坂本龍一 『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』のサントラ盤を聴いて思い出したこと。

先月下旬、X(旧Twitter)で坂本龍一の名前がトレンドに上がっている期間がありました。
「なぜこの時期に?」と思いましたが、どうやら教授が監修した公式楽譜集『オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /04』『オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /05』が復刻・発売になるというニュースの関係だったようです。

オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /04 復刻版 – TOWER RECORDS
オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /05 復刻版 – TOWER RECORDS

せっかく名前をSNSでお見かけしたことだし、今日は教授のサントラを聴いて過ごそうかな…と思い立ち、近頃あまり聴く機会のなかった『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』(98)と『侍女の物語』(90)のサントラを聴くことにしました。

曲を聴きながらそれぞれジャケットを眺めていると、「そういえば…」と気がついたこと、思い出したことがいろいろと出てまいりました。せっかくなのでブログのネタにさせて頂きます

LOVE IS THE DEVIL – Original Soundtrack Recording – amazon
LOVE IS THE DEVIL Original Soundtrack Recording – TOWER RECORDS

自分の手元にある『愛の悪魔』のサントラ盤は、2010年にcommonsから再販になったものなのですが、「自分は1999年頃この映画のサントラ盤を買っていたような…」と記憶が蘇ってまいりました。
確か発売はフレイヴァー・オブ・サウンドで(販売はトイズファクトリーでした)、パッケージはデジパック仕様、差込解説書に教授と半野喜弘(当時『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(98)の音楽担当で話題になっていた)のemailによる往復書簡が載っていた気がします。
これだけ鮮明に覚えているのだから、当時絶対買ったはずだと確信しました。
しかし仕事場を探しても実家を探しても旧盤は見当らず。
東日本大震災のときにダメにしたCDもいくつかありましたが、『愛の悪魔』を処分した記憶はない。

旧盤は一体どこにやった? と記憶の糸を手繰り寄せた結果、「学生時代に知人に貸したまま戻ってこなかった」ということを思い出しました。
坂本龍一の音楽が好きな人だったのでサントラを貸したまではよかったのですが、その後彼は学生生活の中でいろいろあって体調を崩してしまい、学校に来なくなってしまったのでした。
状況が状況なので「CD返してほしいんだけど」と言い出せず、結局そのままサントラ盤が手元に戻ってこないまま時は流れていったのでした。

そのことを失念したまま、自分はcommons盤を買っていたのですね…。
(思い出さなければよかった)

で、久々に『愛の悪魔』の音楽を聴いたのですが、これが実によかったのです。
全編教授が一人でピアノとシンセサイザーを弾いて作った楽曲なので、非常に実験的というか音響系エレクトロニカの音というか、「energy flow」のような”売れるピアノ曲”という感じではありません。『トニー滝谷』(04)のサントラに比べてかなりとっつきにくい側面もある。

でも、この張り詰めた緊張感と静寂の中で響くピアノとシンセの音が素晴らしかった。
アルバム18曲目の”Redman 3″の中で、YMOの”LOOM”を彷彿とさせる音が流れだしたときは鳥肌が立ったものです。

教授の映画音楽ベスト盤「UF」にはアルバム6曲目の”Bathroom”と28曲目の”Love is the Devil”が選ばれていました。

ちなみにサントラにはジョン・メイバリー監督が寄せたライナーノーツ(和訳なし)が載っているのですが、「…ひどいインフルエンザにかかっていたとき、私はニューヨークの彼のスタジオで龍一に会い、私が愛してきた映画音楽について彼と話しました」という一文がありまして、今更ながらに「ひどいインフルにかかってるのに教授に会いに行ったらダメでしょ…。教授にインフルうつしたらどうするの?」と思ってしまいました。新型コロナも初めの頃はこんな感じで感染拡大していったんだろうな…。

それはさておき、教授の2000年前後の映画音楽作品の中でも語られる機会の少ない『愛の悪魔』、「ソロアルバムのつもりで作った」というご本人のコメントもどこかのインタビューか何かで読んだ気がするので、改めてじっくり聴いてみるのもよろしいのではないかと思います。

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