念願の『ザ・ウォード/監禁病棟』(10)をDVDにて鑑賞。
ジョン・カーペンター御大の久々の劇場長編作。
いやこりゃ楽しみやねー、カーペンター先生お帰りなさい!などと思いつつ本編(89分!)を観ていたら、あまりにも直球勝負の演出で笑った。
これといってヒネリとか映像トリックとかもない、極めてシンプルな限定空間型トラウマ系サイコスリラー。多分、映画好きなら本編開始15分ぐらいで事件の真相もオチも読めてしまうかもしれません。
でもまぁ、カーペンターの映画は昔からストーリー展開も演出もシンプルだったし、「こだわりがないのがこだわり」みたいな部分もあったので、カーペンター作品を愛する身としては「何コレB級じゃん!」とバッサリ切り捨ててしまう気にはなれないんだなー。
カーペンターの作品は、ホラーとかSFとかいうジャンルを超越した「ジョン・カーペンター映画」という独自の世界を構築してしまっているので、これでいいのです。多分。
ま、僕はご贔屓のアンバー・ハードさんがたっぷり見られたので、それで満足だったりします。それにしてもアンバーさんは脚が長くてスタイル抜群だわ。ブライアン・デ・パルマがこの映画を撮ってたら、絶対シャワー室のシーンはもっと時間をかけてエッチに撮ってたはず。カーペンターはそのへんも妙にアッサリしてて微笑ましい。
と、まぁ映画本編はこんな感じではあるのですが、音楽は結構頑張ってます。いや、頑張っているどころか最近のホラー映画音楽の中ではかなり面白い出来と言うべきか。
スコア作曲はカーペンター先生自身ではなく、『ツォツイ』(05)『トレイター/大国の敵』(08)のマーク・キリアン。カーペンターのベンベン節は男臭いサウンドなので、こういううら若き乙女の監禁病棟ドラマにはちと似合わないと思ったのでしょう。カーペンターのセルフ・ライナーノーツを読むと、割と早い段階から他の人に作曲を任せるつもりだったみたいだし。
で、そのキリアンが作曲したのが、カーペンターが”ghostly lullaby”という表現を使っているクリステンのテーマ曲。女性スキャットで「ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ〜♪」と歌われる寂しげなメロディーが耳に残ります。オープニングタイトル曲の「ハ・ハ・ハ・ハァァ〜〜ン♪」という女性スキャットも何か気怠くていい感じ。
いわゆる「音ビビらせ系」のスコアもいくつかありますが、上記のようにメインテーマがしっかりしているので、ホラー映画のサントラとしてはかなりメロを楽しめる作品ではないかと思います。最近のホラー音楽というより、ちと80年代のノリに近いかな。でもそこがいい。
ライナーノーツでカーペンターが”Mark did a better job than I could.”と言ってるのも何か微笑ましかった。パッと見気難しそうだけど、実際は結構気さくな人なんじゃないだろうか。