陰謀の代償 / The Son of No One

the son of no one

チャニング・テイタム主演、アル・パチーノ、レイ・リオッタ共演の映画『陰謀の代償 N.Y. コンフィデンシャル』(10)をDVDにて鑑賞。9.11のテロ事件後のNY市警の腐敗を描いたシリアスドラマです。

物語の舞台は2002年のニューヨーク。クィーンズ地区の警察署に配属されたジョナサン(テイタム)は、少年時代にやむにやまれぬ事情で2件の殺人を犯し、父親の元同僚のスタンフォード刑事(パチーノ)がその事件をもみ消したという過去があった。あれから16年、ごく限られた人間しか知らないはずのこの事件を何者かが告発して、ジョナサンを脅迫しようとする。果たして密告者は誰なのか。そして闇に葬ったはずの事件を告発しようとする犯人の真意は何なのか…。

物語は現在(2002年)と過去(1986年)の出来事を交互に描いていくのですが、NYの低所得者層向け公営住宅地域の描写(特に1986年の方)がリアルで恐ろしい。このシーンに顔を出す役者が、どの人も無名ながら迫真の演技を披露しているので、我こそは映画通という方は是非彼らの熱演に注目して見てあげて下さい。

アル・パチーノはジョナサンの後の運命に大きな影響を与える刑事役なのですが、殺人事件の前後の状況を考えると「汚職デカ」というほどでもないような・・・。木枯し紋次郎風に言うなら「渡世の義理」で元相棒の息子を助けてやったという感じかな、と。パチーノを使うぐらいだからただの中年デカじゃないんだろうなと思ったので、ちょっと肩すかしを食らった気もします。

共演もクセ者揃いで、レイ・リオッタはジョナサンをネチネチとイビるマザーズ警部役。警察の腐敗を暴露しようとする新聞記者ローレン役にジュリエット・ビノシュ、ジョナサンの薄幸そうな妻役にケイティ・ホームズ、少年時代の体験で精神を病んでしまったジョナサンの友人ヴィニー役に『コップアウト 刑事した奴ら』(10)のトレイシー・モーガンらが扮しています。相変わらずレイ・リオッタの尊大かつネチっこい芝居が絶品。

サスペンス・ドラマとしては「ジョナサンを脅迫するのは誰か?」「16年前の事件を手紙で暴露する犯人の意図は?」という所がポイントなわけですが、ジョナサンを電話で脅迫する人が割と声に特徴のある人なので、多分映画ファンなら声を聞いただけで誰だか分かってしまうと思います。新聞社に手紙を送りつける犯人も、1986年の事件のシーンをよく見れば、おのずと「そういえばこのキャラどうしたの?」と気がつくと思うので、意外性はそれほどないかもしれません(どうでもいいけど、この告発の手紙のせいで人が何人死んだやら・・・)。

そんなわけで、肝心なところで脚本が弱いのと、上映時間95分の割に時間が長く感じる部分があるのが難点ですが、『クロッシング』(09)や『プライド・アンド・グローリー』(08)のような救いのない世界観がお好きな方なら、本作を見てみてもよろしいかと。

なお、本作はサスペンス・アクションではないので、『フェイク・シティ ある男のルール』(08)みたいなノリを期待してはいけません。

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