決め手には欠けるけど、愛すべき映画ではある『ラム・ダイアリー』

rum diary (more music)

1998年の映画『ラスベガスをやっつけろ以来親交を暖めてきた、
ジョニー・デップ(主演・製作)と故ハンターS・トンプソン(原作)のコンビによる最新作。

『ラスベガスをやっつけろ』が大好きで、
何十回・何百回と観た自分としては、
今回の『ラム・ダイアリー』(11)も非常に楽しみだったのですが…。
いざ本編を観てみると、何か物足りなかったなーという印象でした。

映画の内容をひと言で申し上げるなら、
「酔っぱらいジャーナリストの南米珍道中」という感じなのですが、
何しろ前回の『ラスベガスをやっつけろ』がああいう調子だったので、
あれと比べると酔っぱらいの珍道中というにはそれほどハチャメチャではないし、
胡散臭いアメリカ人実業家(アーロン・エッカート)にケンカを売る展開もイマイチ迫力に欠ける。
原作者トンプソンの分身とも言える主人公ポール・ケンプに関しても、
この頃はまだトンプソンも若くて大人しかったのか、
あるいはテリー・ギリアムに比べるとブルース・ロビンソン監督は真面目な人だったのか、
ハメを外しきれていないという感じ。

『ラスベガスをやっつけろ』はてっぺんハゲ&ガニマタのデップと、
メタボ腹で意味不明な言動を繰り返すサモア人弁護士(ベニシオ・デル・トロ)が、
ドラッグとアルコールでヘロヘロになりながら、「アメリカン・ドリームの終焉」を鋭く描ききって見せた、
“ゴンゾー・ジャーナリズム”そのものの構成が秀逸な映画だったわけですが、
(クスリっ気が抜けた時のデップ=ラウル・デュークのモノローグは文学的ですらあります)
今回の『ラム・ダイアリー』はそのへんの「毒を食らわば皿まで」「毒をもって毒を制す」的なパンチがちと弱いかなと。

まぁ僕は我がご贔屓のアンバー・ハードがたっぷり見られたので、
それで十分だったりするのですが。
この共演でデップをメロメロにしてしまったのですから、
大した女優さんですわね。これが若さか…。

ぐうたらカメラマン役のマイケル・リスポリ(『キック・アス』(10)でボスの子分を演じていた人)、
廃人寸前のジャーナリストをヤバい感じで演じているジョヴァンニ・リビシ、
神経症気味のヅラ編集長役のリチャード・ジェンキンスなど脇役陣も何気に豪華。
アメリカ人実業家の仲間役で『プリズン・ブレイク』のアマウリー・”スクレ”・ノラスコ、
ケンプの飲んだくれ仲間の一人で『トータル・リコール』(90)のクアトー役でおなじみのマーシャル・ベルまで出てました。

というわけで、
「どんな映画か分かんないけど、デップが出てるから見てみようかな」という人向きの作品ではないと思います。

■ハンター・S・トンプソンがどういう人か知っていて、
■生前の彼とデップの親交についての情報をどこかで読んだ事があって、
■『ラスベガスをやっつけろ』も鑑賞済み

…の人向けの映画と言えるでしょう。

パンフ内のインタビューで曽我部恵一が
「(トンプソンの)前情報がなくても楽しめるように作られているんですよ」と言ってましたが、
さすがにそれはムリだと思いました。
(まぁ、そう言わなきゃいけないようなお仕事だったんだろうけど)

テキストが長くなってしまったので、音楽についてはまた次回。

 

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