実際サントラ盤のブックレットを見ると「Performed by Angelo Badalamenti with the City of Prague Philharmonic」という記述があるわけですが、スコアの音が全体的にシンセっぽい感じなので、一体どこで生オーケストラの音を使っているのだろうと長年不思議に思っておりました。 当時のバダラメンティのインタビュー記事を読むと、バダラメンティとリンチはオーケストラの演奏をそのまま使うというよりも、むしろプラハ・フィルが演奏した音を加工して「音楽的なサウンドデザイン」を作り上げることのほうが多かったようです。
仮にそうだったとしても、底なしの悪夢に引きずり込まれるようなメインテーマ”Mulholland Drive”の妖しくも美しい旋律は絶品であり、アカデミー作曲賞ノミネートに値する完成度ではないかと思います。悲恋を感じさせる”Diane and Camilla”の旋律もいい。 メインテーマは『ロスト・ハイウェイ』の頃にリンチから『マルホランド・ドライブ』のアイデアだけ聞かされて、「ロシア音楽っぽいダークで美しい曲がいい」と言われて曲を作ったそうですが、バダラメンティによると完成版はチェロとコントラバスを足して深みのある音にした程度で、ほぼ当初のままの形で使われているという話です。
本作ではジャズピアニスト/オルガン奏者のミルト・バックナーの”The Beast”、ブルースシンガー、サニー・ボーイ・ウィリアムソンIIの”Bring It On Home”、リンダ・スコットの「星に語れば」、コニー・スティーヴンスの”Sixteen Reasons”というラインナップ。”Sixteen Reasons”はサントラ未収録。