暴漢に妻子を殺された男クライド(ジェラルド・バトラー)が、復讐の鬼と化す社会派アクション・サスペンス映画。
とは言っても、殺人犯2人組への復讐は映画が始まって26分くらいで完遂してしまうので、本題はそのあと。クライドは主犯格の男を司法取引で減刑させたエリート検事ニック(ジェイミー・フォックス)と裁判関係者、そして矛盾だらけのアメリカの司法制度に対しても、私財をなげうった10年がかりの壮絶な報復を実行していきます。この報復計画ってのがかなり壮大なので、いささか現実味にかける気がしないでもない。
ジョン・グリシャム原作の映画とかだったら、もっと社会派的な視点からドラマを描くと思うのですが、何しろ監督が『ミニミニ大作戦』、『ブルドッグ』(共に03)のF・ゲイリー・グレイで、脚本が『リベリオン』(02)のガン=カタ・マスター、カート・ウィマーなので、中盤以降の展開は完全にバイオレンス・アクション。バトラーの『300』(07)や『GAMER』(09)仕込みのスパルタンな処刑っぷりが堪能出来ます(1箇所本気でビックリさせたれた処刑描写があった:笑)。ムショの中にいるクライドがなぜ大がかりな復讐計画を実行出来るのか、というのがミソなわけですが、ネタバレは無粋なので詳しくは割愛。いろいろ推測しながら本編をご覧になってみて下さい。
まぁラストは行き着くところに行き着く感じなのですが、途中でステレオタイプなハリウッド映画と違う展開やセリフのやり取りがあったりして、なかなか面白い。特に「奥さんと娘の名で人を殺し、彼女たちが喜ぶか?」と説教するニックに、クライドが「妻と娘は何も感じない。死んだんだ」と言って突き放すシーン。ストイックでシビれた。妻子を亡くした人に外野が知ったような口を聞くもんじゃないやね。
脇役で気になったのは、ガーザ捜査官役のマイケル・アービー。『フライトプラン』(05)でジョディー・フォスターに言いがかりをつけられたアラブ人(”アラブ人に謝れ!”の書き込みで一躍有名になったキャラ)を演じた人ですね。あと刑務所長役が『24 -TWENTY FOUR-』のローガン大統領(グレゴリー・イッツェン)だった。相変わらずあんまり有能そうじゃない役人顔をしてました。
オリジナル・スコア作曲はブライアン・タイラー。グレイ監督が言うところの「ネオ・ノワール」的な画作りを反映させてか、いつもの鳴らしまくり系のサウンドとは違ったダークで抑制の効いたスコアを書いてます。普段のタイラーだったら、墓地のRV車襲撃シーンでもっとハデな音楽をつけていたような気がする。特別キャッチーなメロディーではないものの、メインテーマもちゃんと聞かせてくれます。
サントラはiTunesの配信&米Amazon.comのCD-Rのみのリリースでガッカリ。
もし僕が日本盤を製作してたら、ちゃんとCDプレスで作ってもっとカッコいいジャケ写にしてたんだけどな・・・。
どうでもいいけど、クライドがムショでザ・フーの”Eminence Front”を聴きながらステーキ食ってたのが妙に美味そうだった。
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