先日『ウォール・ストリート』(10)を観てきました。
クレジットを観た限りではオリバー・ストーンは脚本に携わっていないものの、映画本編はまぎれもなく『ウォール街』(87)の正当なる続編でした。矢継ぎ早のセリフ、スプリット・スクリーンの活用、トレーディング・シーンのせわしない編集、摩天楼の空撮、オリヴァー・ストーンのカメオ出演、ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)の昔と変わらぬ傲慢な態度など、1作目をきちんと踏襲した作りになってます。
ただ、中盤~後半の展開については「あの”欲は善”と言い放った冷血漢のゴードンもずいぶん変わったな」と思ってしまいました。歳を取るとゴードンですら娘や孫が愛おしくなるものらしい。1作目ではそんな一面は微塵も感じさせませんでしたが。
映画を見ていて気になったので調べてみたのですが、イーライ・ウォーラックは今年で御年96歳なのですね。元気なおじいちゃんだ…。この映画でもいい味を出していました。
とはいえ、自分がこの映画で一番楽しみにしていたのは、物語云々よりも音楽の使い方でした。
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オリヴァー・ストーンの音楽マニアっぷりはつとに有名ですが、こちらも1作目をきちんと踏襲して、デヴィッド・バーン(&ブライアン・イーノ)とトーキング・ヘッズの歌モノを大々的にフィーチャーしていました。
サントラ盤がデヴィッド・バーンのレーベル”Todo Mundo”からリリースになっている事もあって、内容はバーンの歌モノ8曲+トーキング・ヘッズの”This Must be The Place (Naive Melody)”+クレイグ・アームストロングのスコア3曲というバーンのベスト盤的な内容になってます。
“Home(家)”とか”Life(人生)”とか”Place(居場所)”をテーマにしたバーンのヴォーカル曲が、映画のナレーター的役割を果たしているのが興味深い。単に彼の曲を垂れ流しているのではなくて、きちんとテーマに沿った選曲をしていると解釈していいのではないかと思います。ストーン&音楽監修のバド・カーがいい仕事をしています。前作同様に映画のラストで”This Must be The Place”がかかった時には、大変懐かしい気分になりました。いささか甘い終わり方に違和感を覚えつつも、この曲が流れた途端に「まあこんな結末もいいか」と思ってしまう。
スコア作曲のクレイグ・アームストロングは、『ワールド・トレード・センター』(06)以来のストーン監督作への登板。『WTC』の音楽は荘厳な雰囲気で素晴らしかったけれども、激しいセリフの応酬になりそうな『ウォール・ストリート』にアームストロングのメランコリックな音楽は合うのだろうか?と本編鑑賞前は思っておりました。しかしいざ映画を観てみたら音楽とドラマがきちんとマッチしていました。
というのも、前作はバブル期の80年代中頃を舞台にした映画だったので、ポップで楽天的な音楽でよかったわけですが、今回は金融業界が破綻していく中でしぶとく生き残ろうとする”強欲”な男たちの話なので、決して楽天的な内容ではない。そこで、アームストロングの哀調を帯びた音楽が効果を発揮するというわけです。「父と娘」という情に訴えかけるテーマも描いてますし。
もっとサントラにアームストロングのスコアを入れてほしかったところですが、劇中で使われたスコアはアルバムに収録された”Prison”、”Money”、”Helicopter Reveal”のバリエーションという感じだったので、まぁこの3曲だけの収録という構成も致し方ないのかもしれません。劇中では『プランケット&マクレーン』(99)のサントラからアームストロングの”Ball”が使われてました。
ちなみに1作目の音楽を手掛けたのは、ポリスのスチュワート・コープランド。リズムの組み立てに凝った感じの軽めのシンセ・スコア。いま聴くとちょっと時代を感じさせる音楽です。コープランドも映画音楽家として才能がある人だと思うのですが、何だか作品に恵まれていない気がします。代表作と呼べるのが『ランブルフィッシュ』(83)と『ウォール街』だけというのはちょっと勿体ない。過去作のスコア盤などリリースしてほしいところです。
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