ダグ・リーマン監督、ショーン・ペン&ナオミ・ワッツ主演の映画『フェア・ゲーム』(10)を鑑賞。
70年代にアラン・J・パクラとかシドニー・ルメットが撮っていそうな、ものすごくシブくて、なおかつ非常によく出来た告発系ポリティカル・サスペンスでした。シンディ・クロフォード主演の同名C級アクション映画とは雲泥の差(そもそもジャンルが違うけど)。
プライベートでもイラク問題にはいろいろ言いたい事がありそうなショーン・ペンだけに、NYタイムズに「イラクに大量破壊兵器はなかった」という調査報告を寄稿する元ニジェール大使ジョー・ウィルソン役はまさにハマリ役。
よりによってアメリカ政府からCIA捜査官である事を暴露される悲劇のヒロイン、ヴァレリー・プレイムを演じるナオミ・ワッツも、薄幸さと意志の強さを兼ね備えた佇まいが素晴らしい(特にあの眼差しがステキ)。二人の演技の化学反応も凄まじい。過去に2回共演しているし、芝居の波長が合うのでしょう。
ダグ・リーマンといえば『ボーン・アイデンティティー』(02)とか『Mr.&Mrs.スミス』(05)の監督なわけですが、こういう重厚かつシブい社会派映画も撮れるのね。父親がイラン・コントラ事件を担当した弁護士のアーサー・リーマンらしいので、そういった硬派な遺伝子も受け継がれているのかも。
実話の映画化という事で、エンドクレジットでCIA捜査官の役名の名字部分が何人か伏せ字になってました。
僕が本作を見ようと思ったのは、ジョン・パウエルの音楽が本編でどういう使われ方をしているのか気になったから。パウエルの音楽といえば、『ボーン・アイデンティティー』に代表される打楽器を慣らしまくるリズム重視のサウンドがトレードマークなわけですが、この映画のようなアクションシーンが一切ないドラマでもあれをやるのか? もしやったとして、果たして映像と合うのだろうか? と興味津々でサントラを購入。
で、実際にスコアを聴いてみたら、例によって打楽器を鳴らしまくってました。ジェイソン・ボーン・シリーズの音楽でお馴染みのパーカッションの音も随所で聞けます。ナマの打楽器演奏だけでなく、サンプリングしたリズム音もかなり使ってる印象。そういう意味では、ファンが期待している「パウエル・サウンド」を聞く事が出来ます。
アクション描写こそないものの、手持ちカメラのブレまくる映像や、中東・アフリカの混沌としてヤバ気な雰囲気と、パウエルのパーカッシヴなスコアとの相性は抜群。抑制の利いた静かなドラマにいい感じの”ノリ”(テンポ?)が生まれています。地味ながらなかなかの良盤。ファンなら買い。
余談ですが、オープニングタイトルでGorillazの”Clint Eastwood”が流れたのにはちょっとビックリした。