『パピヨン』Quartet Recordsリマスタリング完全盤を購入したお話

先日(と言っても8月のお話ですが)、ジェリー・ゴールドスミスの『パピヨン』(73)リマスタリング完全盤サントラを買いました。

パピヨン リマスタリング完全盤(サウンドトラック)- amazon
パピヨン リマスタリング完全盤(サウンドトラック・輸入盤国内流通仕様)- TOWER RECORDS
PAPILLON Expanded Original Motion Picture Soundtrack(輸入盤)- TOWER RECORDS

『パピヨン』のサントラCDはまず1988年にSilva Screen Recordsから全10曲・収録時間35分のものが発売になり、その次にUniversal Franceから全15曲・収録時間46分のものが発売になって、2017年にQuartet Recordsからソースミュージックとボーナストラックを追加した全27曲・収録時間71分のものが発売になったという流れのようです。今年再販になったのはその2017年のQuartet盤になります。

自分が2017年にQuartet盤の購入を見送ったのは、『パピヨン』は名作ではあるもの重い内容なので何度も観たい感じの映画ではなく、BS/CSでも映画を観る機会がそれほど多くなかったからでした。

しかし70年代ゴールドスミスの代表作(傑作)のひとつと名高いサントラを買わずに済ませるわけにも行かないだろうということで、今回の再版の機会に「やっぱり買っておこう」と考え直したのでありました。これを逃したらもう『パピヨン』のサントラは買えなくなりそうだからという理由もあります。

そうして『パピヨン』のサントラを聴いて改めて思ったのは、「ワルツの要素を取り入れたテーマ曲が素晴らしいな」ということでした。1990年代の重厚なアクション映画音楽からゴールドスミス作品に触れていった自分としては、アコーディオンを用いたヨーロピアンテイスト溢れる音楽がとても新鮮に聞こえたものです。

「刑務所脱獄もの」の音楽に「ワルツ」というのはかなり異色な組み合わせなわけですが、ゴールドスミスはなぜそのような音楽を思いついたのか。これには大きく分けて二つの解釈があるような気がします。

ひとつはワルツが「自由の象徴」であるという考え方。
刑務所で過酷な強制労働を強いられる男が渇望する「自由」。
そして蝶(パピヨン)が自由に宙を舞う姿のイメージ。
これらをワルツの哀愁のメロディに託したのではないかと考えられるわけです。

もうひとつは「反復」という考え方。
ワルツのリズムが生み出す反復や螺旋/回転運動のイメージから、「脱獄を繰り返す」男の揺るがぬ意志を描き出したのではないかという解釈です。
少々奇抜な考え方かもしれませんが、デスプラ様が『記憶の棘』(04)で「輪廻」の概念をワルツで表現していた事実を考えると、的外れとも言えないのではないかと。

ブックレットのライナーノーツに何か答えになるようなことが書かれていないかなと読んでみたのですが、音楽の解釈についてはこれといった言及はなさそうでした。しかし収録曲ごとの曲解説なども書かれているので、読み物としては非常に充実した内容です。

ちなみにライナーノーツによると、監督のフランクリン・J・シャフナーはモンマルトル風の音楽を提案したけれども、ゴールドスミスがそれを拒否。8小節ほどのテーマ曲を書いてみたものの、そこからなかなか曲が発展していかない。
あるときピアノを弾いていたら指が滑って間違った音符を弾いてしまったものの、それこそがゴールドスミスの探し求めていた「正しい音」で、行き詰まっていたテーマ曲が一気に発展していったのだとか。そしてあのワルツのテーマ曲が出来上がったそうです。

あの名曲が出来上がるまでの経緯を知ったうえでサントラを聴くと、面白さが増してくるのではないかなと思います。『パピヨン』はキングレコードの「死ぬまでにこれは観ろ! 2024」のラインナップにも加わっているし、この機会にブルーレイも買ってしまおうかな…。幸か不幸かいままでそれほど本編を観てこなかったわけですし。

Mychael Danna & Jeff Danna『A Celtic Romance』好評発売中!
iTunes
A Celtic Romance: The Legend of Liadain and Curithir - Mychael Danna & Jeff Danna