『月に囚われた男』(09)で注目された、ダンカン・ジョーンズ監督の長編映画第2弾。
英語オフィシャルサイトで予告編を見た時から非常に期待していたこの作品、なるべく雑誌のレビューやクチコミ記事などを事前に見ないようにして本編を鑑賞したのですが、これが大正解。『恋はデジャ・ブ』(93)が大好きな自分としては、断然贔屓にしたくなってしまう作品でした。
列車爆破テロの真犯人を探し出すため、主人公のコルター(ジェイク・ギレンホール)が「ソース・コード」という特殊プログラムで爆破直前の8分間の出来事を何度も繰り返しながら、犯人探しに奔走するというお話。そして何度もミッションを繰り返すうちに、「何で俺はこんな事をやってるんだ?」「そもそも俺は誰なんだ?」という疑問が浮かび上がってきて、やがて衝撃的な真実を知ってしまう。
ジョーンズ監督の前作『月に囚われた男』がそうだったように、今回もSFサスペンスというジャンルの中で、大きな組織の歯車となって使われるブルーカラー・ワーカーの悲哀とか、「自分という人間は何者なのか?」というアイデンティティの探求、人が果たすべき責任というようなテーマがしっかりと描かれていて、意外な場面で泣かせてくれます。コルターと父親(声:スコット・バクラ)の電話でのやり取りで、目頭が熱くなったのは僕だけではないはず。8分間の出来事を繰り返すうちに、コルターの心理が変化していく(人間味が増してくる)過程もなかなかアツい。
ドラマ部分(及びサスペンス描写)がよく出来ているだけに、「このラスト、映画通ほど騙される」という通俗的で中身スカスカなキャッチコピーがつくづく残念でならない。映画の本質から全然ハズレた見方だと思うし、このコピーを見た観客も、結末以外どうでもいいような見方をしてしまうようになって逆効果な気がする。ま、「20字以内で人目を引くコピーをつけろ」って事でこうなったんだろうけど、今はもう「衝撃のラスト」的なコピーも使い古された感がありますなー。
というわけで、衝撃の結末云々にはあまりこだわらず、物語で提示される数々の謎の「タネ明かし」の巧さ、見せ方の巧さを楽しんで頂ければと思います。ちなみに僕はこの映画のラスト、結構気に入ってます。
音楽は新進作曲家のクリス・ベーコン。ジェームズ・ニュートン・ハワードのアシスタントをやっていた人らしい。「ヒッチコック映画のような雰囲気を」というジョーンズ監督のリクエストに応え、正統派のオーケストラ・スコアを聞かせてくれていますが、これがなかなかの出来栄え。メインテーマも印象に残るし、繊細なピアノ曲も静かな感動を呼ぶ。名字がベーコンだけに、噛めば噛むほど味の出るスコアという感じです。
最後に音楽絡みの小ネタ。ヒロインのクリスティーナ(ミシェル・モナハン)のケータイの着メロは、『月に囚われた男』でサム・ベルが目覚ましアラームに使っていたChesney Hawkesの”The One and Only”でした。前作のファンへの目配せでしょうか。使い方にもちゃんと意味があるし、粋な演出ですな。