文章が長くなって前回書けなかった『エージェント・マロリー』(11)の音楽について。
オリジナル・スコア作曲は『オーシャンズ11』(01)のデヴィッド・ホームズです。
スティーヴン・ソダーバーグ映画の常連作曲家といえば真っ先にクリフ・マルチネスの名前が挙がるわけですが、マルチネスは『トラフィック』(00)とか『コンテイジョン』(11)などのシリアスドラマ系、ホームズは『オーシャンズ』シリーズや『アウト・オブ・サイト』(98)のような娯楽映画系、という感じで作品によって作曲家も使い分けている様子(『エリン・ブロコビッチ』(00)と『さらば、ベルリン』(06)ではトーマス・ニューマンを起用してたけど)。
で、この『エージェント・マロリー』のホームズの音楽が実にカッコイイ。
サウンド的には『アウト・オブ・サイト』の流れを組む、ドラムス&ベースのグルーヴで聴かせるクラブ/ジャズ系の音。「もしラロ・シフリンが今風のクラブ/ジャズ系のスコアを書いたら?」みたいな感じのサウンドです。威勢のいいブラスの鳴らし方とか、エレキギターのレトロな音の響きとか、70年代TVシリーズの音楽を彷彿とさせるものがありますな。メロディーを楽しむというより、グルーヴを楽しむスコア。
デヴィッド・ホームズはベルファスト出身のハウス系DJですが、BTとかケミカル・ブラザーズみたいなバッキンバッキンした電子音を鳴らすタイプではなくて、生音(っぽい)のウネウネしたベースとか、小気味よいリズムで”ノリ”を生み出すミュージシャンという印象。モリコーネやジョン・バリー、ラロ・シフリンの影響を受けていると公言していて、ドキュメンタリー映画『耳に残るは映画音楽』でも60年代の映画音楽や巨匠作曲家についてアツく語っていたので、ホームズはなかなかのシネフィルなんじゃないかなーと思います。
サントラは全18曲で収録時間35分強。ちと短い気もしますが、こういう曲調で50分超えだったりすると逆に聴いていて飽きる危険性があるので、まぁこれぐらいで妥当な収録時間なのかな。映画本編も90分強だったし。
しかしリピートで延々聴いていると、ウネウネうねる低音が実に気持ちいいアルバムです。4曲目の”Stakeout”の気怠い感じとか、14・15曲目の”Against All Odds”, “Against All Odds Pt.2″のグルーヴが個人的にはお気に入り。『アウト・オブ・サイト』とか『オーシャンズ12』(04)のサントラが好きなら買って損はないかと。