前評判が高くて楽しみにしていた『ドライヴ』(11)を観てきた。
いやー最高に見応えのある映画でございました。
『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』(81)とか『マイアミ・バイス』(84-90)とか『アメリカン・ジゴロ』(80)とか『スカーフェイス』(83)とか、80年代クライムドラマ(ネオン・ノワールという総称らしい)を愛好する人にはたまらん内容です。
映画開始直後のカーチェイスから引き込まれる。むやみに街中を暴走したり車をクラッシュさせたりするのではなく、警察の目を逃れて目立たぬよう、気づかれぬよう”依頼人”を逃走させるドライバーの仕事っぷりがシビれる。タクティカル・ゲッタウェイ・ドライブとでも言うべきか。
そして冗長なセリフや説明過多な描写をバッサリ切った演出が秀逸。無駄な描写を極限まで削る事によって、ドラマがよりリアルになり、他愛のないセリフですらぐっと言葉に重みが増してくる。「これが俺の映画です!」という観客にも映画スタジオにも媚びないニコラス・ウィンディング・レフン監督の熱いスピリットがビンビン伝わってきます。
無駄を削った事によって、キャラクター造形にも深みが出てくる。
■無口で孤独な一匹狼
■他者と深い関わり合いを持ちたがらない
■しかし根はいい奴なので、つい人助けをしてしまう
■その結果、面倒事に首を突っ込むハメになる
■基本的にはフェミニスト
■楊枝を口にくわえるのが癖
・・・という『木枯し紋次郎』チックな主人公・ドライバーの設定が感涙モノ。ライアン・ゴズリングの名演が光ります。
幸薄そうなキャリー・マリガンの佇まいとか、「ユダヤ人のクセにイタリアン・マフィア気取り」というロン・パールマンの屈折した極道キャラとか、顔が濃い割に不幸な役が多いオスカー・アイザックのダメ男っぷりとか、「一見話の分かる奴っぽいけど、実は無慈悲で極悪な映画界ヤクザ」のアルバート・ブルックスとか、出演者が皆いい味出しまくり。ヤミ医者役でワンシーンのみの出演ながら、『ツイン・ピークス』(90-91)のDr.ジャコビーことラス・タンブリンをわざわざ起用するあたりも、レフン監督の徹底したこだわりを感じさせます。
(『ドライヴ』公式Twitterの人によると、ラスは『フランケンシュタインの怪獣』(66)に出ているので、日本の特撮マニアのレフン監督はその線から彼を起用したのではないかとの事。なるほど)
せっかくの傑作映画なので、ストーリーについては出来るだけ事前情報ゼロで本編をご覧になる事をオススメします。
音楽についてはまた次回。