パブリック・エネミーズ(豪華すぎるキャストについて)

映画ファンの間では「マイケル・マン・クオリティー」なる言葉があるそうです。
どうやら「どうでもいいような所にまでムダにこだわる(=お金をかける)」事を意味するらしい。
言い得て妙、という気も致しますが。

ま、そういうわけで、ロケ地とか音響効果とか使用曲とかカメラとか、
いろんなものにこだわるマンですが、
キャスティングのこだわりも半端じゃない。
今回も「別にこの役者じゃなくてもいいのでは・・・?」という小さい役にも有名俳優を使ってます。

まず「チーム・デリンジャー」側はと申しますと、
映画冒頭の脱獄劇で早々と姿を消すウォルター・ディートリッヒ役に『フェイク』(97)、『ナインスゲート』(99)でジョニー・デップと共演したジェームズ・ルッソ。
画面に登場した途端、パーヴィスにあっさり射殺されるプリティボーイ・フロイド役に『G.I.ジョー』(09)で主役を張ったチャニング・テイタム。
二人とも何とも勿体ない使い方。

メイン級のキャラでは、
ホーマー・ヴァン・メーター役(『ヒート』(95)でいうところのトム・サイズモア的ポジション)に『ブレイド』(98)のスティーヴン・ドーフ、
レッド・ハミルトン役(『ヒート』のヴァル・キルマー的ポジション)に『デス・レース』(08)のジェイソン・クラーク、
ハリー・”ピート”・ピアポント役はデヴィッド・ウェンハム。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのファラミア役の人ですね。
ベイビーフェイス・ネルソン役に『スナッチ』(00)でジェイソン・ステイサムのヘタレな相棒を演じたスティーヴン・グレアム。
特に目立った活躍はしないアルヴィン・カーピス役にも『ロスト・イン・トランスレーション』(03)のジョヴァンニ・リビシをキャスティング。
デリンジャーを快く思わないヤクザの大物フィル・ダンドレア役は『ワイルド・スピードMAX』(09)、『マイアミ・バイス』(06)のジョン・オーティス。
よくぞここまで集めたという顔ぶれ。ハリウッド版「悪役商会」といったところでしょうか。

対する司法(Gメン)側は、
J・エドガー・フーバー役に『M:I:3』(06)、『ウォッチメン』(09:Dr.マンハッタン役)のビリー・クラダップ。
この人、すっかり官僚役が似合う感じの風体になってしまいました。
パーヴィスの相棒カーター・ボーム役に『CSI:マイアミ』のロリー・コクレイン。
最後に見せ場が用意されているチャールズ・ウィンステッド役に『ハード・ウェイ』(91)のパーティー・クラッシャー役が印象深いスティーヴン・ラング。
この人、マンが製作したTVシリーズ『クライム・ストーリー』にも出てましたね。
ほとんどセリフのないクラレンス・ハート役に『デジャヴ』(06)、『タイムライン』(03)のマット・クレイヴン。
ジョン・メダラ役に『パラサイト』(98)のショーン・ハトシーなどなど。

女優陣では、デリンジャーに車を盗まれるリリアン・ホリー保安官役で『身代金』(96)のリリー・テイラーが登場。
銀行強盗時に人質にされるアンナ・パツケ役は『LOST』のエミリー・デ・レイビン。
終盤に何となく登場するポリー・ハミルトン役にはリリー・ソビエスキー。
その他『17歳の肖像』(09)でオスカーにノミネートされた若手演技派女優キャリー・マリガンをキャロル・スレイマン役で起用(ほんの数カットの出演)。
そしてトドメはクラブ歌手(いわゆるトーチ・シンガー)役でカメオ出演しているダイアナ・クラール。
出番はほんの少しなのに、あえてクラール本人を引っ張ってくるところが無駄にスゴイ。

・・・とまぁ、豪華極まりないキャスティングなのでございます。
これだけの実力派俳優がいたら2、3本は映画が撮れてしまうんではないかと。
考えてみれば、『ヒート』も『インサイダー』(99)も端役に至るまですごい顔ぶれでしたからね。

マイケル・マン・クオリティ恐るべし。

画面に大写しになるのが一瞬だったり、
帽子を被っていて顔がよく見えなかったりするので、
この映画をご覧になる際には、上記の役者さんたちの出番を是非お見逃しなく。