豪華ミュージシャンが粋なフュージョン・サウンドを聴かせてくれる『デュプリシティ』のサントラ盤

duplicity

ワタクシはジュリア・ロバーツが苦手なので、
劇場公開時はスルーしていたのですが、
ま、DVDレンタルなら見てもいいかな、という事で『デュプリシティ』(09)を鑑賞。

ジュリア嫌いの自分がなぜ本作を見るに至ったかというと、
先日サントラ盤を購入したところ、
ジェームズ・ニュートン・ハワード(以下JNH)のスコアが実によかったので、
本編の方もどんな感じか見てみたくなったわけでございます。

 

先にサントラの話からさせて頂きますと、
まずレコーディング・メンバーが豪華すぎ。
ギターのセルジオ&オダイル・アサド、
バンドネオンのマルセロ・ニシンマン、
アップライト・ベースのマイク・ヴァレリオ、
エレクトリック・ベースのエイブ・ラボリエルSr.、
ドラムスのヴィニー・カリウタ、
パーカッションのアレックス・アクーニャとルイス・コンテ、サトナム・ラムゴトラなどなど、
腕利きミュージシャンが大集合。
オシャレなジャズ/フュージョン・サウンドを聴かせてくれてます。
とりわけリズム隊が作り出す強力なグルーヴ感が最高。
映画の冒頭、トイレタリー企業CEOのオッサン2人が取っ組み合いの大ゲンカを始めるシーンの曲”War”で、
「この映画の音楽、何か違うぞ」と思わせてくれます。

アサド兄弟の情熱的で程よい色気を含んだギターとか、
哀愁のバンドネオン・ソロもムード満点。
元MI6とCIAの男と女が繰り広げる恋愛模様(=腹の探り合い?)を艶やかかつミステリアスに彩ります。
JNHといえば生真面目かつ控えめな作曲家という印象がありますが、
今回は遊び心のある音楽を書いてます。
『オーシャンズ』シリーズのデヴィッド・ホルムズとか、
Gotan Projectあたりの音楽をイメージして頂けると分かり易いかと。
このテの音楽が好きな方は要チェック。

国内盤はランブリング・レコーズさんから発売中です(ワタクシが購入したのは輸入盤)。

で、映画本編はといいますと、ひとことで言えば「産業スパイもの」って事になるでしょう。
トイレタリー企業最大手B&R社の「画期的な新製品」の情報を横取りすべく、
新興企業エクイクロム社が元MI6のレイ(クライヴ・オーウェン)と元CIAのクレア(ロバーツ)をスパイとして雇うのだけれども、
この二人は過去に愛憎半ばの因縁があって、どうにもお互い信用できなくてさぁ大変ってな感じのお話です。

監督・脚本は『フィクサー』(07)のトニー・ギルロイ。
劇中何度も騙し、騙されながら意外な結末にたどり着くタイプの物語なのですが、
さすが脚本家出身のギルロイ監督。物語の進行はややこしいけれども、
話の筋立てはきちんと整理されてます。ま、見ていて混乱する事はないでしょう。

一般的にこういう「コン・ムービー」と呼ばれる映画(『スティング』(73)みたいな)は、
「まんまと騙される爽快感・面白さ」がポイントだったりするわけですが、
本作のように「オレ(アタシ)が一番賢いのさっ」と思っている自信満々の主人公が、
最後の最後で見事に出し抜かれる様を傍で眺めるというのもなかなか楽しいという事が判明しました。

『オーシャンズ』シリーズで、
何となく集まったメンバーが、
何となく作戦を立案して、
何となく実行に移してあっさり作戦が成功してしまう光景を見て、
「なんだかなぁ」と釈然としない気持ちになった自分などは、
本作の苦いラストが結構ツボなのですがいかがでしょうか。
現実なんてこんなものさ、みたいな虚無感がたまりません。

余談ですが、ボウリング場の密会のシーンでWang Changの”Dance Hall Days”が流れてました。
80年代洋楽ファンや「グランド・セフト・オート バイスシティ」のファンにはおなじみの曲かと思いますが、懐かしいなー。

 

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