坂本龍一 『侍女の物語』のサントラ盤を聴いて気がついたこと。

前回のブログの続きです。

当方が所有している『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』(98)と『侍女の物語』(90)のサントラ盤について、ひとつにまとめて話を書こうと思ったものの、『愛の悪魔』のお話が長くなったので二回に分けました。

今回は『侍女の物語』のサントラについて書かせて頂きます。

自分の手元にあるのは1枚目の写真のアルバムなのですが、このジャケットは輸入盤のものです。

しかしバックインレイには日本語が書かれておりまして、盤面を見ると発売元もJapan Records(徳間ジャパン/徳間コミュニケーションズ)となっておりました。ちなみに国内盤サントラのジャケ写はこれ(↓)だったようです。

「なんで自分の持っているサントラは輸入盤と国内盤がごっちゃになっているんだ?」と本気で悩みました。このサントラは中古CD店で買ったので、店頭に並んでいた時点で既に変な製品だったのだろうかとも思いました。
気になって気になってネットで情報を漁り、当時(30年近く前)のことを必死に思い出した結果、このいびつな仕様の理由が分かりました。

まずはっきり憶えているのは、当時自分が中古CD店で買った『侍女の物語』のサントラ盤は輸入盤だったということ。そしてこのことをすっかり失念していたのですが、輸入盤は収録曲が細かくトラック分けされていなくて、1曲目から14曲目までがひと繋がりで1曲、15曲目から27曲目までひと繋がりで1曲となっておりまして、「組曲形式で全2曲」という非常に聴きにくい構成になっていたのでした。この事実はネットで調べて分かりました…というか「そういえばそうだったな」と思い出しました。

当時そのことをイトコ(何度か当方のブログに登場する教授派のYMOリスナー)に話したら、「自分が買ったのはちゃんと曲が分かれてたよ」と言われたのでした。
自分も国内盤を買えばよかったとは思ったものの、そもそも国内盤が店頭から姿を消していて、やっとの思いで手に入れたのが輸入盤だったという有様なので、国内盤が欲しくても手に入らなかった。

その後何年ぐらい経ってからだったのかな。たまたま中古CD/レコード店を物色していたら思いがけず『侍女の物語』の国内盤サントラを見つけたので、予期せぬ邂逅に驚きつつもすぐさま製品を購入しました。
しかしそこは500円前後で投げ売りされていた中古盤。ブックレットがヤニ臭いうえに、紙の傷み具合がひどくて手の施しようがない状態でした

幸いCDの盤面はキズもなくよい状態で、バックインレイもまだマシな状態だったので、国内盤の傷んだブックレットを捨てて、良好な状態の輸入盤ブックレットと差し替えたのでした。曲が繋がっていて聴きにくい輸入盤のCDもそのときに処分したものと思われます。その結果「ブックレットは輸入盤、盤面とバックインレイは国内盤」という極めていびつなサントラが出来上がったというわけです。

したがって、この映画のサントラ盤を中古で買うときは「収録曲が27トラックに分かれているかどうか」という点に注意しなければならないということになります。なるべく製品を実際に手にとって確認できる環境で購入したほうが安心感がありそうです。

『侍女の物語』も教授の映画音楽作品では語られる機会の少ない作品のひとつですね…。
先頃の追悼上映や追悼放送の企画でもラインナップに加わることもなかった。

時期的には『ラストエンペラー』(87)と『シェルタリング・スカイ』(91)、『ハイヒール』(91)の間の頃ということになりますか。
外国映画でオーケストラスコアも作曲していた頃の作品ですが、『侍女の物語』のスコアはシンセサイザーの占める割合も多いような印象。近未来ディストピア映画だからでしょうか。
そういう意味では『戦場のメリークリスマス』(83)の音楽に近いのかもしれません。あの作品ほど情緒的な喚起の強いサウンドではありませんが。

ノイジーなパーカッションのサンプリング音(だと思う)が唸るアルバム2曲目”Prison Camp”は、この世の終わりのような雰囲気のインダストリアル系劇伴で、なかなか攻めたサウンドです。

アルバムだと5曲目の”Moira’s Hand”あたりからメインテーマの旋律が明確になってくる感じでしょうか。
ピアノの旋律が聞こえてくると、実験的な音響系スコアであっても「ああ、やっぱり教授の音楽だ」と安心する。
教授の映画音楽ベスト盤「UF」には、このサントラからアルバム26曲目の”Mayday”が選ばれていました。

なおサントラには「オールド・ハンドレッド」「まもなくかなたの」「アメイジング・グレイス」の3曲の賛美歌が収録されておりまして、教授のスコアと合わせて聴くとアルバムの流れが少し悪くなる印象を受けました。そのため当方は賛美歌をカットして教授のスコアだけウォークマンに取り込みました。

『侍女の物語』は1990年代に1回くらい観られたような記憶があります。
衛星放送だったかビデオレンタルだったかは忘れてしまいましたが。
内容が内容なので何度も観たい感じの映画ではありませんが、忘れている部分もかなり多いので、久々に観てみたくなった次第です。

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