アメリア 永遠の翼(映画について)

この映画、当初は20世紀フォックス配給と聞いていたのですが、いつの間にかショウゲートさん配給に変わってました。

で、先月マスコミ試写に行ってみたら、場所は20世紀フォックス試写室。このあたりの流れがよく分かりませんが、まあ映画がめでたく日本公開になったので、自分はそれだけで十分です。

『アメリア 永遠の翼』は、世界恐慌時代のアメリカで女性として初の大西洋横断飛行を達成したパイロット、アメリア・イヤハートの伝記映画です。タイトルロールを演じるのはヒラリー・スワンク。プレス資料とか映画の中でアメリア本人の顔を確認出来ますが、二人とも顔つきが似てるんだ、これが。ちなみにスワンクは髪型や歩き方、話し方をアメリア本人そっくりに似せただけでなく、飛行機の操縦訓練まで受けて撮影に臨んだとか。

女性パイロットの話なので、基本的に女性向けの映画なのですが、ドラマの肝となる飛行機のフライトシーンもなかなかエレガントに撮れていたのではないかと。プレス資料によると、この映画の撮影ために現存するロッキードL-10・エレクトラやフォード・トライモーター、ロッキード・ヴェガ、フォッカー水上機をわざわざ探してきて、実際に飛べる状態にまで復元したり、撮影用にレプリカを制作したのだとか。安易にCGで済ませないところがいいではありませんか。

いま、映画の内容を思い出していて気がついたのですが、劇中に悪い人が一人も出てこなかったような気がする。「これはディズニー映画です」と言われても納得してしまうかもしれない。恐らくこの優等生チックな作りで観客の評価が分かれるかもしれないなぁ。アメリアとジーン・ヴィタル(ユアン・マクレガー)との”友情以上の関係”とか、マスコミから「金儲けのために飛んでるんだろ」と中傷されるくだりとか、そのへんの描写がすごくあっさりしているのです。実話の映画化だからといって、こういったナマっぽい話を期待すると、ちょっと物足りなさを感じるかも。まあミーラー・ナーイル監督に言わせれば、この映画の場合、そういう部分は重要じゃないって事なのでしょう。

ちなみにアメリアの夫ジョージ・パットナム役をリチャード・ギアが演じているのですが、これが『クロッシング』(08)に続く好演。自分の妻が若い男(=ヴィタル)に気持ちが移っていくのを黙って見ているしかない姿には、中年男の悲哀が漂ってました。ギアは『運命の女』(02)あたりから「フツーの中年」の役が自然に出来るようになってきて、役柄に幅が出てきたかなと。フレッド・ヌーナン役のクリストファー・エクルストンも、短い出番ながらいい味を出してました。悪役で見かける事も多い人ですが(『28日後…』(02)とか)、今回は無骨ながらもいい男の役です。

・・・というわけで、自分なりに本作の見所を挙げるなら、

1. ヒラリー・スワンク渾身のアメリア完全コピー演技
2. ヴィンテージ機のグラマラスな映像
3. 1930年代のファッション
4. ガブリエル・ヤレドの流麗な音楽

の4つではないかと。

音楽についてはまた後ほど。実はこの映画、ガブリエル・ヤレドのスコアが最高なのです。