥリスへのインタビュー記事と、エージェントのリチャード・クラフトへのインタビューに基づいた情報という意味です。
だから異なる視点から語られた3つの情報を繋ぎ合わせると、「なるほどこういう流れか」と本作へのポールドゥリス登板への経緯が大変よく分かるようになりました。詳細は各サントラ盤のライナーノーツをご確認ください。

ポールドゥリスのスコアは流麗なオーケストラサウンド。
ブログタイトルに書いたとおり「野球を通してアメリカの伝統(や文化)を描く」というコンセプトなので、スコアにもアメリカーナの雰囲気があるのが特徴かなと。
アメリカ文化と”野球”というポップカルチャーを象徴する楽器としてギターを使っているのもポイント。
主人公のベテラン投手ビリー(ケビン・コスナー)の気難しい気性を表すときはエレキギター、相棒の気のいい捕手ガス(ジョン・C・ライリー)の打席ではカントリー調のギターという風に使い分けをしているのも細かい。

本作は野球ドラマである一方でジェーン(ケリー・プレストン)とのラブストーリーでもあるので、どのモティーフの旋律も実に素晴らしい。
メインテーマの旋律には”野球賛歌”的な雄大さがあるのに対して、ジェーンとの”愛のテーマ”には繊細な美しさがある。オーケストラにコーラスが重なるクライマックスの曲の盛り上がりなどは最高ですね…。

この路線のポールドゥリスの音楽をもっと聴いてみたかった。
61歳で亡くなるのは早すぎましたよ…。

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