『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。
今回は弟ジェフの作品から『At Sachem Farm』(98)をご紹介します。
・・・といっても、この映画は日本未公開でDVD化もされてないんですよねー。ノース・カリフォルニアの広大な敷地に住むイギリス人青年ロス(ルーファス・シーウェル)と、婚約者(ミニー・ドライヴァー)、変わり者の叔父(ナイジェル・ホーソーン)、ロスの弟らの人間模様を描いたヒューマン・ドラマといった内容。
映画の内容も地味だし、劇場公開やDVDリリース、TV放映の度にタイトルが”At Sachem Farm”、”Higher Love”、”Uncorked”とコロコロ変わるなど不遇な扱いを受けた映画でもあるのですが、「音楽がいい映画」と当時そこそこ話題になりました。
この映画の途中で、ロスがギターコンサートを開くシーンがあるのですが、この場面の音楽に注目が集まりました。ここで実際にギターを弾いているのが、ルーファス・シーウェル・・・ではなく、映画のオリジナル・スコアを作曲しているジェフ・ダナ本人というわけです。
何しろジェフは映画音楽家であると同時に、プロのギタリストでもあるので、ギターの腕前は抜群。このシーンの音楽はサントラにも”Ross’ Concert”というタイトルで収録されているのですが、曲後半の速弾きがもはや神業レベル。劇中のコンサートのシーンでは、ある程度ルーファスもギターを弾いているフリをしているのですが、さすがに後半パートはフリをするのも難しいようで、画面に細かい指使いが映らないような編集をしています。
その後、一部サントラ・ファン(及びギター愛好家)から「”Ross’ Concert”の譜面は手に入らないのですか?」みたいな問い合わせが来るようになって、その声に応えるような形で”Ross’ Concert”の楽譜を買えるようになったという話です。映画が地味でも、見てる人は見てるし、音楽の良さが分かる人には分かるんだなーという好例と言えるでしょう。
枚数限定とはいえ、この映画のサントラ盤も発売されたぐらいだから、ジェフのスコアもなかなかの出来。ジェフはギター、マンドリン、ラップ・スティール、ハーモニウム、ピアノを担当。その他ハーディ・ガーディ、プサルテリー、フィドル、リコーダー、ダルシマーなどをオーケストラと演奏させ、若干ケルト風味なスコアを作曲しています。時期的にもちょうど『ケルティック・ロマンス』の製作時期と重なっているので、少なからず影響を受けたところもあるのではないかと思います(ジェフがこの時期特にケルト音楽にハマっていたとか)。
メインテーマのメロディーもキャッチーかつ耳馴染みがよく、エンドクレジットのテーマ曲はポップス感覚で聴けちゃいます。オーガニック&アコースティックな音楽が好きな方にはオススメの名盤ですね。
ちなみにこの映画のサントラには、『ケルティック・ロマンス』から”Love of Heaven”が使われています。そういう意味も含めて、この映画のサントラは『ケルティック・ロマンス』の姉妹編的内容と言えるかもしれません。