前回この映画について、「子供に付き合って映画を見に来たオトナを退屈させない作り」と書きましたが、それは日本語吹替えに限った話ではなくて、もともとの映画自体がそういう作りになってます。
主人公のイービーの声が、アクの強いR指定のコメディアンのラッセル・ブランドだし、80年代の人気スター、デヴィッド・ハッセルホフが本人役で特別出演しているし、プレイボーイ・マンションのシーンでインターフォン越しに喋っているのはヒュー・ヘフナー本人だし、ゲームソフト会社のシーンではブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ(本人)とイービーのジャム・セッションまで聞けてしまう。劇中、こんな感じで大人向けの小ネタがところどころに挿入してあります。
あとは劇中の挿入歌。イービーがハリウッドを放浪するシーンでポイズンの”Every Rose Has Its Thorn”が流れたり、フレッド(ジェームズ・マースデン)とイービーが末っ子の学芸会(?)でバウ・ワウ・ワウの”I Want Candy”を歌ったり(エンドクレジットではコーディ・シンプソンのカヴァー版が使われてます)、妙に懐かしい選曲。これは明らかに「いま現在小さいお子さんのいるお父さん・お母さん」対象の選曲でしょう。
オリジナル・スコアを手掛けたのはクリストファー・レナーツ。フィルモグラフィーにこれといった有名タイトルがないので、ややマイナーな印象の人ですが、レナーツの名前が一躍有名になったのは、2008年の大統領選挙で「オバマ支持だったのに、自分の曲(『メダル・オブ・オナー ヨーロッパ強襲』のメインテーマ)がマケインの選挙CMに勝手に使われて憤慨した」という事件でしょう。そりゃ対立候補のCM曲に使われたらいい気持ちはしないわなー。しかも本人に何のことわりもなく使われたんじゃ尚更。
音楽はコメディ映画のスコアの宿命か、1曲あたりの時間が短め。1分台の曲が多くて、一番長くて3分20秒台。その代わり全34曲収録されてます。とはいえ全編フルオケ録音。一応しっかりしたメロディーのテーマ曲もあり。劇中でイービーがドラムやパーカッションを叩くシーンがあるので、音楽も打楽器を効かせたアレンジ。短い曲が多いから、バラエティ番組の音効に使えそうかも。そっち方面の仕事をやっている方にオススメの1枚。
日本公開版はエンドクレジットでNot yetの歌が流れるそうですが、僕が試写で見た時はThe Deekompressorsの”The Pink Berets”が流れてました。結構いい曲だったんですが(サントラには収録されてます)、たぶんこの曲が差し替えられるんだろうなぁ。”I Want Candy”を差し替えるとは考えがたいし。
自分は外国映画を観ていて、日本語の歌が流れてくるとガクッと来るタイプなのですが、一般的にはどうなんでしょう。あ、『カーズ2』(11)のポリリズムはちゃんと世界公開版で使われているので、あれは別って事で。
国内版サントラ盤はランブリング・レコーズから発売中。ハデなジャケットが目印です。
『イースターラビットのキャンディ工場』オリジナル・サウンドトラック
音楽:クリストファー・レナーツ
品番:GNCE-7096
定価:2,625円