『サドン・デス』は初期ジョン・デブニーのアクション劇伴の傑作のひとつではないかと思う。

先頃「午後のロードショー」で『サドン・デス』(95)の放送があったとき、「あー、この映画はなんとなく観に行ったら思った以上に面白くて、映画館で続けて2回観たっけなぁ」などと在りし日を偲んでおりました。

自分が「『サドン・デス』なかなかいいぞ」と思った理由のひとつは、まずパワーズ・ブースの悪役演技が見応えあったから。
そしてもうひとつは、ジョン・デブニーの派手に鳴らすタイプのアクションスコアが見事に当方のツボにハマったからでした。

デブニーの音楽が気に入ったのに、なぜ当時の自分はサントラ盤を買わなかったのか。
たぶんまだジョン・デブニーという作曲家のことをよく知らず、サントラの購入を先送りしてしまったのだと思います。
あとはこの時期のVarese盤サントラあるあるなのですが、CDの収録時間が30分台で少なかったせいもあったたかもしれません。

通常版サントラはデジタル版で入手可能
Sudden Death (Original Motion Picture Soundtrack)

そうは言っても力作スコアであることに変わりはなく、「やっぱりサントラ買っておけばよかったな。デジタル版でもいいから買っちゃうか」などと考えていたところ、Vareseからデラックス・エディションのサントラ盤が2,000枚限定リリースになったので即オーダーしました。

Sudden Death (Deluxe Edition) – TOWER RECORDS
※デラックス・エディションのサントラはデジタル版も出てます。
Sudden Death (Original Motion Picture Soundtrack / Deluxe Edition) – amazon music

CDを外したバックインレイのトレイ側の写真がこのシーンなのもよく分かってる感じ。着ぐるみとヴァン・ダムの本気バトルは本作の見せ場のひとつでしたからね。

今回はデブニーの劇伴を全28曲収録し、CDの収録時間は約64分といういい塩梅のボリューム感。
ブックレットでピーター・ハイアムズ監督とデブニーの二人に最新インタビューを実施しているのも嬉しいポイント。
「ジョンは彗星のような男だった。私はそれに乗りたいと思った。彼ならば映画を高みに導いてくれると分かっていたからだ」(意訳)とデブニーを絶賛しておりました。
また、ハイアムズ曰く「自分はジェリー・ゴールドスミスと2回仕事をして、彼からアクション映画の音楽の在り方を学んだ」とのこと。泣けます。

こうして今回改めてデラックス版サントラで『サドン・デス』の音楽を聴いてみると、「こんなに派手に鳴らしてたっけ?」というぐらい打楽器のリズムを前面に出したフルオケスコアでした。
どうやら物語の舞台となるスタジアムドームが金属の塊のような場所なので、リズムの音も金属的な感じになるように工夫したらしい。

一方、デブニー自身は「ただパーカッションが鳴っているだけの音楽にはしたくなかった」とインタビューで語っておりまして、ヴァン・ダム演じる主人公の人間味を表現するために、メインテーマのメロディにはかなりこだわったそうです。確かにメインタイトルの雄大な感じのメロディは耳に残ります。

1995年と言えば『スピード』(94)が大ヒットした翌年なので、劇伴もあの映画のような「パワフルなリズムに乗せて勇壮なメロディをしっかり聴かせる曲」が求められた時代でもありました。ある意味では『サドン・デス』の劇伴も”『スピード』系”にカテゴライズされるタイプの音楽と言えるでしょう。
個人的にはエンドクレジット曲(アルバム28曲目)が一番好きです。物語の締めくくりの曲というより、「これから戦いが始まる!」というようなやけに勇ましい曲調なのが最高です。

ハイアムズはデブニーがよほどお気に入りになったらしく、『サドン・デス』の後『レリック』(97)と『エンド・オブ・デイズ』(99)で合計3回デブニーとタッグを組みました。

End Of Days (Original Motion Picture Score) – amazon music

カウントダウン型アクション、ハッタリを効かせた怪物ホラー、世紀末オカルトアクションホラーという非常に偏ったジャンルではありましたが、いずれの作品でもクオリティの高い音楽を作り上げたデブニーの手腕は素晴らしいと思います。

そして、どんなジャンルでも水準以上の娯楽映画に仕上げてくれるピーター・ハイアムズの”職人監督”的手腕はもっと評価されてしかるべきではないかと改めて思いました。

ハリウッドの映画スタジオはもっとハイアムズを大事にしてほしかった。ある時期から「あなたならこのくらいの予算と納期で撮ってくれるでしょ?」というような仕事ばかり依頼されて、ハイアムズが不憫だった。それでも職人技で手堅い作りの映画を撮ってしまうところがまた素晴らしいのですが。
しかし『サウンド・オブ・サンダー』(05)に至っては、その”予算”すらままならない(製作会社がポストプロダクション中に倒産した)中で撮らされて、その結果映画の出来も悲惨なことに…(VFXのチープさに目をつぶればそこそこ楽しんで観られましたが)。この映画が大コケしたため、ハイアムズも干されてしまったのがさらに悲しい。本人も相当ショックだったらしい。

とはいえ、その後久々に監督/脚本/撮影を兼任した『ダウト ~偽りの代償』~(09)が地味ながらも見応えのある作品だったし(興行的には振るいませんでしたが)、もっとこの方に映画を撮らせて差し上げたいと本気で思いました。
『ダウト ~偽りの代償~』は基本的にスリラーでありながら、映画ジャンルのバランスが悪くなるぐらい妙にカーアクションに力が入っているところも見どころポイントだったりします。

ピーター・ハイアムズやジョン・バダムのような叩き上げの職人監督が第一線で映画を撮らなくなってから、なんだかハリウッド映画も面白くなくなってきたなぁ…と思う今日この頃です。

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