自分は以前『マイ・ボディガード』(04)の国内盤サントラに音楽解説を書かせて頂きました。もう時間(というか”年月”ですね…)が経ってしまったので廃盤&在庫切れですが、デジタル版では容易に手に入ります。
Man On Fire (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music
こちらはハリー・グレッグソン=ウィリアムズの劇伴を収録したスコアアルバムなので、本編で使われた既存の楽曲は未収録です。したがって完全版サントラ作りたければ劇中でどんな既製曲が使われたか自分で調べて、自前で補完しなければなりません。
とりあえず「このあたりの曲は押さえておきたい」という有名どころの曲をざっとご紹介したいと思います。
まず本編で最も多く使われたのがNine Inch Nailsの楽曲。
Nine Inch Nails – The Fragile (amazon music)
Nine Inch Nails – Further Down The Spiral (amazon music)
アルバム「The Fragile」から”The Mark Has Been Made”, “The Wretched”と”The Great Below”の3曲、「Further Down The Spiral」から”The Art of Self Destruction Part One”と”The Downward Spiral (The Bottom)”、”Self Destruction Part Two”の3曲が使われてます。スコットは『ザ・ファン』(96)以来NINにハマったと思われます。
先にサントラ盤を聴いてから映画本編を観たところ「HGWの劇伴が随分カットされているな…」と思ったのですが、どうやら本来HGWの劇伴が流れるべきところにNINの曲を使っているシーンがいくつかあった模様。トレント・レズナーが”ミュージック・コンサルタント”として本作に携わっているのと関係があるのかもしれません。劇中でNINの曲を使うためにレズナーを音楽コンサルタントに迎えたということなのかな。
復讐の鬼と化したクリーシー(デンゼル・ワシントン)がクラブに乗り込んでいく時にガンガン流れているのは、スコア盤にも収録された”The Rave”という曲。この中にはGMSの”Juice (Live Mix)”(『レクイエム・フォー・ドリーム』テーマ曲のリミックス)、Deedrahの”Deedrah Reload (GMS Remix)”がメドレーで収録されてます。余談ですが”Juice (Live Mix)”は『アンストッパブル』(10)のフーターズのシーンでも使われてました。
Linda Ronstadt – Simple Dreams (40th Anniversary Edition) (amazon music)
傷心のクリーシーの心の支えになるリンダ・ロンシュタットの”Blue Bayou”は、ベストアルバムの「Greatest Hits 1 & 2」とアルバム「夢はひとつだけ」に収録されてます。
クリーシーがピタ(ダコタ・ファニング)の誘拐に一枚噛んでいた外道を拷問する場面で使われているのが、Kinkyの”Oye Como Va”(サンタナのカヴァー)と、チアガールのPVでおなじみトニー・バジルの”Mickey”。拷問シーンであえてこういう曲を使うトニー・スコットのセンスが光ります。
Kinkyはメキシコのオルタナ系ロックバンドで、この映画には”Field-Goal”、”Mas”も提供。エンドクレジットで流れる”Mas”がなかなかカッコイイです。
あと、映画『ケイティ』(02)と『チェンジング・レーン』(02)から、クリント・マンセルとデヴィッド・アーノルドのスコアをそれぞれ3,4曲ほど流用してました。一応エレクトロ系のスコアで統一されていたので、HGWのスコアと並べてもそれほど違和感はなかったような気がします。…というか、観ていて全然気がつきませんでした。
このネタ書くために久々に『マイ・ボディガード』のサントラを聴きましたが、哀愁のギター曲、エモーショナルなオーケストラ・スコア、強烈なエレクトロ・スコアという3つのサウンドで構成されたなかなかの名盤です。
ヴォーカルでリサ・ジェラルドが参加してるので、一部で「『グラディエーター』(00)の音楽みたい」と言われてますが、「己の信じるもののために殉ずる」というテーマで共通するところもあるし、これはこれでいいのではないかと。
スコア盤はランブリング・レコーズから発売になりました。US盤も国内盤も恐らくもう廃盤になっていると思うので、ショップでお見かけの際は速やかに保護してやって下さい。
余談ですが、長いこと日本のミュージックストアでは取り扱いがなかった『デジャヴ』のスコアアルバムが、いつの間にか買えるようになっていました。いつ頃から買えるようになっていたんだろう…。
Déjà Vu (Score) – amazon music